「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(15)
交流を活性化するグループ学習の手立て
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/6/18 掲載

単元を貫く言語活動の授業にチャレンジしてみたら、グループ学習を取り入れる機会が多くなりました。でも、なかなか話し合いがうまくいきません。コツは何でしょうか。

まず、私たちが数名で協議する場合を考えてみましょう。多くの場合は何らかの目的があり、その実現に向けて話し合う場合が多くなります。逆に、目的が見えない中で話し合いの場や方法だけを提示されても、話し合いがまとまらないことが多くなる傾向にあります。
 話し合いの目的は、意志決定だったり、情報交換だったり、時には会話すること自体を楽しむことが目的の場合もあり、多岐にわたります。しかし、話し合いの方向性や方法などは、その目的によって異なってくるのです。
 ですから、重要な指導のコツの一つとして、子供たちに、話し合う目的を自覚できるようにすることを挙げることができます。

ポイントが分かりました。でも、「登場人物の気持ちを読み取って話し合おう」という課題を子供たちに示して、グループで話し合いをさせたのに、やっぱりうまくいきませんでした…。

確かに、それも話し合う目的かもしれません。でも、子供たちにとって必然性のある目的となっているでしょうか。例えば「主人公はなぜこの場面でこんな行動をとったのだろう」といった読みの疑問を子供自身が出して、交流によって読みを深化させる優れた実践も見られてきました。しかし、読むのが苦手な子や、そもそもなぜ教科書教材を読むのか理解できないといった率直な疑問を持つ子も支援することが、一人一人を生かすグループ学習につながります。
 そのための手立てとして、単元を貫く言語活動と密接に結び付けて、グループ学習の目的を、子供一人一人が自覚できるようにすることが考えられます。例えば上記の課題を、

「自分が選んだ作品を推薦することに向けて、主人公の気になる行動の理由を明らかにするために、同じ作品を読んだ友達と、読みを交流しよう。」

などと変えてみてはどうでしょうか。
 選んだ作品を推薦するためには、明確な推薦理由が必要になります。一人一人がそれを明らかにすることに向けて、目的をもって交流できるでしょう。
 より具体的には、この事例集『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』が参考になります。

交流の目的が大切なことが分かりました。これまで、グループ学習を活性化するために、交流の前に一人一人に自分の考えをしっかり書かせたり、司会用の進行メモを与えたりしてきたのですが、ノートやメモを棒読みするだけで、あまり効果はありませんでした。もっと具体的な手立てを教えて下さい。

手立てをどう打つかも、交流の目的と深く関わります。
 事前にノートに書かせたり、進行メモを与えたりすることも手立ての一つですが、きちんと効果を発揮させるには工夫が必要です。
 前もってノートに話すことを書かせてしまうと、書いたものを読み上げることが目的になってしまうことがあります。そのため、交流に向けた準備をすればするほど、書いたものを一人ずつ読み上げるだけになる可能性もあります。
 例えば「この作品のこの叙述を推薦したいけれど、推薦理由がはっきりしない」といった場合、子供たちの交流の目的は、事前に書いた推薦理由を読み上げることではなく、迷っている推薦理由について、意見を求めることかもしれません。そう考えると、事前にノートに書かせておくこととしては、

  • どの叙述(あるいは場面の描写、ストリー展開等々)を推薦したいのか
  • 推薦理由として、どこをどのように迷っているのか
  • それをはっきりさせるため、どんなことについて意見を求めたいのか
  • 現時点では、自分はどう考えているか

などが考えられます。
 進行メモも同様で、メモ通りに進めることが目的ではなく、グループ協議の時間内に、誰のどのような目的を達成する話し合いかをはっきりさせることが大切になります。
 この他にも、グループ協議を進めるための発話例を、子供たちの発話の中からピックアップして提示することも有効です。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、教室の言語環境をよりよいものにするためには、次のポイントに留意しましょう。

  1. グループ学習の目的を明確に位置付けていますか。
  2. その目的は、単元を貫く言語活動と結び付けることで、一人一人の子供にとって必然性のあるものとして提示されていますか。
  3. 交流の目的に応じて、事前の準備は適切に位置付けられていますか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
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