教師なら必ずマスターしたい《指導技術集》
「指導技術」を意識するかしないかで、ここまで変わる!教師なら絶対に身につけておきたい知識や技能を、具体的なエピソードをまじえて紹介。
マスターしたい指導技術集(17)
「西洋医学」と「東洋医学」
京都文教大学准教授大前 暁政
2014/8/15 掲載
  • マスターしたい指導技術集
  • 教師力・仕事術

 学級で、何らかの問題行動があったとします。
 例えば、友達の失敗を馬鹿にしたり、真面目にやっている友達をからかったりするような言動が見られるとしましょう。
 このようなとき、二つの方向で指導するのが「定石」です。

一つは、何らかの問題に対し「対処療法的に手立てを打つ」ことです。

 真面目にやっている子を馬鹿にする雰囲気は、早急になくさなくてはなりません。そんな状態が続くと、真面目に取り組む子がいなくなってしまうからです。
 もし、教師が見ている中でも、真面目な子を馬鹿にする言動があれば、赤信号です。直ちに指導に移らなければなりません。
 そこで例えば、次のように言います。

「失敗は誰だってあります。失敗を笑ってはいけません。」
「◯◯君、まさか、頑張っている人を笑ったわけではありませんよね。それは頑張っている人に失礼ですよ。」

 このように、直接、注意することで、「からかい」を止めさせるのです。注意をすれば、一時的に「からかい」は、なくなることでしょう。
 言ってみればこれは、西洋医学的な手法です。すぐに効く特効薬のようなものです。とりあえず「からかい」をなくす必要があるのですから、直接、問題行動に対して、対処をしていくわけです。

ただ、対処療法的指導で終わっていてはいけません。

 もう一つの指導が必要になります。それが、東洋医学的手法です。
 つまり、「からかい」があるならば、その「からかい」を子ども本人が「しないようにしよう」と自然に思うようにしていくのです。
 例えば、次のように言葉かけをしていきます。

「一生懸命努力している人とね、そうではない人とね、一年後には実力が段違いになります。一番危ないのが、努力している友達を笑っている人です。この人の力は伸びないことがよくあります。」

 他にも、学級活動や道徳の時間に、「努力を続けて夢をかなえた人物」を紹介してもよいでしょう。また、授業の中で、「努力して、逆上がりや二重跳びができた」といった事実をつくり、紹介してもよいでしょう。「からかい」をしている本人に、何らかの目標に挑戦させ、本気で頑張る気持ちよさを体験させるのも効果的です。 
 このように、子どもの心に、自然と「頑張っている人をからかうのは止めよう」と思えるように導いていくのです。
 この指導は、即効性はないかもしれません。しかし、やがて、子どもは自分から「からかい」を止めるようになります。
 これは、子どもの内から根本的に考え方が変わったからです。言ってみれば、病気の治療をする際に、体の調子を整えるとか、食生活を改善するなどの根本的治療を行う「東洋医学的手法」に似ています。本人自身の姿勢を変えて、そもそも問題行動が起きないようにしていくのです。
 このように、教育には、二つの方向性の指導を取り入れていかなくてはならないのです。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。岡山県の公立小学校教諭を経て、京都文教大学の准教授(理科教育)として赴任。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド』『プロ教師の「折れない心」の秘密〜悩める教師への50のアドバイス〜』『プロ教師直伝! 授業成功のゴールデンルール』『プロ教師の「子どもを伸ばす」極意―学級&授業づくりマスターBOOK―』『スペシャリスト直伝!板書づくり成功の極意』『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』(以上、明治図書)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。
著者HP:『大前暁政の教育』

(構成:及川)

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