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体育の授業開きが学級を救う 中学校のネタ
根本 正雄 編著
まえがき
実践1 体つくり「体ほぐし」で学級を救う(冒頭)
実践2 体つくり「体力を高める」で学級を救う(冒頭)
実践3 水球「学級の仲間作り」で学級を救う(冒頭)
実践4 器械運動「マット」で学級を救う(冒頭)
実践5 器械運動「鉄棒」で学級を救う(冒頭)
実践6 陸上運動「短距離走・リレー」で学級を救う(冒頭)
実践7 陸上運動「ハードル走」で学級を救う(冒頭)
実践8 陸上運動「走り幅跳び」で学級を救う(冒頭)
実践9 ボール運動「バスケットボール」で学級を救う(冒頭)
実践10 ボール運動「サッカー」で学級を救う(冒頭)
実践11 ボール運動「バレーボール」で学級を救う(冒頭)
実践12 表現運動「リズムダンス」で学級を救う(冒頭)
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まえがき
学級経営がうまくいかないで困っているという若い教師の声を聞きます。教師の指示が通らず,子どもが勝手に行動し,授業が進まないという現象が見られます。そういう教師のために本シリーズを企画しました。 教師の願いや思いを体育の学級開きで語るのです。「1年間,こんな授業をしていきます」という教師のメッセージを主張するのです。そのために,次のような構想をします。 (1) 学級づくりのねがい (2) 授業のねらい (3) 授業の組み立て 最初に学級づくりのねらいを明確にします。例えば「みんなで力をあわせて学び合う学級」づくりをしようとします。 体育の授業開きで,1年間の体育授業の骨格ができます。とりわけ荒れている学級やまとまりに欠けている学級にとって,体育の授業開きは効果があります。身体活動を通した学習によって,学級の一体感,連帯感.達成感をつくりだし,みんなで力をあわせて学びあう学級づくりが可能になるからです。 そのために,授業のねらいを絞ります。授業のねらいを運動の喜びを体験させることにします。子どもたちに体育は楽しい,自分から進んで体育の授業がしたいという気持ちにさせるには,運動の喜びを体験させていくことです。運動の喜びを共有することによって,学級の一体感,連帯感,達成感が生まれ,学級が救われるのです。 運動の喜びを体験させるには,授業の組み立てを次のようにします。 1.わかる喜びを体験させる 2.できる喜びを体験させる。 3.仲間と関わる喜びを体験させる 一つ目はわかる喜びを体験させることです。運動のしくみや動き方がわかったときに子どもは喜びを感じます。 例えば2年生でシュートゲームの学習をしています。今まで遠くに投げられなかった子どもが,「片足を一歩前に出して投げると遠くに投げられる」ことを発見したとします。 すぐに遠くには投げられなくても,「遠くに投げるコツ」が分かったことは大きな喜びです。コツを習得すれば遠くに投げられるようになるからです。ですから授業開きで「分かる喜び」を体験させることが大切です。 次に,できる喜びを体験させることです。体育の授業で子どもが喜ぶのは運動ができたときです。跳び箱の開脚跳びが授業開きで行われるのは,向山式で1時間でできるようになるからです。教師の指導で全員ができるようになるからです。 今までできなかった子どもができるようになった自信は大きいです。「自分もやればできる」という自信は,他の子どもにも転移します。跳び箱が全員跳べたという感動は,子どもだけでなく教師の喜びにつながります。授業開きは子どもと教師の一体感を作り出す内容にしていくと効果的です。 それは仲間と関わる喜びを体験させることにつながります。体ほぐしの授業は,子ども同士の一体感も作りますが,子どもと教師の一体感も生み出します。体ほぐしは指導している教師も楽しくなります。子どもが心と体を開放し楽しく動いている姿を通して,喜びを共有することができるのです。仲間との関わりはこのような一体感を生み出し,学級経営にも役立ちます。 本シリーズでは,以上のような学級開きで,学級が救われたという実践例を紹介していただきました。
/根本 正雄
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実践1 体つくり「体ほぐし」で学級を救う(冒頭)
北海道上富良野町立上富良野中学校 /斉藤 直樹
