- まえがき
- T 卒業式の教育的意味を見直す
- 一 号泣の卒業式「子どもの事実」がここにある
- 1 「号泣」子どもの事実
- 2 一年次から卒業を意識させる
- 3 二年次、「一年後」を意識させる
- 二 教師が伝え続けたことが花開く場である
- 三 生徒を褒めて、褒めて、褒め続けて卒業式を迎えるための企画書
- 1 説教からは感動の卒業式は生まれない
- 2 教師が卒業の意味について語る
- 3 教師の願いが卒業式の企画書である
- U 職員会議に提案する「卒業式の企画書」
- 1 卒業式はシンプルでムダを省くから感動的になる
- 2 卒業式後の学活は学級の成長を表現する場である
- 3 卒業の演出を生徒会主催で行うための企画書
- V 「伝統型の卒業式」 当日までのスケジュールとシナリオをこう創る
- 一 感謝の気持ちが「伝統型の卒業式」を支えている
- 1 「伝統型の卒業式」には、その学校の教育力が表れる
- 2 第一弾「元服を語る」
- 3 第二弾「お世話になった先生に手紙を書く」
- 4 第三弾「親に感謝の手紙を書く」
- 二 お互いの「感謝」の気持ちが、しっとりとした卒業式を創る
- 1 卒業証書授与の練習
- 2 起立、礼、着席の練習
- 3 卒業生合唱の練習
- 4 三年生を送る会の取り組みで、生徒の気持ちを創っていく
- 5 一・二年生全員での卒業式準備
- 6 この他の卒業式時期の取り組み
- W 「新しい演出の卒業式」 当日までのスケジュールとシナリオをこう創る
- 一 新たな教育文化を創造しよう
- 1 すばらしい。だが物足りなさを覚える
- 2 三年間かけて「卒業公演」を実現する
- 3 翔和学園の卒業式に衝撃を受ける
- 二 「主役は子どもたちである」ということだけを追求し続けた卒業式
- 1 「卒業式の主役は私たちだ」
- 2 形式的な事柄の一切を取り除く
- 3 一年間の教育の総決算としての卒業式
- 4 翔和学園の卒業式プログラム
- 三 「新しい演出の卒業式」当日までのスケジュールとシナリオをこう創る
- 1 新しい演出の卒業式
- 2 当日までのスケジュール
- 3 新しい演出の卒業式のシナリオ(原案)
- 4 終わりに
- X 心に滲みる卒業式の講話 実例と留意点
- 一 学級全体に可能性を伝え、一人ひとりに思いを込める
- 1 入場前から生徒が涙する
- 2 学級全体に送る言葉
- 3 一人ひとりに送る言葉
- 二 エピソード+語りで短く
- 1 卒業式の講話、その原理原則
- 2 校長講話
- 3 学級担任の講話
- 三 校長講話を印象的なものにする四つのポイント
- 1 ポイント1 卒業式までにできるだけ子どもとコミュニケーションを図る
- 2 ポイント2 モノを用意する
- 3 ポイント3 卒業講話のプラン作りは四月に始める
- 4 ポイント4 「すぐに役に立つ」「すぐにやってみたい」という内容を伝える
- 5 卒業講話に挑戦する―私が校長だったら―
- Y 心に滲みる生徒の言葉作り 実例と留意点
- 一 感謝の気持ちが「礼儀」へとつながる
- 1 卒業生への礼儀指導、その出発点
- 2 在校生への礼儀指導、その出発点
- 3 多くに完璧を求めず、一点に絞る
- 二 在校生への「呼びかけ」の指導
- ――言葉作りは、全員の思いを全員で語れる言葉に置きかえる道のりである―
- 1 在校生も全員参加の卒業式
- 2 全員参加することにこそ意義がある。そして、教師集団の協力を得るための知恵が必要になる
- 3 合唱の前後に、在校生全員の思いを込める
- 4 自分の書いた言葉が入っていることを実感させる言葉作り
- 三 在校生の「別れの言葉(送辞)」の指導
- 1 在校生の気持ちを作る
- 2 卒業式に「参画」する
- 3 送辞の原稿を書かせる時のポイント
- 4 実際の文章から
- 四 在校生への「態度」の指導
- ――卒業生への感謝の気持ちを態度で示すことが在校生のやるべきことである―
- 1 式典の練習は三十分で終える
- 2 「一年間頑張った成果を出す場が卒業式です」
- 3 「言うか言わないか、するかしないかは自分で決めなさい」
- 4 「感謝の気持ちを態度で示すのが君たちの仕事です」
- Z 卒業式の演出 実例と留意点
- 一 会場レイアウト ラストは迫力と荘厳さを演出する
- 1 基本形の問題点
- 2 目的に合わせてレイアウトを変える
- 二 涙を誘い、雰囲気を盛り上げる「BGM」の工夫
- 1 一番大切なのは、「そっと」流すこと
- 2 どの場面でどんなBGMを流すのか
- 3 定番は、市販されている専用のCD
- 4 ポピュラーソングのBGM
- 5 合唱コンクールの曲をBGMに
- 6 生演奏でBGM
- 三 心に滲みる「合唱」――その1 卒業式は、感謝の気持ちを歌にのせ、伝える場である
- 1 卒業式の歌で何を伝えるのか
- 2 いろいろな演出
- 3 選曲と合唱練習
- 4 合唱曲いろいろ
- 5 泣くも良し、泣かぬもまた良し
- 四 心に滲みる「合唱」――その2 合唱を成功させるための布石
- 1 心に滲みる合唱
- 2 演出に担任の語りは欠かせない
- 3 留意点
- 五 「開会・閉会」の言葉 言葉を削り、厳粛さを演出する
- 1 卒業式は授業である
- 2 司会進行の原理原則
- 六 在校生の「呼びかけ」演出の肝は教師の確固たる決意と第一声である
- 1 卒業式の演出の肝は、担当教師の確固たる決意である
- 2 拍手の練習にも熱が入る
- 3 すべては、合唱の第一声のための演出である
- 4 男子と女子でお互いに競り合うことで声が大きくなり、思いが膨らむ
- 5 魅力ある演出は、在校生に協力を教え、自信をつけさせることになる
- 6 在校生の「呼びかけ」は卒業生を中心に考えなければならない
- 7 ゆずれない思い。自分たちがやがて卒業生となることを意識させる
- 七 「送辞」、当日の演出――在校生の別れの言葉
- 1 会場の雰囲気作り
- 2 バックミュージックは「オルゴール」で!
