著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
定番教材でできる「主体的・対話的で深い学び」のある授業づくり
創価大学大学院教職研究科教授長崎 伸仁
2017/1/24 掲載

長崎 伸仁ながさき のぶひと

兵庫教育大学大学院修士課程修了。大阪府公立小学校教諭等を経て、山口大学教育学部教授、同附属光小学校長等を歴任し、現在、創価大学大学院教職研究科教授。全国大学国語教育学会理事。国語教育探究の会代表。

―本書では、定番の文学教材や説明文教材の授業づくりに役立つ学習課題を、導入・展開・まとめの流れとともに紹介しています。学習課題に着目したのはどうしてでしょうか?

 本書の「学習展開」を読んで頂けると分かると思いますが(笑)、「よい学
習課題」
を設定すると、子どもたちの思考が自然に動き出すのですね。「よい学
習課題」
というのは、子どもたちの内面に「葛藤」や「矛盾の感覚」をひき起
こさせるのですね。「ディープ・アクティブラーニング」提唱者の松下佳代氏の
言う「認知的コンフリクト」がこれに当たります。

―「判断のしかけ」とはどのようなものでしょうか?簡単に教えてください。

 改正学校教育法にも明記された「思考力・判断力・表現力等」の育成は、まさに、現代的な教育課題ですよね。これらの力を「共に」育てようとすれば、「判断」でしかけると、子どもたちは「根拠」をもとに「どちらかな」「どの程度かな」と考え始めます。そして、考えたことを自分なりに「理由づけ」して、発表したりし始めます。学習活動が活発になるだけではなく、間違いなく、学力も向上すると思います。

―本書には、定番教材の学習課題や授業例だけでなく、アクティブ・ラーニングの考え方がわかる理論編が、文学・説明文の授業づくりの両方について収録されています。この部分はどのように活用してほしいと思いますか。

 1章・文学教材編の長崎論文や2章・説明文教材編の正木論文だけでなく、序章の三津村論文の「ハンバーガーモデル」や中洌論文の「演出的読解方法」も是非読んでくださいね(笑)。全ての論文は、実践に基づいたものです。ALを機能させるには、「良質な学習課題」が欠かせません。そのために、文学教材にも説明文教材にも「学習課題のバリエーション」を掲載しております。悩んだ時などに参考にして頂けると、きっと役に立つと思います。

―「主体的・対話的で深い学び」につながる学習課題や発問を考えるのは難しいなと思う先生もいらっしゃると思いますが、日ごろからどのようなことを心がけるといいでしょうか。

 まず、教師の「素直な読み」を大切にしてほしい、ということです。例えば、「お手紙」で、かたつむり君が登場すると、子どもたちからは自然と笑みがこぼれ、小さな笑いが起こるでしょう。子どもたちは分かっているのですよね。だけど先生は、「この時のかえる君の気持ちは…?」なんてやっちゃうんですよね(笑)。それを、「かえる君は、かたつむり君にお手紙を頼んでよかったのかな…?」とやると、俄然、子どもたちは活気づくのですね。こういった「ボトムアップ型」(教材の特性を生かす)教材研究を心がけてほしいと思います。

―最後にアクティブ・ラーニングに取り組む全国の先生方に、メッセージをお願いします。

 今回のALを成功させるかどうかは、間違いなく「良質な学習課題」と「可視化」にかかっていると思います。特に「判断の可視化」は、「子供自身が自分の学びや変容を見取り自分の学びを自覚すること」(中教審答申・H28/12/21)につながります。可視化の方法としては、本書の実践では、ネームマグネット、紅白帽、ゼッケン、色紙、ガムテープ、付箋などが使われています。グループ学習後のミニホワイトボードなどの活用も有効だと思います。

(構成:木山)

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