1 学級づくりの願い
新任時代痛い目にあった。 入学間もない生徒たちに男女ペアのフォークダンスを無理にさせたのだ。 「ほら! 手を繋げ!」「『せーの』で繋ぐぞ!」「照れずにやれ」と命令口調であった。 リラックスして楽しむ雰囲気どころではない。 誰も手をつながず,生徒はそっぽを向いた。 次の年から私の学級(学年)づくりの目標が変わった。
男女が笑顔でフォークダンスができる学級
4年後,担任している学年の卒業レクリエーションを行うことになった。 学年生徒会で企画会議を行い,次のレクが提案された。 ・オクラホマミキサー ・マイムマイム ・嵐がきたぞ猫がきたぞー 『男女混合のフォークダンス』が2つも入っている! 心の中でガッツポーズをした。 提案は,支持多数で決定された。 決定したダンスは,小学生でもできるシンプルなものである。 幼稚に思われる方もいるだろう。 しかし,中学校3年生が卒業直前最後のレクリエーションにフォークダンスを選んだのだ。 レク当日は,多少照れながらもキャーキャー言いながら楽しそうにダンスを踊っていた。レクの最後には教師も加わり全員で手を繋ぎ輪になった。 そして,全員で一斉に「さようなら」を言った。 涙がでるほどうれしかった。学年の教師たちの協力と毎時間行ってきた体ほぐしの運動のおかけである。
2 授業のねらい
体ほぐしには,主に3つのねらいがある。 @ 体の状態に気づくこと。 A 体の調子を整えること。 B 仲間との交流 私は,体ほぐしを
仲間との交流(心ほぐし)
に重点を絞って行っている。 『男女が笑顔でフォークダンスできる学級』をつくるためである。 体ほぐしは体と心の緊張を和らげる効果があり,集団のコミュニケーションを深めるために,大変有効である。 異性を意識し性差・体力差も広がる『思春期』だからこそ,実施する意義は高い。
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実践2 体つくり「体力を高める」で学級を救う(冒頭)
茨城県立土浦養護学校 /河村 要和
1 学級づくりの願いと達成に向けた取り組み
(1) 「すべての子が力を高め合う学級」づくり
学級の柱を決める
知的障害養護学校では,体が思うように動かすことのできない生徒から,競争意識を持って運動に取り組む生徒まで,様々である。その1人1人に力をつけていかなければならない。互いに意識し合う中で,積極的にがんばり,力を高め合うことを学級の柱としたい。
モデルを見せる
「自分もやってみたい」そのような気持ちを作ることで,指示が通りやすくなり,運動能力の上達が早くなる。そのためにモデルを見せたい。特に知的障害のある子どもたちにとっては,言葉での指示よりも大変効果的である。まずは教師が大げさに,かっこよくやって見せるとよい。 また,運動の得意な生徒に見本を見せてもらうことも効果的である。小学部(小学生)では,大人である教師の見本が子どもたちの憧れとなった。それが中学部(中学生)になると,かなり友達を意識し,ライバル心も芽生えてくる。友達の技を自分もやりたくなる。
(2) 体育授業開きで必要な診断 能力差のあるすべての子どもたちが,1人残らず力をつけていくために,まず,体力の診断をすることは欠かせない。もちろん,誰にどの障害があり,その配慮点を確認した上である。その上で,生徒自身には,
自分の体はこのくらい動くんだ
と気づかせる。教師自身は,
1人1人の動きを診断する
そのことがベースとなって,1人1人に力をつけていく指導が始まる。
(3) 運動が大好きで,みんなで一緒に楽しめる子どもたち
余暇活動につながる運動能力を身につける
指導を通して最終的に願うこと,それは生涯につながる運動能力を身につけることである。知的障害のある子どもたちは,大人へとなる中で運動の機会が減り,体重の増加が心配される。また,社会に出て,運動する楽しさがあることは生活の充実につながる。たとえば,ウォーキング,ジョギング,自転車乗り,ボーリングなどができれば,余暇を楽しむことにつながる。その基礎的な運動能力・運動感覚を育てたい。以下のような力である。
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実践3 水球「学級の仲間作り」で学級を救う(冒頭)
沖縄県立八重山高等学校 /太田 輝昭
1 学級づくりの願い
学級づくりの基本は授業である。知的な授業,楽しい授業,熱中する授業をするならば学級が荒れることはない。
