- まえがき
- T “戦争と平和”をめぐる論点・争点と社会科授業
- [1] 社会科のなすべきこと /森分 孝治
- [2] 社会科における“戦争と平和”の論点・争点の取り扱い /森分 孝治
- [3] “戦争と平和”の論点・争点の指導 /森分 孝治
- U “戦争と平和”をめぐる論点・争点と教材化の新視点
- [1] 平和主義か国家防衛か
- ―論点・争点はどこか― /桑原 敏典
- (1) 論点・争点の歴史的背景―憲法第9条の解釈の変遷―
- (2) 論点・争点その1―自衛隊は必要か―
- (3) 論点・争点その2―有事立法は必要か―
- (4) 論点・争点その3―日米安全保障条約は必要か―
- (5) 教材化にあたっての留意点
- [2] 憲法第9条と国家主権の維持
- ―論点・争点はどこか― /溝口 和宏
- (1) 主権国家と憲法第9条解釈をめぐる論点
- (2) 軍事力による自衛権容認の論理
- (3) 軍事力による自衛権否定の論理
- (4) 憲法観の相克―民主主義か立憲主義か―
- (5) 教材化にあたって
- [3] 専守防衛か国際貢献か
- ―論点・争点はどこか― /藤原 孝章
- (1) 「専守防衛」論
- (2) 自衛権・自衛隊をめぐる戦後の動き
- (3) 「国際貢献」論とその背景
- (4) 論点・争点をめぐる認識フレーム@「専守防衛か国際貢献か」
- (5) 論点・争点をめぐる認識フレームA多様な「国際貢献」
- (6) 社会科授業における教材化の視点―世界学習としての社会科
- [4] 地域紛争に介入すべきか
- ―論点・争点はどこか― /二井 正浩
- (1) 21世紀型地域紛争の時代
- (2) 地域紛争についての討論―パレスチナ紛争を例にして―
- (3) 地域紛争の理論と授業構成
- (4) 終わりに〜地域紛争を解決するには
- V “戦争と平和”を扱った社会科授業
- [1] 小学校社会科における“戦争と平和”の論争授業づくり
- ―自衛隊は違憲か合憲か― /岡ア 誠司
- (1) 開発の目的
- (2) 「自衛隊は違憲か合憲か」論争授業における学習内容
- (3) 単元の展開
- (4) 授業展開のポイント
- [2] 小学校社会科における“戦争と平和”の論争授業づくり
- ―新しい戦争と日本― /堀口 敏雄
- (1) 学習指導案
- (2) 指導方略
- [3] 中学校社会科地理的分野における“戦争と平和”の論争授業づくり
- ―国家を分裂させるもの― /宮兼 和公子
- (1) 教材解釈
- (2) 指導内容
- (3) 授業展開
- (4) 授業展開をする上での配慮事項
- [4] 中学校社会科歴史的分野における“戦争と平和”の論争授業づくり
- ―原爆投下は必要だったのか?を考える― /佐々木英三
- (1) 「原爆投下は必要だったのか?」教授計画書
- (2) 解説
- (3) 注意点
- [5] 中学校社会科公民的分野における“戦争と平和”の論争授業づくり
- ―日本の安全保障はどうあるべきか― /鬼塚 喜隆
- (1) 単元設定の理由
- (2) 「日本の安全保障」教授計画書
- (3) 指導上の留意点
- 執筆者一覧
まえがき
社会科教材における“論点・争点”は,本シリ−ズの各主題にみられるように,子どもの将来の社会生活の在り方に関わる重要事項であり,その解決を巡って深刻な対立のある問題である。社会科が地理・歴史・政治・経済・社会の系統的な教授を施すものとなって,ともすれば忘れられがちであるが,こうした問題に自立的に意思決定していく力の育成こそが社会科の本来の目的である。意思決定はそれが求められる学業終了後の社会生活に委ね,学校ではその基盤となる知識の体系的な習得に努めるべきである,というのも一つの考え方ではある。しかし,子どもも生活の中でこうした“論点・争点”にさらされ,小さな意思決定をしているのではなかろう。子どものもつ問題意識に応えない各分野の系統的学習は,意義のよく分からない,受験のための教養の形成に留まっているのではなかろうか。社会科授業をより意義あるものにするために,“論点・争点”を積極的に取り上げるとともに,系統的な学習の指導においておいても“論点・争点”の解明に連なる部分・側面に光をあてるべきではなかろうか。
社会科教材における“論点・争点”のなかで,社会にとっても,また,子どもにとっても,最も重要かつホットであり,また,授業において取り扱いが最も困難であるのは,“戦争と平和”をめぐるそれであろう。この“論点・争点”は,第9条をめぐる憲法改定論議にみられるように,国家体制の在り方にかかわるとともに,国民の,子どもの将来の,生命に直接かかわる事態を招きかねない問題であるからである。そして,それがゆえに,様々な立場から声高な主張がなされ,運動が進められているからである。社会科における授業も取り扱い方によっては,教化・運動と批判されるおそれがある。しかし,憲法改定論議がなされつつある今日,将来の市民の育成に関わる社会科授業において,決して避けて通れない問題である。
本書では,まず,Tにおいて,“戦争と平和をめぐる論点・争点”の取り扱いと指導の在り方について考察した。それを受けてUでは,これまでわが国で論議されてきた四つの主要な“論点・争点”を取り上げ,解説するとともに,それらの教材化の視点・留意点を述べている。そして,Vでは,小学校と中学校各分野において開発された指導計画書を提示し授業づくりの視点と方法を示している。
“戦争と平和をめぐる論点・争点”は,たとえば,無抵抗不服従か武力徹底抗戦かといった原則的な問題から,軍人による防衛か民間人による防衛か,さらに,募兵制か徴兵制かといった実際的な問題などいくつもある。また,授業づくりについても様々な考え方がある。
“戦争と平和をめぐる論点・争点”に関する子どもの意思決定力の育成をねらいとして,授業づくりに取り組まれることを期待するとともに,本書がその手がかり,一助となることを願っている。
本書は明治図書出版の樋口雅子編集長の企画・支援で刊行のはこびとなり,編集・校正では原田俊明氏のご尽力をいただきました。記して感謝申しあげます。
/森分 孝治
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- 明治図書
- 読みたいです!2024/1/3
- 戦争と平和を取り扱う授業の教材研究において、必須の一冊。2019/4/23ぷーさん