著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
合唱コンクールに向けて、考え方や指導の引き出しがたくさんありますか?
北海道河東郡上士幌町立上士幌中学校教諭石川 晋
2015/6/3 掲載
 今回は石川 晋先生に、「THE 教師力」シリーズの最新刊として発刊された『THE 合唱コンクール』について伺いました。

石川 晋いしかわ しん

北海道河東郡上士幌町立上士幌中学校教諭。1967年生まれ(北海道旭川市出身)、1989年北海道教育大学旭川校卒業。2003年同修士課程修了。2009年河東郡上士幌町立上士幌中学校赴任。「NPO授業づくりネットワーク」理事長。
主な著書に、『音楽が苦手な先生にもできる!学級担任の合唱コンクール指導』『THE 校内研修』『THE 教室環境』『石川 晋―エピソードで語る教師力の極意』『学び合うクラスをつくる!「教室読み聞かせ」読書活動アイデア38』『「対話」がクラスにあふれる!国語授業・言語活動アイデア42』(明治図書)などがある。
ブログ:すぽんじのこころ 

―今回の書籍は、『THE 教師力』シリーズの1冊として、テーマは「合唱コンクール」です。本書のねらいと、その背景にある先生の想いについて教えて下さい。

 合唱コンクールの指導は、年々難しさを増していると感じています。子どもたちにとって合唱表現は、古いスタイルになっていて、彼らのトレンドではなくなっています。そうした背景の中で、合唱表現にクラスの子どもたちの心が向いていくために必要なことは、それぞれの現場ごとに違っているはずです。多様な年齢層、多様な現場の先生に提案いただくことで、出来るだけ多くのアプローチの仕方、手がかりを読者の方に手渡すことを目指して編集しました。

―本書の読者の中には、合唱指導に自信のない先生、初任の先生方も多くいらっしゃると思います。そのような先生方にとってまず大切なポイントは何でしょうか?

 月並みですが、一緒に歌うことです。これが全ての前提です。その上で、例えば歌詞の意味などを、しっかり掘り下げて子どもたちに伝えていくことです。楽曲の成立過程などもネットで調べればわかる時代になりました。そうした中に指導の手がかりが潜んでいますから、手間を惜しまないことです。音楽科教師としっかりつながることは、必須です。

―合唱コンクールの指導でまずよく聞かれるのは、歌うことの価値を伝え、意欲を持たせることの難しさです。意欲が低い子どもや歌えない子への対応で大切なことは何でしょうか?

 Q2でも述べたことにつながりますが、意欲が低い生徒には、指導の前に、まず先生が歌う姿勢を見せていくことが大切です。もう少し詳しく書けば、先生が楽しく歌う姿勢を見せることです。歌えない子に関しては、個々の歌えない理由を先生がしっかりアセスメントし、一人一人と向き合うことです。歌えないことにも歌わないことにも、個々それぞれ理由があります。

―「合唱指導はチームワーク」とも言われます。練習における子ども同士のチームワークや、担任の先生と音楽の先生との連携、保護者とのチームワークなど―。リーダーを育てる絶好の機会とも言われますが、そのポイントについて教えて下さい。

 Q1でも述べましたが、まさにその点が、今難しくなっていると考えています。本当に力量の高い一部の先生しか、コンクール指導を教室経営に生かすことに成功していないのではないでしょうか?コンクールという仕組み自体を見直す必要についても、本書では触れていますが、いずれにしても、結果として教室経営に生きればというような心構えで、まずは、みんなで気持ちよく歌うことを目指していければいいと考えます。行事が教室経営に直結する時代は去ったというのが実感です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 合唱コンクール指導に悩んでいる先生方に必要なことの一つは、様々な考え方や指導の形を知り、引き出しを増やすことです。本書では、それぞれの実践全体が見える形で記述いただくことで、読者のみなさんの引き出しが増えるようにと考えて編纂しました。拙著『音楽が苦手な先生にもできる!学級担任の合唱コンクール指導』の実践編としての意味合いも持っていますので、合わせて読んでいただけると、理論的な背景や具体的な指導方法もわかって、より理解が進むものと思います。

(構成:及川)

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