- はじめに
- T TOSS授業技量検定で授業力を高める
- 一 D表五項目を意識することが授業の腕を上げる一番の近道
- 1 授業の技量を上げる唯一の方法
- 2 TOSS技量検定が始まる以前の模擬授業検討
- 3 言葉を削ることから始まる教師修業
- 4 ビデオは正直に授業を再現する
- 5 教師の努力目標を簡潔に示している
- 6 D表ライセンス項目別攻略法
- 二 D表にチャレンジすると授業が明らかに変わる
- 1 緊張した分だけ、成長する
- 2 生徒は教師の何を見ているか
- 3 D表にチャレンジすると授業が明らかに変わる1
- 4 D表にチャレンジすると授業が明らかに変わる2
- 三 授業に強弱が生まれる─E表三観点の修業法
- ─E表の審査項目から克服すべき課題が見えてくる─
- 1 教育実習生の授業パターンは決まっている
- 2 優れた授業のイメージがない
- 3 E表の審査項目が示す、例えば四つの問題点
- 四 スピード感ある授業が生まれる─F表三観点の修業法
- 1 当たり前のはずが当たり前でないという現実
- 2 模擬授業に挑戦しなければ身につかない
- 3 ビデオにとって自分でチェックする
- U リズムとテンポを生み出すプチ教育技術
- ─歴史編
- 一 向山型板書法で生徒に成功体験を積ませる!
- 1 向山型板書法とは?
- 2 向山型板書法の要点
- 二 TOSSノートを使うことで作業活動のスタートラインが揃う
- 1 とにかくノートに書かせる
- 2 基本用語の意味はキーワードで書かせる
- 3 ページ数とタイトルを必ず書かせる
- 三 年表に慣れさせるためのさまざまな年表活用法
- 1 日ごろの授業で年表を使う
- 2 時代名の確認を繰り返す
- 四 発問と指示によって資料が生きる
- 1 資料を絞り込む
- 2 写真(絵)の読み取り
- 3 グラフの読み取り
- 4 その他の資料の扱い方
- 五 インターネットランドを活用する
- 1 TOSSランド(TOSSインターネットランド・TOSS商標)を使う
- 六 スマートボード
- 1 スマートボードノートブックでコンテンツを作成する
- 2 見てわかるので授業の流れが止まらない
- 七 歴史人物カルタ
- ─授業の導入で楽しく基本用語を身につける
- 1 歴史人物カルタのユースウェア
- 2 授業の導入から大盛り上がり!
- 3 人物名と関連語句が結びつく
- 八 普段の授業そのものが《テスト対策》である
- 1 水野正司氏のコメントから学ぶ学力向上のコツ
- 2 「社会はテスト勉強がしやすい」
- 九 市販ワーク
- ─生徒にも教師にも有効なシステムにすることで、生徒の取り組みは良くなる
- 1 授業の質を上げるのが大前提
- 2 市販ワーク採用の三条件
- 3 家庭学習に位置づける
- 4 「提出率一〇〇パーセント」という思想
- V 授業を崩す「我流」を排除する
- ─TOSS流・授業力アップ術
- 一 緊張感のない空気は、教師のささやかな修業で打破できる
- 1 緊張感の中に上達がある
- 2 授業に緊張感を生み出すには
- 3 短い言葉だからこそ見えることがある
- 二 説明しようとするのが我流
- ─作業中心の授業をめざす
- 1 社会科の我流
- 2 導入時の我流
- 3 板書の我流
- 4 一つひとつ説明しようとする我流
- 三 教科書とノートを使った授業で生徒の頭をフル回転させろ!
