理数脳をつくる授業 理科&算数2
教室中がエーッと驚く“からだ”の不思議

理数脳をつくる授業 理科&算数2教室中がエーッと驚く“からだ”の不思議

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類似点と相違点を意識することで生まれる新しい授業づくり

からだの面積はどのくらいだろう?比例を使うと一日の呼吸数がわかる?骨と筋肉の働きはどう観察する?ホルモンを使った胃の観察から人のたんじょうまで。教室中を驚かす“からだ”の不思議を体感できる楽しい理科と算数の授業を具体例で紹介。


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ISBN:
978-4-18-984225-5
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 64頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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特集 教室中が“エーッ”と驚く「からだ」の不思議
医療最前線 傷の治療,最前線 /森田 豊
提起文 理数で「からだ」の不思議体験を /佐々木 昭弘
理科
実践@ 人のたんじょうで4つのエーッ!―5年「生命のたんじょう(人)」― /込山 宏
実践A お腹の赤ちゃんって?―5年「人のたんじょう」― /奥村 豊美
「からだの不思議」に関する小ネタ
お肉屋さんのホルモンで,「消化と吸収」の授業づくり /辻 健
生命維持装置を実感を伴って理解する授業モデル /平澤 林太郎
アジの解剖から体のつくりの巧みさを考える /有村 和章
腕のモデル「ホンネのマッスオ」で,問題解決を! /若狭 陽一
算数
実践@ 休みなくがんばる心臓は,すごい!―6年「単位量あたりの大きさ」― /中村 潤一郎
実践A 「あれ?」から学ぶ!―比例で見つめる私たちの体(6年)― /椎名 美穂子
「からだの不思議」に関する小ネタ
「からだの不思議」を調べて「比例の不思議」を味わおう! /大桑 政記
足の大きい人は,背が高くなるって本当かな? /伊藤 真由美
数字から骨のひみつをさぐる /阿保 祐一
体の表面積を求めてみよう /渡部 恵
リレー連載T 授業で育つ 科学する言葉
〈理科〉 生活用語から科学用語への変容と教師の役割 /磯ア 哲夫
〈算数〉 算数だからこそ育てられる科学を支える言葉…「式」 /山本 良和
生活科好きにする教材紹介
1年 「砂場遊び」 /内藤 博愛
2年 「やってみよう」 /青田 雅子
理科好きにする教材紹介
3年 「磁石の性質」 /原田 樹雄
4年 「水の3つのすがた」 /種子 和憲
5年 「魚のたんじょう」 /渋谷 雄二郎
6年 「月と太陽」 /斎藤 隆
算数好きにする教材紹介
1年 「たしざん1」 /大畑 智裕
2年 「春がきた」 /井上 いづみ
3年 「重さ」 /江橋 直治
4年 「直方体と立方体」 /竹尾 智登志
5年 「図形の角」 /植松 仁
6年 「生活にいかして」 /松居 恵子
授業づくりに役立つQ&A
理科 だ液(つば)のすごいパワー! /白岩 等
算数 真っ直ぐな線はできる限り定規で直線を引く習慣をつける /中田 寿幸
リレー連載U 理数というけれど 理科と算数 何が同じなの?
理科と算数ここが同じ,ここが違う
〈理科〉 似ているし似ていない理科と算数 /鷲見 辰美
〈算数〉 じっくり,じっくりと考えて……出た結論は? /間嶋 哲
理科的算数授業のすすめ
〈理科〉 「こうなるはず!」を大切にした授業を /鳴川 哲也
〈算数〉 実験算数と自然界の題材に目を向けた算数授業づくりを /田中 博史
算数的理科授業のすすめ
〈算数〉 数学的な考え方を活用した科学の授業 /小松 信哉
〈理科〉 「図」を描いて問題を考える /森田 和良
編集長連載
〈理科〉 「重さ」と「体積」の関係を授業する /佐々木 昭弘
〈算数〉 辺の長さが8p,8p,16pの二等辺三角形は作れるか? /夏坂 哲志
有識者からの提言
〈理科〉 分析と直観の両方を使う理数教育を! /安彦 忠彦
〈算数〉 CPUの機能と性能で勝負! /根上 生也
グラビア・解説 /夏坂 哲志
理数脳セミナーのお知らせ
編集後記
からだ探検隊 /冠木 誠
次号予告