水球で,学級の仲間作り 学習カードの「教師コメント」でやる気を引き出す
2 授業開きからの3時間で行うこと
授業開きからの3時間を「黄金の3時間」という。 この「黄金の3時間」で以下を行っている。
@ 単元を貫く「授業システム」を構築する A 水球で仲間作りを行う
@の「授業システム」作りを必ず行う。授業の生命線である。 「授業システム」は,いいかえれば,「授業の仕組みを作る」ということである。「ルールを作る」ということである。 授業システムが構築されれば,生徒は自動的に動くようになる。 生徒は次にすることがわかるからである。 自分のやるべきことがわかれば授業が荒れることはない。
3 授業システム
私は,「授業システム」作りで次のことをしている。
@ 授業の方針をいう。 A 「水泳級表システム」を徹底させる。 B 「学習カードシステム」を徹底させる。 C 授業の流れのシステムを徹底させる。 a どこからプールに入るか。 b 靴箱に靴を必ず入れる。 c どこの場所に整列するか。 d 準備運動の手順。 e 授業終了15分前に更衣する。 f 学習カード記入後,教室にもどる。
紙幅の都合上,すべてを紹介することはできない。 「学習カードシステム」の一部を紹介する。
(1) 「学習カードシステム」教師のコメント欄 学習カードに,次のことを書いている。
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実践4 器械運動「マット」で学級を救う(冒頭)
静岡県掛川市立西郷小学校 /前島 康志
1 学級づくりへの願い
小学校から中学校へ異動した年,私は,生徒との信頼関係を築くことに失敗した。一度,崩れた信頼関係を取り戻すのは本当に難しかった。小学校と違って,中学は教科担任制であり,生徒と接する時間は限られている。しかも,話をなかなか聞いてもらえなかった。 私にできることは1つしかなかった。1時間1時間の授業を充実させていくことである。1時間の授業を大事にすることで,ようやく3学期になって少しずつ信頼関係が築けるようになった。 本当に苦しかった1年間であったが,多くのことを学んだ。その中で特に大事だと考えるのが,以下の3点である。 @ 授業が勝負(1時間1時間を大切にする)。 A 生徒が一目おくものをつくる。 B 生徒の良さを見つけ,誉めていく(心から誉める)。 この中で,1番効果的なものは,Aである。生徒が「この先生,なかなかやるぞ!」と思うものがあれば,1年間必ずうまくいく。 しかし,私の場合,生徒に自慢できるものがなかった。私にできることは1つ。それは,授業を大事にしていくことであった。授業で「この先生の授業,楽しくて力がつくぞ!」と生徒たちに思わせていくことである。 生徒との信頼関係を築けなかった日からずっと願いは同じである。授業を通して,生徒たちと一緒に成長できる。教師も生徒も自分の可能性を信じて取り組める。そんな学級を一緒につくっていきたいと思っている。
2 授業のねらい
中学1年生の学級開きをマット運動で行うことにした。マット運動にした理由は以下の2つである。
@ 「できる」体験を味わうことができる。(個人・集団) A 協力してできる課題設定をすることで,協力して取り組む良さを体感することができる。
今回のマット運動では,Aの集団演技を取り入れることが大きなポイントである。マット運動を個人種目だけで行うと,「できる」「できない」で終わってしまいがちになる。もちろん,「できる」までの過程で,関わり合いは持てるだろうし,努力していく過程に価値を見いだすこともできる。 しかし,今回は,集団演技を取り入れていくことで,仲間づくりもできると考えた。例えば,生徒の中で前転しかできない生徒がいる。この生徒に後転を教えていくことは大事であり,必ず指導することであるが,同時に,集団演技として取り組ませる。前転でも,集団でリズムよく行うときれいな演技になるのである(3人そろって前転するだけで違ってくる)。 このような集団活動を組むことで,すべての生徒の活躍する場があり,1年間一緒に生活する仲間意識を育てることができると考えた。
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実践5 器械運動「鉄棒」で学級を救う(冒頭)
茨城県立水戸聾学校 /三沢 博樹
1 学部づくりのねらい
