社会認識教育の構造改革
ニュー・パースペクティブにもとづく授業開発

社会認識教育の構造改革ニュー・パースペクティブにもとづく授業開発

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この先の社会の進路を見定め社会科をどう変革していくか考察。

社会科誕生から60年経った今日、学問・社会・子どもの大きな変化のなかで、目標も内容も方法も伝統の継承と革新が求められています。この時、社会科のアイデンティティを大切にしながら、今後の社会を見据えた教育実践をどうつくっていくか。学会として提言。


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ISBN:
4-18-415610-X
ジャンル:
社会
刊行:
2刷
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 320頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 社会認識教育の構造改革
―視点と展望― /片上 宗二
一 問題の限定
二 社会科授業の何が問題なのか
三 社会科授業をどう改革するか
四 おわりに―「問題構成型」に立つ社会科授業構成を―
U 新しい社会知にもとづく社会科の実践
第一節 社会問題科としての社会科授業 /尾原 康光
一 問題の所在―社会問題科の定義と問題点―
二 社会問題科の類型化
三 社会問題科の単元構造
四 まとめ
第二節 社会形成科としての社会科授業 /佐長 健司
一 社会形成科の原理
二 社会形成科授業構成の実際―中等後期授業「道州制導入の是非」の学習指導案―
三 小括
第三節 多文化社会科としての社会科授業 /吉村 功太郎
一 はじめに―多文化社会科の位置付け―
二 社会のあり方を批判的に構築する資質の育成をめざす多文化社会科授業の構造
三 社会のあり方を批判的に構築する資質の育成をめざす多文化社会科の授業開発
四 おわりに―社会科における多文化社会科の意義―
第四節 新しい社会知にもとづく社会科授業開発の基礎基本 /溝口 和宏
一 はじめに
二 新しい社会知にもとづく社会科授業の目標
三 学習対象の設定
四 学習方法
五 おわりに
V 新しい科学知にもとづく社会科の実践
第一節 社会科学科地理としての社会科授業 /草原 和博
一 なぜ社会科学科か
二 なぜ社会科学科地理か
三 社会科学科地理の目標と小単元構成
第二節 社会科学科歴史としての社会科授業 /二井 正浩
一 社会科学科歴史とは
二 授業の開発事例「紛争はなぜ起こる〜二一世紀型紛争理論の探求〜」
三 おわりに
第三節 社会科学科社会としての社会科授業 /桑原 敏典
一 はじめに
二 合理的意思決定過程における科学的知識の役割
三 社会科学科社会の授業開発―「児童虐待問題の解決のために我々はどうすべきか」―
第四節 新しい科学知にもとづく社会科授業開発の基礎基本 /児玉 康弘
一 新しい科学知と社会的問題
二 科学知と市民的資質育成
三 新しい科学知にもとづく社会科授業構成
W 新しい学びにもとづく社会科の実践
第一節 子どもが追究する社会科授業 /永田 忠道
一 子どもが追究する授業の現状と課題
二 授業「日本の農業構造改革」の開発
三 社会諸科学の追究の論理への子どもの思考の接近を
第二節 学びの共同体を育成する社会科授業 /永田 成文
一 小学校における身近なくらしに関わる政治学習の現状と課題
二 学びの共同体を育成する社会科授業構成
三 小単元「津港の挑戦」
第三節 子どもの発達を促進する社会科授業 /加藤 寿朗
一 はじめに
二 社会認識の発達を促進する社会科授業仮説
三 社会認識の発達を促進する社会科授業構成
四 おわりに
第四節 新しい学びにもとづく社会科授業開発の基礎基本 /木村 博一
一 「新しい学び」の基礎基本
二 「新しい学び」としての社会科授業開発の基礎基本
三 「新しい学び」としての社会科授業の具体例
四 結びに代えて
X 新しい内容知にもとづく社会科の実践
第一節 ジェンダー学習の社会科授業 /谷口 和也
一 ジェンダー問題を社会科教育で行うむつかしさ
二 これまで社会科はジェンダー問題をどのように扱ってきたか
三 社会科でジェンダー問題をどのように扱うのか
四 授業の実際
第二節 環境学習の社会科授業 /大杉 昭英
一 環境学習の課題
二 環境学習の新たな視点と構成
三 環境学習モデル
四 まとめ
第三節 多民族学習の社会科授業 /田中 泉
一 はじめに
二 多民族学習の意義
三 多民族学習の視点
四 授業開発の例
第四節 国家学習の社会科授業 /梅津 正美
一 問題の所在
二 授業構成論
三 日本史単元「総力戦体制と『国民』形成」の開発
四 社会科国家学習における単元の位置と特質
第五節 新しい内容知にもとづく社会科授業開発の基礎基本 /原田 智仁
Y 新しい方法知にもとづく社会科の実践
第一節 インターネットを活用した社会科授業 /岡明 秀忠
一 高度情報化社会の利点と弱点は何か
二 小学校社会科授業でインターネットをどう活用するか
三 今後の課題は何か
第二節 シミュレーション・ゲームを取り入れた社会科授業 /藤原 孝章
一 シミュレーションと社会科授業
二 シミュレーションを取り入れた社会科授業の単元開発例
三 おわりに
第三節 ディベートを取り入れた社会科授業 /岡ア 誠司
一 授業開発の目的
二 単元構成におけるディベートの位置づけ
三 ディベートの実際
四 授業開発の成果
第四節 社会参加学習を取り入れた社会科授業 /橋本 康弘
一 はじめに―法(ルール)形成を視点とする社会参加学習の提唱―
二 法(ルール)形成を視点にした社会参加学習の構造
三 法(ルール)形成を視点にした社会参加学習の授業開発
四 おわりに―法(ルール)形成を視点にした社会参加学習の意義―
第五節 新しい方法知にもとづく社会科授業開発の基礎基本 /児玉 修
一 はじめに
二 「方法による学習」と「方法についての学習」
三 協働における主体性
四 社会認識の事実性と仮想性
五 おわりに
Z 生涯学習としての新しい社会認識教育の実践
第一節 博物館における社会認識教育 /山田 秀和
一 はじめに
二 改革の方向性
三 展示モデルの設計―歴史民俗系博物館の場合―
四 展示の一事例―三内丸山遺跡の場合―
五 おわりに
第二節 活字メディアにおける社会認識教育 /吉川 幸男
一 活字メディアの伝える事象の選定と目標設定
二 対象となる活字メディアの選定と学習計画
三 活字メディアにおける社会認識教育の評価と意義
第三節 映像メディアにおける社会認識教育 /伊藤 直之
一 はじめに
二 『プロジェクトX』の特質と問題性
三 映像メディアそのものを検討する授業
四 おわりに
第四節 地域社会における社会認識教育 /鴛原 進
一 はじめに
二 学習開発の視点
三 生涯学習施設等における学習モデル
四 おわりに
第五節 生涯学習としての新しい社会認識教育の基礎基本 /棚橋 健治
一 生涯学習としての社会認識教育と社会系諸教科との関係
二 生涯学習として行われる社会認識教育の豊富な人材・資金・情報などを
活用する教育プログラムの共同開発
三 生涯学習として行われる社会認識教育の強大な影響力のコントロール
[ 新しい社会認識教育実践のための行動計画
―何をどう変えるか― /岩田 一彦
一 内容教科社会科の再確認
二 市民的資質教育の強化
三 評価の時代への対応
執筆者一覧

