著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
授業だけでなく家庭学習で実現する「主体的・対話的で深い学び」
早稲田大学教職大学院教授田中 博之
2017/3/16 掲載

田中 博之たなか ひろゆき

早稲田大学教職大学院・教授。
専門は,教育工学および教育方法学。
1960年北九州市生まれ。大阪大学人間科学部助手,大阪教育大学助教授,教授を経て,2009年4月より現職。
文部科学省「全国的な学力調査に関する専門家会議」委員(2007年〜)

―本書には小学校、中学校の家庭学習の事例が収録されています。それぞれの学校では「家庭学習力アップ大作戦」が行われているとのことですが、これはどのような取り組みなのでしょうか。

 これまでの家庭学習のノウハウとは異なり、家庭学習力という8つの領域からなる新しい資質・能力を考えて、それに基づいて作ったアンケートを使うところがオリジナルなところです。例えば、学習習慣、生活習慣、自律心、自己学習力、自己コントロール力などの領域で合計16項目〜24項目のアンケートを子どもに付けてもらい、その結果をレーダーチャートにして返すのです。そうすると、自分の家庭学習の状況がわかり、特別活動等の学校の授業でそれを改善していく方法を友だちといっしょに考えるのです。

―本書では具体的にどのような家庭学習のアイデアが紹介されているのでしょう?

 まずキーワードをあげていくと、自学ノートづくり、並行読書、ノーテレビデー作戦、定期考査予想問題づくり、定期考査復習レポート作成など、多様な実践を収めています。キーワードを見てわかるように、中学校の事例も豊富です。大切なことは、こうした家庭学習の成果を、学校の授業で子どもたちが紹介し合い、よい方法をみんなで共有して全員で協力して学力向上につなげようとしていることです。

―「家庭学習力アンケート」など指導ですぐ使えるデータが購入者限定でダウンロードできるようなのですが、これはどのようなものなのでしょうか。

 本書のあるページに、ダウンロード用のウェブページのURLと秘密のID、パスワードが書いてあります。それを入力すると、家庭学習力アンケートレーダーチャート作成ソフト、さらに使い方のマニュアルなどがダウンロードできます。明日からの授業ですぐに使えて効果が上がる便利な「評価ツール」になっています。多くの実践で、子どもたちが熱中して自分の家庭学習力レーダーチャートを分析して、自分の家庭学習を見直すようになったという報告をいただいています。ぜひご活用ください。

―「アクティブ・ラーニングが絶対成功する」とのことですが、本書で紹介されているような家庭学習指導を行うことは、どのような形でアクティブ・ラーニングに結びつくのでしょうか。

 本格的なアクティブ・ラーニングでは、家庭学習を必要とする場合が少なくありません。たとえば、資料を事前に読んできて自分の考えを決めてきたり、インターネットで関連する情報を事前に検索しておいたり、あるいは、物語文や説明文のあらすじを書いてきたりすることなどが必要になります。学校の授業だけでは、こうした事前学習や創作表現に十分な時間がとれないからです。したがって、家庭学習の習慣化が、どうしてもアクティブ・ラーニングの実践では必要条件になってくるのです。

―最後に、全国でアクティブ・ラーニングを実現する授業改善に取り組む先生方に一言お願いいたします。

 学習指導要領の今回の改訂でもっとも大切なことは、子どもたちにとって21世紀社会で必要な多様な資質・能力を育てることです。その中に、家庭学習力も入れるべきであるというのが本書の主張点です。学校に来ている間だけ学んで身に付ける力は限られています。子どもたちは学校で過ごす倍以上の時間を家庭で過ごすのです。その改善なくして、学力向上も21世紀型資質・能力の育成もありえません。アクティブ・ラーニングはそのための有力な方法となりうるものです。本書で学んだことを明日から生かして、子どもたちの生涯学習力となる家庭での学習習慣や生活習慣を改善する力、つまり家庭学習力を育ててあげてください。

(構成:木山)
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