教育オピニオン
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今日からできる! 多忙感をスッキリ解消する時短術
東京学芸大学教職大学院准教授岩瀬 直樹
2016/6/1 掲載

 学校現場は本当に忙しいです。そして、仕事に際限がありません。例えば、教材研究もやろうと思えばいくらでもできてしまいます。ですから、忙しいのが当たり前、帰りが遅いのが当たり前。「教員の仕事というのはそういうもの」というのが常態化しやすい仕事と言えます。逆を言えば、「遅くまで仕事をする=熱心な先生」という思い込みが生まれやすい仕事とも言えます。
 しかし、本当にそんな働き方でよいのでしょうか? 際限がない仕事だからと、遅くまで仕事をして身も心もすり減っていく。自分の時間や家族の時間を後回しにしてしまう。持続可能な、違う働き方はないでしょうか?
 もちろん、「多忙」には制度的な問題も多々あり、個人の努力だけでは解決できないことも多いです。しかし、一方で教員の仕事を改めて見直して見えると、実は効率化できることもたくさんあります。何ができそうでしょうか? いくつか一緒に考えてみましょう。

1 子どもと一緒にやる

 例えば、教室の環境整備。参観日が近くなると、放課後遅くに掲示物をつくっている若い先生を学校内でよく見かけました。でも、これって子どもたちと一緒にできないでしょうか?
「今度、参観日があるんだよね。廊下に作品を美しく飾りたいんだけど、何かアイデアない?」
と提案して子どもたちが掲示していく。教室内の掲示も子どもたちがつくる。結果として、先生の仕事は随分楽になるし、子どもたちは「自分たちでつくった教室」と教室に愛着が生まれます。

 宿題やプリントの○付けも同様です。「先生がやること=いいこと」と言えるでしょうか? 自分で、あるいは子どもたち同士でできないでしょうか? 
「自分で間違いを見つけてやり直す力は、大人になっても大切だよ。その力を磨こう」
「友だちの○付け、慎重にやってね。まだわかっていないところを発見して伝えるのは、すごく重要な役割だよ」
とその価値を説明します。
 このように、○付けも自分たちの学びに責任をもつことを学ぶ機会にできます。先生は最終チェックだけすればいい。そういう意味では「先生が楽になればなるほど、子どもたちは自立していく」とも言えます。

 「子どもたちはいい加減にやるのでは?」と心配する声も聞こえてきます。しかし、やらなければ、できるようにはなりません。やっていくうちに、できるようになっていきます。その機会をつくるのも先生の役割です。

2 明日やることリスト

 「やらなくてはいけないこと」が次々に発生して終わりが見えない。これが多忙観につながる大きな要因です。突発的な事務仕事に追われて、多忙感ばかりが募っていくという現実が学校にはあります。そんなときの仕事術が「明日やることリスト」です。突然発生した仕事、例えば、こんな風に仕分けします。

@5分以内にできるものは、その場で終えてしまう
 すぐ終わることはその場でやってしまう。これは簡単そうですが、意外とできていないことが多いです。忘れないうちにその場でパッと終えてしまいます。この仕事を後回しにすると、「どんな仕事だったか」を思い出すことから始めなくてはならないため、何倍も時間がかかることになります。

Aちょっと先に期日があり、その日にならないと完成しないものは、カレンダーに書き込んでおく
 一番困るのは「忘れてしまうこと」。その仕事に着手し始める日をカレンダーにすぐに書き込みます。ボクは半年先の仕事でも、例えば「修学旅行の打ち合わせを開始する」と書き込んでいます。

Bそれ以外は「明日やることリスト」に書き込む
 この「明日やることリスト」がポイント。その日に発生した事務仕事を、すべてその日に片づけようとしていたら、早くに帰れるはずもありません。その場ですぐに終わらせられるものや、まだ先でいいもの以外の仕事はすべて「明日やる」ことを原則とし、それをリスト化します。1日の終わりに、カレンダーにある明日やるべき仕事をチェックして書き足せば、「明日やることリスト」が完成します。
「じゃあ、朝の30分でこれを片づけて、放課後5時半までにこれとこれを片づければいいな」
と、翌日の仕事の予定が立てやすくなるわけです。
 そして、次の日、前日つくったこのリストに沿って仕事を片づけていき、また新たに発生した仕事は、新しい「明日やることリスト」に書き込んでいきます。1日の仕事量がその日の朝に決まっている,というのがポイントです(参考『マニャーナの法則 明日できることを今日やるな』マーク・フォースター 著 青木 高夫 訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

 このように事務仕事を「ルーティーン化」していくと、どんどん効率が上がっていき、短時間でできるようになっていきます。時短のためには練習も必要。ぜひ試してみてください。
 早く帰られるようにして、自分や家族に時間を使う。この時間が結果として、日々の仕事のクオリティを上げることにもなります。小さなところから始めてみましょう!

 また、以下のエントリーもぜひ読んでみてください。
 http://iwasen.hatenablog.com/entry/2015/09/21/183254

岩瀬 直樹いわせ なおき

東京学芸大学教職大学院准教授
学びの寺子屋「楽学」主催 EFC(Educational Future Center)理事。
主な著書『効果10倍の学びの技法』(PHP新書)、『よくわかる学級ファシリテーション@~B』(解放出版社)、『岩瀬直樹―エピソードで語る教師力の極意』(明治図書)『せんせいのつくり方』(旬報社)など

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