教育ニュース
文科省の報道発表から研究会参加ルポまで、知っておきたい色々なジャンルの教育情報&ニュースが読めます。
学習指導要領諮問―「アクティブ・ラーニング」とは?
―次回の学習指導要領改訂に向けて―
教育zine編集部大田和
2014/11/30 掲載

 今月20日、下村文部科学相は、2016年度全面改訂、2020年度本格実施される予定の学習指導要領について、中央教育審議会に諮問しました。

英語教育と「アクティブ・ラーニング」

 初等中等教育について諮問された内容を見ていくと、大きく2つの注目すべき点があります。
 1つ目は、小中高校における英語教育の充実です。英語の能力は、これからますます進んでいくであろうグローバル社会を生きる上で必須となると思われます。言語や文化の壁を感じることなく他者と交流できるレベルでの英語の能力を習得するため、どのような取り組みをしていくかを審議するよう投げかけています。
 2つ目は、子どもが課題に対して主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の充実の提案です。文部科学省では、「アクティブ・ラーニング」を以下のように定義づけています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称

これは、課題を見つけ、解決に向けて探究し、成果を表現するまでの過程を、学ぶ側が主体的に行う学習方法のことを指しています。具体的には、体験学習や調査学習、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどが挙げられます。

なぜ、「アクティブ・ラーニング」なのか

 ここでは、「アクティブ・ラーニング」について考えていきたいと思います。
 前回の改訂では、学力低下を招いたと言われている、いわゆる「ゆとり教育」からの脱却を目指し、学習指導要領を見直しました。学習指導要領改訂後に行われたPISAや全国学力調査では、近年よりも結果が改善され、学力向上の兆しが見られるなど、改訂による一定の成果はあったと思われます。
 しかし、その一方で、世界と比べて論理的思考力の不足や学習意欲、社会参画意識の低さなどが指摘される現状があり、その現状から改善を図ることが必要とされています。
 その改善を図るひとつの方策が、学ぶ側が自ら課題発見から解決、成果表現まで取り組むことで論理的思考や学びに対する主体性が見られる「アクティブ・ラーニング」だと考えられます。
 「アクティブ・ラーニング」は、より教育の「質」を高めることを求められてきた大学教育の議論の場では以前から議題に挙がり、現場でも取り入れられ、実践されてきました。今回、初等中等教育においても取り入れることが提案され、日本の教育全体において学びに対する「主体性」がより重視される流れができていると考えられます。

「アクティブ・ラーニング」実践への課題

 新学習指導要領において、「アクティブ・ラーニング」を取り入れることが求められたとして、果たして学校現場で受け止めきれるのでしょうか。諮問でも審議するよう投げかけられていますが、実践に向けては課題が残ると考えられます。
 1つは、初等中等教育における「アクティブ・ラーニング」的指導の難しさです。日本の初等中等教育では、大学教育よりも一層講義形式の授業が一般的です。OECDの国際教員指導環境調査(PDF)によれば、日本の学校現場で少人数のグループで共通の解決策を考えだす指導方法を取り入れている割合が他の参加国と比べて低いという結果も出ています。 
 「アクティブ・ラーニング」の定義にあてはまる指導方法を取り入れている教師が少ない現状を受け止め、全国のどの教師でも「アクティブ・ラーニング」的指導を実践できるよう、指導方法の研修を設けるなどの方策が必要だと考えられます。
 もう1つは、「アクティブ・ラーニング」における成果の評価の難しさです。学ぶ側が自ら課題を見つけ、解決に向けて探究し、成果を表現する「アクティブ・ラーニング」で、それぞれの過程における学習の成果を教師側がどのように把握し、どのように評価していけば良いのでしょうか。
 今回、時期を同じく審議されることとなっている大学入試改革においても、ペーパーテストにとらわれない人物本位の入試制度が本当に実現できるのか問題となっていますが、教師が「関心・意欲・態度」の評価に苦心している現状とも合わせ、同様の問題が「アクティブ・ラーニング」における評価でも起こり得ると考えられます。

 今回、諮問された内容は、中央教育審議会によって約2年かけて審議されます。子どもが主体性をもった学びが「アクティブ・ラーニング」の実践によってどのように実現されるのか、中央教育審議会による今後の審議のゆくえに注目したいと思います。

コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 訪問者
    • 2014/12/3 21:29:14
    現場の教師が変わらねばならないということ。
    文科省も「指導方法」と「評価」を大きなテーマとして掲げています。
    • 2
    • 協働学欲
    • 2015/2/18 15:18:02
    小学校や中学校の発達段階と学習内容に適した指導構想が必要。協働学習、学び合い、ICTやクリッカーの活用など「形式重視」だけでは上手くALは機能しない。そもそも「子どもは自分のアタマで考えたこと」しか深く学ばない。また、能力が育てる方法は一般的に定義されているALだけとは限らない。方法依存ではない視点から、ALを含めて学びを問い直す必要があるだろう。
コメントの受付は終了しました。