著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
大学では教えてくれなかった、保護者と信頼でつながるための心得と手立て
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2017/2/9 掲載
 今回は多賀一郎先生に、新刊『大学では教えてくれない 信頼される保護者対応』について伺いました。

多賀 一郎たが いちろう

神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に長年勤務。現在、追手門学院小学校講師。専門は国語教育。親塾など、保護者教育にも力を注いでいる。また、教師塾やセミナー等で、教師が育つ手助けをしている。絵本を通して心を育てることをライフワークとして、各地で絵本を読む活動もしている。現在小学館の『総合教育技術』にて、「教師教育の深層」を連載中。
著書として、『クラスを育てる「作文教育」 書くことで伸びる学級力』『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』『学級担任のための「伝わる」話し方』『学級づくり・授業づくりがうまくいく!プロ教師だけが知っている50の秘訣』『ヒドゥンカリキュラム入門―学級崩壊を防ぐ見えない教育力―』(以上、明治図書)、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『一冊の本が学級を変える―クラス全員が成長する「本の教育」の進め方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『多賀一郎の荒れない教室の作り方―「5年生11月問題」を乗り越える』(以上、黎明書房)、『学校と一緒に子どもを育てる本』(小学館)。共著として、『クラスを育てるいいお話』『子どもにしみこむいいお話』『学級づくりロケットスタート』(低・中・高学年)(以上、明治図書)、『国語科授業づくりの深層』『学級づくりの深層』(以上、黎明書房)、『女性教師だからこその教育がある』(学事出版)等多数。

―多賀先生は、若い先生を指導される機会が多いかと思います。実際、保護者対応で悩む先生は多いのでしょうか。

 表紙の「担任を交代してください!」とか「土下座して謝れ!」というのは、実際にいくつもあったことです。若い保護者も多いのですから、言葉の使い方もよく分からない方が増えています。僕らが教師になったときとは、全く状況が異なっています。そのことが分からずに辞めることになっていったベテランの教師もたくさんいますよ。若い先生に限らず、今どきの保護者に対応することを考えなくてはいけないでしょうね。

―書名にもなっていますが、「大学では教えてくれない」からこそ、本書では保護者対応とはなんぞや、という基本的なことから易しくご解説をいただきました。本来だったら、大学でも教えるべきものなのかもしれません。多賀先生はいかがお考えでしょうか。

 本書にも書きましたが、保護者対応は先手必勝なのですから、何も教えられないままにふらりと現場に出たら、後手に回るのは目に見えています。僕は大学では国語教育を教えているので、学生に詳しく話せませんが、ヒントになることは示しています。大学で、学級づくりや保護者対応の講座がしたいものです。ときどき3月に武庫川女子大で4時間くらい話す機会がありますが、そこでは、このことは強調します。

―予防はしていても、特に若い先生は経験も少ないですから、些細な行き違いなどから保護者とトラブルになってしまうこともあるかと思います。トラブルになった(もしくはなりそう)なとき、絶対に外せないポイントはなんでしょうか?

 真っ先に連絡をするということです。そして、一人で対応しないようにすることです。連絡は後手に回ると、言い訳にしか聞こえません。子どもの口から情報が入る前に保護者に連絡するべきですね。また、今の保護者にはチームで対応するということも大切です。一人でするのが一人前だなどと思わないことですね。

―“攻撃は最大の防御”ではないですが、本書では、保護者を味方にするような学級通信のつくり方や保護者会の例などを多数挙げてくださっています。若い先生にぜひ取り組んでほしいことがあれば、本書から一つだけ、ご紹介をいただけますか。

 学級通信は、ものすごい効果のあるものです。全員が読むとは思いませんが、書き方次第では、多くの保護者が楽しみにしてくれますし、出会ったときの話題にもなります。手書きの方がよいと思いますが、コツが分からないと書きにくいかもしれませんから、パソコン打ちでもいいでしょう。パソコンだと、若い人たちの得意な画像の活用などの利点があります。

保護者対応で追い詰められる先生もいらっしゃるとのニュースも目にします。真面目な若い先生であれば、なおさらなのではと思います。本書をお読みの読者の先生方に向けて、ぜひ多賀先生からメッセージをいただければと思います。

 どんな優れたように見える教師でも、みんなときどき保護者に追い詰められることがあります。僕もそうだったし、僕の友人たちでも、「こんなにがんばっている教師なのに……」と思う先生でさえ、保護者とはうまくいかずに辛いときがあります。まず、自分だけではないということを、考えてください。
 一人や二人くらい、合わない保護者くらいいます。いたとしても、どうってことないのです。そのことで、自分自身を否定することは全く必要ありません。少しの人に振り回されて、多くの支持者を見失わないようにしましょう。

(構成:林)
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