まえがき

 私たちは、二〇〇三年三月に『社会科教育のニュー・パースペクティブ―変革と提案―』を刊行いたしました。本書は、その姉妹編となるものです。前書が二一世紀型社会科への変革を多様な視点から提案したのに対して、本書では、実践レベルでのその具体化を図り授業開発を行っております。

 ところで、わが国に社会科が成立して約六〇年が経過しようとしていますが、最近の学問・社会・子どもの大きな変化の中で、目標においても、内容・方法においてもその伝統の継承と革新が求められてきています。このような時代だからこそ、私たちは、社会科のアイデンティティを大切にしながらも、一〇年後、二〇年後の社会の進路を見定め、今日の教育実践をどう改革していくのか、そのことを真剣に考える必要があるという問題意識から、本書を企画いたしました。

 私たち社会認識教育学会は、これまで、『社会認識教育の理論と実践―社会科教育学の原理』(葵書房、一九七一年)、『社会認識教育の探求―社会科教育学の展開―』(第一学習社、一九七八年)、『社会科教育の二十一世紀―これからどうなる・どうするか―』(明治図書、一九八五年)、『社会科教育の理論』(ぎょうせい、一九八九年)、『社会科教育学ハンドブック―新しい視座への基礎知識―』(明治図書、一九九四年)、『社会科教育のニュー・パースペクティブ―変革と提案―』(明治図書、二〇〇三年)の六巻を編み、社会認識教育の理論と実践を探求してきました。本書では、これまでの研究を踏まえるとともに、今日的な課題意識のもとに、社会認識教育の構造改革を授業の事実にもとづいて具体的に提案していきたいと思います。

 Tでは構造改革の意義と視点を、UからYでは新しい「社会知」「科学知」「学び」「内容知」「方法知」にもとづいて開発された社会科実践を、Zでは生涯学習としての社会認識教育実践を、そして[ではこれからの構造計画を提案しています。本書が、読者の方々が新しい社会科の方向性を考える際の、また授業改革に挑戦される場合の参考になれば、これに勝る喜びはありません。

 社会認識教育の構造改革をめざす本書は、片上宗二教授が広島大学大学院教育学研究科を二〇〇六年三月をもってご停年退官されるのを記念して企画されました。先生は、大学での研究者生活を通して、教育実践の中での子どもの変容を機軸に社会科教育の本質を見つめられ、本格的なわが国の社会科成立史研究を確立されるとともに、授業論研究の分野も開拓されました。また、その成果にもとづいて、社会科の授業改革に多様な視点から提言をされてきました。そして、社会科教育学にとどまらず、他の関連分野の学界もリードしてこられました。本書が、先生がこれまで進めてこられた社会科教育の本質の具体化をめざす研究の延長線上に位置づくものであればと願うものであります。

 最後になりましたが、本書の刊行は、明治図書出版の樋口雅子編集長のご理解とご支援をたまわりました結果であります。ここに記して感謝申し上げます。


  二〇〇六年二月

   社会認識教育学会編集委員会 /小原 友行 /池野 範男 /棚橋 健治 /木村 博一

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      明治図書

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