(本校では中学部生徒全員で体育授業を行っている) 「できない事ができるようになる学部」
2 授業のねらい
@ 誰でもできることから始めたり,ゲーム化することで,鉄棒を通して仲間と関わる喜びが体験できる。 A 持久懸垂(ダンゴ虫)時間の目標を知り,分かる喜びが体験できる。 B 「段階別台付き鉄棒」指導法や「くるりんベルト」という優れた指導法・教材を用いて,逆上がりができるようになる喜びが体験できる。
3 授業の組み立て
(図省略)
4 授業の実際
(1) 単元名 鉄棒運動(逆上がり)
(2) 単元について 逆上がりは本来,幼稚園から小学校3年生くらいの間にできるようになるとよい。宮下氏によると,動作の習得のピークは8歳から9歳であり,さまざまな動き方,身のこなし方は11歳以下に練習することが望ましい(※1)。古屋氏も「鉄棒運動の基礎は,幼児から低学年のうちに習得させるのが望ましい」と述べている(※2)。 逆上がりができるためには,腕支持感覚・逆さ感覚・回転感覚を主とする基礎感覚や,全身の筋力といった複合的な要素を用いた協応動作が必要である。しかし,下山氏が「逆上がりができないのは逆さになるのが怖いからである」と述べている(※3)ように,できない根底にあるものは,重心(腰の部分)が頭よりも高い位置にある感覚である「逆さ感覚」の未成熟である。 普通小学校から本校に入学した女子生徒が,「後ろ向きで逆さになるのが怖い」と言っている。逆さ感覚が身に付いていないと,いくら他の感覚や筋力が優れていても逆上がりはできない。
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実践6 陸上運動「短距離走・リレー」で学級を救う(冒頭)
北海道浜中町立霧多布小学校 /富樫 慎也
1 授業のねらい
運動が苦手な中学生や教師に反抗的な中学生は,「走りたくない」「疲れるから嫌だ」「競走なんてまっぴらだ」「真面目になんか走ってられるか!」という思いがある。 「短距離走・リレー」は個人やチームで速さを競う競技である。しかし,「単なる競走と位置付けてタイムだけを計ったり,あるいは競走だけをしては子どもたちのやる気を無くしてしまう。また,教師が5分も10分も説明ばかりしても子どもたちは全く聞いていない。おまけに十分な運動量が確保できず,子どもたちには不満ばかりが残る授業となる。教師の指示が通らず,子どもたちが自由気ままに行動し,授業が成立しない事態になりかねない。
荒れを防ぐには次のことを意識して授業を構築しなければならない。
1 空白の時間を作らない 2 明確な指示 3 誉めて誉めて誉めまくる 4 変化のある繰り返し 5 個別評定は明るく
短距離走が嫌いな子どもたちは,「足が遅いから嫌だ」「走る姿を見られたくない」と言う。友人と比較されることに抵抗を感じている。 私は,リズム・テンポのある授業を心がけ,運動を行う子どもたちを誉めて誉めて誉めまくった。 基礎感覚・基礎技能づくりを重点に「短距離走」と「リレー」を組み合わせて実践した。
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実践7 陸上運動「ハードル走」で学級を救う(冒頭)
北海道北見市立相内中学校 /斉藤 満幸
1 生徒を待たない
授業開始に響く声。 「イチニー,サンシー,ゴーロク,シチハチ!」 「ニーニー,サンシー,ゴーロク,シチハチ!」 ・・・・・・・・ この声は,教師の私の声である。 準備体操である。 生徒はチャイムが鳴っても全員グランドに集まってはいない。 集まっている生徒でも,それぞれが群れている状態である。 中には,ジャージも着ないで,革靴を履いている者もいる。 その時,上のような声を出して,勝手に準備運動を始める。 1度やってみるといい。
生徒を待たない
これがポイントである。 体育の時間は,整列に時間がかかる。着替えにも時間がかかる。よって待つことが多い。 しかし、上のように全員そろわなくても始める。早いクラスは私の声であわてて整列を始め体操ができる。 荒れているクラスでも,整列こそしないが,私の方を向いて体操を始める。慣れてくると整然としてくる。 授業開きだからこそ,時間と同時に体操を始めることを意識させるのである。 授業の出だしは注意から始めない。授業開きにお説教はいらない。 荒れているクラス,まとまりに欠けているクラスは,声のかわりにホイッスルをおもいっきりふいて体操を始める。効き目は大きい。