- 3 実例送辞
- 4 読み方の指導
- 八 卒業生保護者代表の言葉
- 1 保護者の方との信頼関係作り
- 2 卒業生保護者代表の言葉(例)
- あとがき
まえがき
卒業式後の学活、担任として伝えたいことがたくさんある。しかし、私は敢えて封印する。なぜなら、昨日までたくさんのことを語ってきたからだ。今までの日々が充実したものであれば、「言葉を越えた感動」が存在するはずだ。私は学級通信を読み上げて学級を閉じる。
最後の学級通信「たのたの」四二七号の一部を紹介する。
タイトル:「限りない未来に向かって」
昨日の五時間目、卒業式の総練習でした。一足先に感動させてもらいました。私が先頭で入場し、ステージの前で十一名を迎えました。学級担任である私の仕事は、卒業生一人ひとりの姿をしっかりと見届けることです。卒業式は中学三年生にとって最高の舞台です。最初の入場から、中学校三年間で学んだすべてを発揮します。力強い一歩一歩の行進、正面を見る堂々とした姿勢、それらはすべて学校生活で身につけた「自信」の証明です。
男子は恥ずかしがり屋なので、視線を床にずらして歩きます。これは、今年の四名だけではありません。今までの卒業生もそうでした。本番ならまだしも、前日の総練習は視線が上がらないものです。
大勝負に強い女子は違いました。視線を正面に定めて歩きました。だから、私と目と目が合いました。私が目で「卒業おめでとう!」と送ると、笑顔で返してくれました。咲さんから始まり、ひとみさん、古都子さん、千裕さん、加奈子さん、美希さん、最後の明日未さんまで、全員と目と目が合いました。
生徒には「言葉は信じない」と何度も言ってきました。人間は言葉では何とでも言えます。しかし、「心の鏡」である目は嘘をつくことができません。心に感謝の気持ちがなければ、輝くような目はできません。卒業式前日から、素敵な目に出会えたことを嬉しく思っています。
昨日の帰りの会は、久しぶりに長くやりました。今年度、最も長い学活になったと思います。それでも、十分間ぐらいでしょうか。卒業式総練習の感想を一人ずつ、発表してもらいました。「歌に感情がこもっていました」「一、二年生の態度も立派でした」「明日は、今日以上の卒業式にしたいです」という感想が続きました。誰一人、恥ずかしがることなく、堂々と発表していました。特に、男子四名、耕史郎君、元気君、俊太郎君、秀和君の言葉に頼もしさを感じました。
今日、みなさんの卒業をたくさんの方が祝福してくれました。人は、多くの人々の支えがあってこそ成長します。誰からでも学ぼうとする謙虚さと、学ばせていただいた方への感謝の気持ちを忘れずに、未来へ向かって一歩一歩前進されることを期待しています。今までお世話になった人々からの期待に応えられるような豊かな日々を送ってください。
「明日が早く来て欲しい」と思える人生でありたい。
これが、今の私の目標です。十一人の更なる飛躍を祈っています。
十年後、二十年後、三十年後……。どうしても苦しく、どん底まで落ち込んだ時、「中学時代、素晴らしい仲間がいた」と思い出してくれたのなら、学級担任として、これほど嬉しいことはありません。きっと、心の支えになるはずです。卒業おめでとうございます。
この学級の長所を一言で表現すると、「素直で、純粋なところ」と言えるでしょう。ミスや失敗、小さな過ちを、すぐに取り戻す努力をしていました。自分にとって大切なアドバイスを素直に聞き入れる力を持っていました。大人になって社会に出た時、最も求められる力です。ずる賢さや上手な振る舞いも大切ですが、「素直である」「純粋である」ということを抜きに信頼を手にすることはできないからです。
中学校の学級経営は「谷あり 谷あり 谷あり」の連続だ。思い通りには進まない。それは、成長期にある生徒を相手にしているからだ。人生で最も大きく成長するエネルギッシュな時期に生きる生徒と、同じ時間を過ごせるのは幸せなことだ。
卒業式、私は三年前の入学式を頭に思い浮かべながら過ごすようにしている。毎日一oの成長でも、三年間で一〇〇〇o(一m)以上成長する。そうした姿を見届けられるのは中学教師の特権である。
卒業式一日の感動が、三年間の苦労に報いてくれる。素晴らしい卒業式を、一か月後に控えた新しい出会いにつなげたい。本書が、心ある中学教師に読んでいただけることを幸せに思う。
二〇一〇年冬 極寒の北の大地にて TOSS中学 /染谷 幸二
あこがれていた卒業式がこの中にありました。
もちろん、それまでの日常も大切だけれども、
この本の中に書いてあるように、旅立ちの日を演出して、子どもにとって価値ある卒業式にしたい。そう思いました。
1年生で入学した時から卒業式の日をイメージさせる。この意識を教師が持つだけで子どもへの関わり方が変わってくる気がします。
ぜひ、ご一読を!!
こんな学級があるのだ、と驚きます。自分もそういった学級・学年を目指したいと心から思いました。