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小学校で英語教科化? 現状、そして今後は
教育zine編集部大場
2013/5/31 掲載

 22日、政府の教育再生実行会議は、英語を小学校5、6学年の正式な教科とする提言案を大筋で認めました。
 
 現在は、平成23年度から必修化されている新学習指導要領にあわせ、小学校5、6学年で年間35単位時間の「外国語活動」が実施されています。この外国語活動を通しての目標には、「体験的に言語や文化について理解を深めること」、「外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成すること」が掲げられています。中学校の英語が、文法・文型などの学習を通じた外国語の習得を目標としているのに対し、小学校ではコミュニケーション能力の素地を養うことを目標としているのが大きな違いです。

「外国語活動」必修化後の現状

 教科化に先立ち、すでに行われている「外国語活動」の現状が気になるところです。日本英語検定協会が平成23年秋に行った「小学校の外国語活動に関する現状調査」(PDF)によれば、高学年の外国語活動の年間実施時間数は、23〜35時間が約85%、36〜70時間が約8%という回答で、多くの学校で新学習指導要領にあわせて活動が行われていることがわかります。活動を担当しているのは担任、ALT(外国語指導助手)がどちらも約90%(複数回答可)でした。使用している教材は、ほとんどの学校(約97%)で「英語ノート」(平成24年度4月からは「Hi, friends!」に移行)でしたが、ほかに学校独自のオリジナル教材を作成しているところ(約46%)もあるようです。

 また、評価の観点には、大多数の先生が興味・関心の有無(コミュニケーションを図ろうとする態度)、意欲的な取り組み(積極的な参加)を挙げています。外国語活動の導入によって、外国語・異文化に対する理解が向上した(約59%)、コミュニケーション能力や積極性が向上した(約53%)という回答が得られており、文部科学省が設定した目標に対し、一定の効果が得られていると考えられます。

 活動を行う環境についての問いでは、ALTの小学校訪問頻度や使用する教材について、整っているという回答が多く得られています。反対に、研修会・勉強会参加の仕組やサポート、校内研修を企画・運営できる教員、英語の内容について相談できる人について、整っていないという回答が多く得られています。このことは、活動に必要な教材などは整備されていても、教員をサポートする体制が十分ではないことを示しています。大多数の先生が研修会に参加しているという結果が得られており、研修の継続的な実施やサポート体制の充実が必要だといえます。

韓国の英語教育

 それでは、すでに、小学校で英語を教科として教えている国の現状はどうでしょうか。韓国の英語教育は、成功事例の1つとして挙げられています。韓国では、1997年に小学校3年生からの英語が必修化され、3、4年生に週2回、5、6年生に週3回の授業が行われています。導入に伴い、英語教育に必要な教師を対象に120時間の研修を行ったものの、指導するのに必要なスキルを身につけるには不十分で、教師は大混乱したようです。

 それから状況は変わり、現在では英語教育が定着しています。定着を促した1つは、マルチメディアの普及です。各学校にネイティブ教師を配置していますが、英語に触れる機会を増やすため、マルチメディアによるネイティブ英語教材を活用しています。

 そして、教師の体制です。英語の授業は英語専門の先生とネイティブスピーカーの先生によって行われます。韓国語が使用される場面は授業の導入時と理解できない児童をフォローするときで、その他は英語で行われ、2人の先生の連携がとれているようです。

外国語活動のための、環境整備

 韓国の事例は、日本の英語授業化において学ぶことが多いように思います。日本では、半数近くの学校でオリジナルの教材を作成、使用しています。このことは、文部科学省の教材では不足があり、学校や教師が補う必要があることを示しています。また、学校による児童の達成度合いの差にも繋がるでしょう。ALTによる授業も行われていますが、教師とALT・日本人講師などとの連携がうまくいっていないと感じている先生も多いようです。

 今後の教科化にあたっては、誰がどのように英語を教えるのか、どのような教材を使うのか、教師にはどのような研修を行うのかということを考え、教師に過度な負担がかからないよう、政府主導となって環境を整備していくことが必要なのではないでしょうか。

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