2 体育の授業開きの効果
一昨年,教務で全校生徒対象に「教科の好き,嫌い」調査を行った。1番好きな教科は,どのクラスもダントツ「体育」であった。 生徒は,都合で体育がつぶれると,ブーイングの嵐である。 他の教科が都合でできなくなった場合は他教科と入れかえるが,体育だけは,入れかえず他の教師が替わりに指導することがある。 それだけ,生徒は体を動かすことが好きなのである。そんなに好きな「体育」の授業開きを,きちんと意識して取り組まなければならない。 とりわけ荒れている学級やまとまりに欠けている学級にとって,体育の授業開きには最高の効果がある。 まず,何を意識させるか。それは,
仲間を意識させることである
特に,集団プレーの多いものは,仲間がいなければ授業そのものが成立しない。
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実践8 陸上運動「走り幅跳び」で学級を救う(冒頭)
北海道別海町立中西別中学校 /染谷 幸二
1 学級づくりの願い
賞状で評価されないことで勝負ができる学級を作りたい。
私の学級経営の基本である。 学級の力は,体育的行事への参加態度を見ればわかる。 例えばマラソン大会。勤務校は男子6km,女子が3kmである。力のない学級は,たくさんの見学者が出る。午前中に廊下を走り回っていた生徒が「風邪をひきました」「足の爪を切りすぎて血が出たので見学します」という口実で出場を辞退する。出場する選手の横で鬼ごっこをしてふざけ合っている生徒もいる。「ただ,走りたくないだけなのではないか?」と首を傾げてしまう。 「マラソン大会が学校行事に必要かどうか?」の是非はさておき,こういった生徒が果たして学級をまとめていく上でリーダーになりえるのだろうか?学級の活動に協力してくれるだろうか? 答えは明白である。 私は「100m地点でリタイヤしてもいいからスタートだけはしなさい」「ゴールまで歩き続けてもいい。自分の弱い心に打ち勝って,スタートラインに立つことに価値がある」と学級で語り続けている。最初から勝負を逃げるような不抜けた人間になって欲しくないからである。 中学生は,力では動かない。心の底から納得しなければ,どう説得しても首を縦に振ることはない。それは,中学生は失敗を極度におそれるからである。失敗するならば,最初から勝負しない方がいいと思いこんでいる。マラソン大会も「どうぜ,優勝はできない!」と思った瞬間に,自分自身に妥協してしまう。だからこそ,賞状で左右されるのではなく,「出場すること」「歩いてでもいいからゴールすること」を評価の基準としている。 その甲斐あって,今年のマラソン大会も29名全員が笑顔でスタートラインに立ち,全員がゴールをした。途中,歩いてしまったことを後悔して涙した女子もいたが,私は「そういう気持ちになったことがうれしいよ」と笑顔で伝えた。(勤務校で全員出場を果たしたのは7学級中2学級であった) こうした中学生の特質を頭に入れながら,私は,次の3点を心がけて学級経営,授業にあたっている。
1 選択肢を提示して,自己決定の場を用意する。 2 個別評定を導入し,成功体験を数多く味わわせる。 3 失敗や苦手と思っていることが,実は単なる「先入観」であることを語り続ける。
2 授業の実際
(1) 単元名 陸上運動 走り幅跳び
(2) 目 標 技能 自己の能力に適した課題を持って走り幅跳びを行い,その技能を身につけ,競争したり記録を高めたりすることができる。
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実践9 ボール運動「バスケットボール」で学級を救う(冒頭)
北海道根室市立光洋中学校 /大石 貴範
バスケットボールほど生徒の力の差が顕著になる種目はない。教師が何も手を施さなければ,苦手な生徒は試合に参加できないままである。しかし,それでは授業とはいえない。苦手な生徒も試合で活躍できるようになってこそ,授業といえるのだ。そういったことの積み重ねが学級を鍛えてくれるのである。
1 幸子との出会い
