著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
道徳の授業で、教師自らがアクティブ・ラーナーとしての学習姿勢を示そう!
京都産業大学教授柴原 弘志
2017/3/16 掲載
 今回は柴原弘志先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校特別の教科 道徳の授業プラン』について伺いました。

柴原 弘志 しばはら ひろし

昭和30年、福岡県生まれ。京都大学教育学部卒業。
京都市立山科中学校、向島中学校、深草中学校を経て、京都市教育委員会学校指導課指導主事(主として道徳・特別活動領域担当)。
平成13年から文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官。その後、京都市総合教育センター副所長、京都市立下京中学校校長、京都市教育委員会指導部長等を経て、現在、京都産業大学教授。
平成26年中央教育審議会道徳教育専門部会主査代理。
平成27年道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議副座長。
平成28年中央教育審議会初等中等教育分科会専門委員。

―「特別の教科 道徳」となった道徳。今後、授業づくりではどんなことに気をつけていかなくてはならないでしょうか?

 「特別の教科 道徳」の目標に示された学習活動をしっかりと展開するということです。すなわち、「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を広い視野から多面的・多角的に考え、人間としての生き方についての考えを深める学習」を通して、その時間のねらいの実現をめざし、目の前の生徒たちの実態に応じた効果的な教材を選択、活用し、発問を工夫することが大切です。

―本書におけるアクティブ・ラーニングのとらえについて教えてください。

 本書では、道徳学習の意義を理解し、自己を見つめ振り返る中で成長を実感し、人間としての自己の生き方について考える「主体的な学び」と多様な価値観に基づく感じ方・考え方や生き方等を生かした「対話的な学び」の実現を通して、道徳的価値についての自覚や「見方・考え方」を深めることによる、道徳的な問題発見・解決や生徒一人一人の道徳的成長に資する「深い学び」を実現できる道徳の授業づくりを提案しています。

―本書ではたくさんの実践事例が掲載されていますが、例えば、どんな実践が紹介されているでしょうか。特徴的なものをご紹介いただけますか。

 教材中の登場人物への自我関与を基本としつつ、ペア・グループでの話し合いや全体での議論などが、白熱するほどにまで充実するような工夫をこらした問題解決的な学習指導の実践事例、効果的な切り返しや問い返しといった重層的な発問を駆使しながら、より深い思考へと導いている実践事例、道徳的場面での行動による実感をより確かなものとして感じとらせている実践事例を、あくまでも、道徳科の特質を踏まえ、その時間のねらいの実現に効果的な授業実践として紹介しています。

―教科化の議論の中で特に注目されている話題に、評価があると思います。3章では、評価についてもふれていただいておりますが、道徳科の評価はどのように考えていけばよいのでしょうか。

 道徳科における生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子について、特に顕著と認められる具体的な状況を個人内評価として記述することが求められています。生徒との人格的な触れ合いによる共感的な理解のもとに、生徒の学習活動への取組状況とそこでの学びを適切に把握し、道徳性に係る成長を見守り、努力を認め、励まし、生徒が自らの成長を実感し、更に意欲的に取り組もうとするきっかけとなるような評価を心掛けたいものです。
 

―最後に、道徳の授業を頑張る先生に向けてエール(メッセージ)をお願いします。

 生徒たちに、アクティブ・ラーニングの視点による「主体的・対話的で深い学び」を定着させる上で、教師自らがアクティブ・ラーナーとしての学習姿勢を示すことは極めて有意義なことだと思います。教師もまた生徒と共に「主体的・対話的で深い学び」の主体者として、「解説」にも示されているように、「人間としてのよりよい生き方を求め、共に考え、共に語り合い、」時には悩み、そして楽しめる道徳の授業に取り組みませんか。

(構成:茅野)
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