特集教室中がエーッと驚く“からだ”の不思議/医療最前線傷の治療,最前線

   医療ジャーナリスト,医学博士 /森田 豊


 現代の医療

 医療とは,人間の健康の維持,回復,促進を目的とした諸活動です。病気に対する新しい治療法の中には,長い年月をかけて試行錯誤をしてきた結果で得られたものであったり,理論的科学的根拠に基づいたものであったり様々です。医療は,この数十年でめまぐるしい発展を遂げてきており,その間に,今まで当たり前のように考えられてきた医学の常識が覆されていたり,まったく医学的根拠のない迷信だったりすることもあります(森田豊『ねぎを首に巻くと風邪が治るか? 知らないと損をする最新医学常識』角川SSC新書より)。私もこれまで様々な医療行為を行ってきて,その間に,「自分のやっている方法は本当に根拠のあることなのか?」と考えたり,時には,正しくないのではと疑いながらも,それまでの慣習に従うしかないと思って実践してきたこともあります。現代の医療はevidence-based medicine(EBM)といって,医学的根拠に基づいて,行っていかなければなりません。すなわち,その行為を行った例えば100例の方と,行わなかった100例の方を,比較検討して,その医療行為を行った人たちの群で有意差をもって,効果があるとわかった場合にかぎり,その医療行為を施行すべきという結論になります。単に,少しでも努力していた方が早く治るだとか,前向きな姿勢だけは捨てたくないとかいう,努力至上主義の時代は終わり,今やこのEBMによって医療は支えられています。EBMに基づかない医療行為は,時間や費用を使うばかりでなく,病気を悪化させてしまうことにもつながりかねません。


 傷の治療,最前線

 学校や家庭で最も遭遇することの多い,切り傷,すり傷の医療最前線について紹介します。切り傷,すり傷が手や足にできたらどうしますか? と聞かれると,すぐ「消毒」という考えが浮かぶかと思います。昔なら赤チン(マーキュロクロム液),今なら白チン(塩化ベンゼトニウム,塩化ベンザルコニウム)で,すぐに消毒をするのです。数日は衣類や周囲が血で汚れないように乾いたガーゼなどを当てておくこともありますが,少したつと,できるだけ早く乾燥させて,かさぶたがつくられることで,早く治せると思っている方々がほとんどだと思います。また,化膿させないようにと,毎日,痛みを我慢しつつも消毒を繰り返すことも多いでしょう。ちなみに,赤チンは,水銀中毒の危険性が1990年にアメリカのFDA(食品医薬品局)により指摘され,全世界で使用を控える動きが加速し,今はほとんど使われていませんが,無色である白チンは,現代社会においては常備薬としても,各家庭に一つはあると思います。

 しかし,この傷に対する処置法は,誤りであることがわかってきました。傷ができたら,まずすべきことは,大量の水で洗うことです。無菌的な水が望ましいのですが,水道水でも構いません。大量の水で洗う意味は,傷に付着した砂やゴミなどの異物や,細菌を除去することです。傷を,消毒薬で消毒すると,消毒薬に刺激性があるので細菌より先に自然治癒力をもった皮膚の細胞を殺してしまいます。消毒薬を使うと傷にしみる,痛い,ということで,理解してもらえると思います。また,洗った後は,傷を乾燥させないことが傷を早く治すことにつながります。傷が治るメカニズムは,以下の通りです。傷ができる→出血する→血を固める血小板が出る→死んだ細胞や細菌を除去しようと好中球・マクロファージといった細胞が登場する→次に傷口をくっつけようと線維芽細胞が集まり→表皮細胞がやってきて傷口を塞ぐ。重要なのは,それぞれの段階で,様々な細胞成長因子が分泌され,傷を治そうと働くことです。細胞成長因子とは傷口のジュクジュクのことですが,もし乾燥させてしまうと,重要な因子を除去してしまうことになるわけです。消毒せずに水で汚れを洗い流し,ジュクジュクさせたままシートで覆う最新治療を,「湿潤(しつじゅん)療法」と呼び,1960年代に英国の研究者ウインターが動物実験で突き止めたとされています。90年代になって,米国の褥創(じょくそう)(床擦れ)治療ガイドラインで推奨されたことにより世界的に注目されるようになり,国内でも普及しつつあります。傷を,早く,優しく,美しく,治す方法と言われています。最近では,傷を乾かさないような新しい絆創膏も発売されています。

 私も,外科系の医師として,二十数年間,様々な手術を行ってきました。何年か前までは,患者さんの傷を,毎日,消毒してきました。しかし,現在,手術の傷を消毒する病院は激減してきました。手術室で傷をサランラップのようなもので密閉したら,一週間はそのままにしておきます。もちろん,傷から細菌や異常なしみ出しがあれば,生理食塩水などで洗うこともありますが,そのようなことは稀です。このように,傷に関する考え方や,治療法は,この数年間で新しくなってきたのです。


 ある対談

 作家で医師の海堂尊さんと,ある雑誌社が企画した対談で,「医療崩壊をいかに防ぐか」というテーマについて語った時のことです。「小学校,3,4年から理科の半分くらいを医学教育に取り入れたらよいだろう」との話に発展しました。「自分の体を知ることは人間としてあたりまえで,傷の治り方やなぜ膿むのかがわかれば,自分である程度けがを治せる。それが結果的には,医療現場の負担軽減につながる」との考えです。最近,外科系の医療現場では,手術後の傷が,期待した程に綺麗に治らなかったということで,苦情を訴えてくる患者さんも散見されます。これも,学校において,傷がどうやって治っていくのか,感染がどうしておこっていくのかなどの医学教育がなされていないことに一因があるように思います。

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