入学式前,私は自分の教室に並べられた机の多さに少したじろいだ。教室はぎゅうぎゅう詰め,見慣れたはずの教室がとても小さく感じた。 私ははじめて40人学級を担任することになった。それまでに経験していた人数の倍近くである。 私は不安だった。自分はこの集団を統率できるのだろうか……と。 しかし,それは人数が多いからこそできるダイナミックな実践ができるチャンスでもあった。 1人1人が個性的でたくましく生きている学級。誰でも可能性を発揮できる学級。自由で平等な明るい学級に私は憧れた。 入学式の翌日,学級委員長を決めた。もちろん,やりたい者が自由に立候補,複数いればじゃんけんの「自由立候補じゃんけん制」である。 「立候補する人はいませんか」 「はい!」 私の声にすぐさま反応したのは幸子(仮名)であった。幸子の他に立候補した者はいなかった。拍手の中,幸子は学級委員長になった。 しかし翌日,私は幸子の日記を見て,幸子の違う一面を発見した。 「私,先生の言葉につられてつい立候補しちゃったけど,きちんとやっていける自信がありません。うまくやっていけるか心配です」 幸子はとても明るくひょうきんな生徒であったが,一方で自分に自信を持てずにいたのだ。 私はこの日,幸子の力を伸ばしてあげたい,と決意を新たにした。
2 幸子も活躍できる授業
幸子は運動が苦手な生徒であった。ボールが自分に向ってくると 「きゃー! うわっ!」 と叫んでしまうような生徒だった。 しかし,ボールを毛嫌いして逃げるような生徒ではなかった。決して上手とはいえないが,叫びながらも必死にボールを追いかけようとする姿勢を見せていた。 私は,そんな彼女の姿をいとおしく思った。彼女の持つ明るさを生かし,楽しい雰囲気の中で彼女の力を伸ばしてやりたいと思った。 彼女のような明るいキャラクターが生かされる楽しい授業。そして,その中でいつの間にか力をつけていく授業。そんな授業を目指した。 そのためには,ゲーム形式の練習で生徒同士のかかわりを多くすること,特別ルールで苦手な生徒にもチャンスが与えられることが大切であると考えた。 特別ルール無しでバスケットボールのゲームを行うと,得意な生徒ばかりが活躍して苦手な生徒はただボーッと立ち尽くすといったことを招く。幸子が生かされるためには,苦手な生徒にもボールが回ってくるようなゲームを作り,全員が活躍できる授業でなければならなかった。
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実践10 ボール運動「サッカー」で学級を救う(冒頭)
千葉県銚子市立第一中学校 /吉原 尚寛
向山洋一氏によれば
体育授業の中心をなすのは, @ 安全への配慮 A 技術の習得 B 汗をかくほどの練習量 C 仲間と一緒にプレーすること D 何かの発見があること 「子どもの運動量を確保する向山流体育授業」 『教え方のプロ・向山洋一全集26』明治図書 2001年 より抜粋
上記の5点は,体育授業作りのポイントとして欠くことのできないものである。
1 授業のねらい
本実践では,サッカーの基礎技術・技能を習得させる内容を「人間関係づくり」という視点から構成した。2人1組,グループ活動を多く取り入れることで生徒の関わり合いを増やし,人間関係を広げていきたいと考えた。
2 授業の組み立て
授業個々のパーツは,TOSS体育通信,『楽しい体育の授業』の追試を中心に組み立てた。人間関係づくりを中心にドリブル→トラップ→シュート→ドリブルシュートの順に1単位時間を組み立てた。 サッカーボールが2人に1つという条件の下,実践を行ったが,1人に1つあることが望ましい。
3 授業の実際
(1) 単元名 サッカー
(2) 単元について サッカーは生徒にとっては大変好きなスポーツである。他の球技に比べ,1得点の価値が高く,チームで協力して得点することで達成感や成功体験が味わえるスポーツである。ボールを主に足で扱い,シュート・トラップ・ドリブル・パスなどの基礎技能の習得が他のスポーツよりも難しい。また基礎技能の個人差が大きく,中学生になると男女差,個人差がさらに大きくなる。今回の授業では男女別習複式学級を想定して行った。生徒が1番好むシュートを中心に,ドリブル・トラップの技能を習得させ,その中で人間関係づくりを行う。 事前の実態として以下の項目を質問紙法で調査した。 質問項目は,小学校の体育授業についての解答である。半数の生徒がサッカーの授業に対して興味・関心を示している。Jリーグ,イタリアのセリエAで活躍する日本人選手,一昨年日韓共催で行われたワールドカップの影響がその要因であると考えられる。
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実践11 ボール運動「バレーボール」で学級を救う(冒頭)
北海道釧路市立景雲中学校 /山本 真吾