- 1 自作のプリント
- 2 自作の教材がなぜいけないのか
- 3 授業のスタイルを変える
- 四 定石を学び、追試する、そして模擬授業に挑戦する
- 1 新卒時の私の授業
- 2 教え方教室で学んだこと
- 3 定石を学び、追試する
- 4 模擬授業に挑戦する
- W リズムある授業が確かな学力を育てる
- ─オススメ授業実践
- 一 金印を使い聖徳太子の外交を学ぶ
- 1 「金印」から中国との外交の歴史を学ぶ
- 2 「金印」の意義と遣隋使を対比させる
- 二 日本刀を使って武士の起こりを授業する
- 1 日本刀を見せる
- 2 武士の戦いの目的を考えさせる
- 3 平氏と源氏
- 三 二条河原の落書で建武の新政を教える
- 1 スッと授業に入る
- 2 現代語訳対応読みで意味を理解する
- 3 建武の新政の実態をつかむ
- 四 一枚の絵を使ってリズムある授業をするには、教材との格闘が必要である
- 五 古文を使って江戸時代のリサイクルを教える
- 六 名はいらぬ%本人の生き様
- 七 説明しない「第一次世界大戦」の授業
- 八 近現代史で正しい歴史認識を育てる
- 1 何も知らずに教師になる
- 2 社会科教師の使命
- 3 戦後補償問題を授業化する
- 九 オリンピックから日本と日本人の歴史を学ぶ
- 一〇 教科が持つ楽しさを味わう「教材系」で文明開化を学習する
- あとがき
はじめに
「だらり」とした授業を見た。教員三年目。生徒にも人気があるのであろう、授業開始前、多くの生徒がその教師を囲んでいた。しかし、私はその光景に違和感を抱いた。教師と生徒の目線が合っていなかった。生徒は教師を見て発言していたが、教師の目は下を向いていた。「生徒に押し切られる授業になる」と思った。
授業開始。生徒数一〇人にもかかわらず、教師の目線は最前列の生徒に届いていなかった。これでは生徒の行動を確認できない。
「教科書を開きなさい」という第一指示から、半数以上の生徒が落ちこぼれた。中学生は「できない」と思った瞬間、思考をストップさせる。生徒を《お客さん》にしないためには、教師は生徒を見なくてはならない。そして、生徒が「できている」「できていない」を峻別しなければならない。できていれば褒め、できていなければやらせる。こうした当たり前のことが徹底できない限り、授業にリズムとテンポは生まれない。
目線は、どのように鍛えるのか。サークルの若い教師には、次のように指導している。
まずは、N字を描くように目を動かしなさい。
教室の左側最前列から目線を後方に送る。最後尾の生徒と目を合わせる。その時、笑顔で合図を送る。次に、右側最前列まで目線を動かす。一番前に座っている生徒にも笑顔で合図を送る。最後に、目線を後ろにずらして最後尾の生徒に合図を送る。目線のポイントは《一瞬止める》ことにある。止めるから、生徒は「見られている」と思う。自然と、授業に緊張感が生まれる。
その後、Z型・M型・W型とパターンを増やしていく。これが基本形である。
次は応用形である。授業成立のキーを握っている生徒の目を見て、目線を《一瞬止める》のである。
まずは、学級で最もうるさい生徒に目を止める。この場合、《目線の力》が必要となる。目線で「静かにしなさい」と訴える。重要なことは、目線を動かす流れの中で《一瞬止める》ことである。特定の生徒を見ていることを悟られてはならない。同様に、真面目な生徒にも目を止める。この場合、《優しさ》が必要となる。目線で「立派です」「その意欲を称えます」という合図を送る。
サークルの若い教師は「目線を意識して授業が変わりました」「やんちゃな生徒と目が合ったとき、初めて笑ってくれました」と証言している。
目線を鍛えるだけで授業が劇的に変化する。授業にリズムとテンポが生まれるからだ。中学生はテレビゲーム世代。我々の中学時代に比べ、スピード感ある生活をしている。授業も、それに合わせて構成しなければならない。
中学向山型社会研究会は、生徒にとって価値ある授業を目指している。「私の得意教科は社会科です」と笑顔で答えられる生徒を育てたいと願う中学教師に読んでいただけると幸いである。
/染谷 幸二
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- 明治図書