1 学級づくりの願い
4月の授業開きの時,こんな語りをして授業を始める。それは授業での願いでありながら学級への願いでもある。
例えば,こんな場面があったとしましょう。先生が,みなさんの数学の中間テストを返しました。その時,鈴木君の隣の席の佐藤君が,鈴木君の30点の答案用紙をのぞき見て,“みんな,こいつ数学のテスト30点だぜ”と笑ったとしたら,みなさんは,どう思いますか? テストの点数というのは個人の情報です。その人の住所や電話番号やキャッシュカードの暗証番号と同じで必要もないのに他人に知らせてはいけないのです。ましてや,その個人情報を見て,笑ったり,バカにしたりするということは人間としてもっとも恥じるべきことの1つなのです。ところが,人ができないのを平気で笑う人がいる教科があります。何の教科だと思いますか? 保健体育です。 体育が不得意な人は,一生懸命やっても上手くできず,その姿が他の人からはおかしく見えることがあります。でも,それを笑っていいのでしょうか? 不得意な人が失敗して,ゲームに負けてしまうことがあります。それを怒っていいのでしょうか? 不得意な人と同じチームになったら,あからさまに不満の態度を示す人がいます。そんな態度をとっていいのでしょうか? 数学や英語のテストの点数は,他の人には分からないし,人に見せる必要もありません。
しかし,体育で何か運動をしている姿は,隠しようがありません。どうしても,授業を受ける人みんなに見えてしまいます。できないことを,笑ったりバカにしたりすることは差別です。みなさんは差別をする人間になりたいですか。そんな人は1人もいないと思います。できない人を,励まし,助け,教えることができる人間になりたいはずです。 体育が不得意な人に言います。体育が嫌いでもよいのです。不得意で劣等感を持っていてもよいです。その劣等感に負けないでください。 体育が得意な人,好きな人に言います。自分の好きなもの,得意なもので他の人を傷つけてもいいですか。好きだからこそ大切にしなければなりません。励まし合い,助け合い,教え合うことができる授業にしたいですね。
2 授業のねらい
ねらい1:「励まし合い,助け合い,教え合う」 「励まし合う」「助け合う」「教え合う」は生徒の成長の段階でもある。 「励まし合う」とは,言葉をかけ合うことである。「ナイス」「ガンバ」ととにかく声をかけるところから始める。 「助け合う」とは,相手のミスをカバーすることである。チームメイトがコートの外にはじいてしまったボールを追っかけたり,ミスを帳消しにするために次のプレーをがんばったりと,「励まし合い」より具体的な行動が求められる。
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実践12 表現運動「リズムダンス」で学級を救う(冒頭)
茨城県立鹿島灘高等学校 /小笹 宗男
1 学級づくりのねらい
根本正雄氏は,体育の学力として次の4点を挙げている。
1 感じる力 2 分かる力 3 できる力 4 かかわる力
1 感じる力 感じる楽しさは,感覚的に楽しいと感じることである。理屈ではなく,感覚的な楽しさである。「もっと楽しくやりたい」という関心・意欲を高めるのである。 各教材,運動,動きに対し「素晴らしい,いい」という感性を高めていく。 2 分かる力 3 できる力 動きを覚え,慣れてくるうち楽しくなってきたというのは「分かる」ことである。動きを理解し,認識したのである。理解し,動きの全体の流れ,1つ1つの動き方が分かることが,「できる力」につながる。 4 かかわる力 1人で活動するのではなく,仲間,友達とかかわることでお互いを認め合う雰囲気が生まれる。そうすることで,体育が苦手な生徒も活動し,固い雰囲気が壊れ,自分を出すことができる。この4つの力を育て,一体感・連帯感・達成感を生み出す授業づくりをしていく。
2 授業のねらい
・仲間とリズムにのって,楽しく踊る。 ・いろいろな動きを自由に出し合い,工夫してみんなと踊る。 ・見せ合って,互いの踊りの楽しさを分かち合う。 ・互いのよさを認め合い,協力し合う。
3 授業の組み立て
毎時間のはじめ10分で行う。準備運動として取り扱う。 リズムダンスを準備運動で扱うと次の利点がある。
リズム感覚が生まれる 汗をかく 運動量がある 楽しくできる
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