著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
英語テストが変われば、授業は変わる!
立命館小学校教諭正頭 英和
2017/3/24 掲載

正頭 英和しょうとう ひでかず

立命館小学校教諭。1983年、大阪府生まれ。関西外国語大学外国語学部卒業。関西大学大学院修了(外国語教育学修士)。京都市公立中学校、立命館中学校高等学校を経て現職。教師歴11年目を迎える。小学校から高校までのすべての校種で授業と担任の経験をもち、その経験を活かした学級づくりや授業方法のワークショップなども行っている。主な著作に、『中学校英語サポートBOOKS 5つの分類×8の原則で英語力がぐーんと伸びる! 音読指導アイデアBOOK』(明治図書)、『英語授業の心・技・愛〜小・中・高・大で変わらないこと〜』(研究社)、『言語活動が充実する おもしろ授業デザイン集』(学事出版)。

―前著『中学校英語サポートBOOKS 5つの分類×8の原則で英語力がぐーんと伸びる! 音読指導アイデアBOOK』は大変多くの先生にお読みいただきましたね! 第2弾として、テストをテーマにされたのはなぜですか?

テストは、その社会的影響力が非常に大きいものです。そのテストを、世界で一番つくる職業は、「教師」です。しかし、私たち教師は「テストの専門家」と胸を張って言い切れるでしょうか。テストの知識をしっかりと学んでから現場に立っている教師など、ほとんど皆無です。教職課程で学ぶこともほとんどないかもしれません。つまり、シロウトなのです。
 テストの専門書はいくつかあります。しかし、どれも難解です。そこで、

「見やすい・簡単・使える」

をコンセプトに、現場教員が使えると思うテストを紹介しようと思いました。テストの専門知識をできるだけ簡潔に書き記し、その具体的テスト問題と授業での活動とセットでご紹介させていただきました。

―私、テストって大嫌いでした…。本書には“生徒をテスト好きにする”という副題がついています。本書には子どもたちをテスト好きにするための6つのアイデアが紹介されているのですね。

 「テストで学力を伸ばす!」という発想は、非常に重要です。ですが、大人も含めて、ほとんどの人はテストが嫌いです。まずはこの常識から攻略しなければいけません。

「テストを好きにする」

ということができれば、きっと新しい授業スタイルが生まれるはずです。「テストだ! がんばるぞ!」という空気が教室の中に生まれると素敵ですよね。そんな空間をつくるためのヒントを本書の中で紹介させていただきました。

アイデア1 テストという言葉を使わない

アイデア2 定期テストの比率を下げる

アイデア3 テストのバラエティ&頻度を増やす

アイデア4 一発勝負のテストをやめる

アイデア5 加点式にして可視化する

アイデア6 予想問題をつくらせる

 若い先生方には、アイデア3・4・5から取り組み始めてほしいなと思いますし、ベテランの先生方には、1・2などを参考にしていただければ嬉しいなと思っています。アイデア6の「予想問題をつくらせる」は、授業そのものを変える力のあるアイデアだと考えています。

―テストづくりの8つの原則のなかでも、「余白・イラスト・フォントなどを軽視しない」というのは、とてもユニークな視点だと思いました。実際、こうした点に配慮すると生徒の反応は違いますか?

 はっきりと違います。まず、英語嫌いの大人は、「長文を見ただけで嫌気がさした」と必ず言います。中学や高校のときに長文問題をたくさんやらされて、トラウマになっているのでしょう。しかし、英語教師としてはやはり一定量の長文は読めるようになってほしいものです。この2つの矛盾を克服するのが「余白・イラスト・フォントなどを軽視しない」ということです。特に中学校1年生では、「フォント」に気を付ける必要があります。「何でもいいや…」と適当なフォントを使ってしまうと、それだけで英語嫌いになってしまいます。なぜか? その理由は本書でご確認ください。「おすすめのフォント」も紹介しています。

―スキル別にテスト問題づくりと指導のワザとアイデアをご紹介いただいていますが、なかでも一番生徒が夢中になるテストを教えてください!

 うーん、これは難しい質問ですね…。「私の場合は」という注釈付になりますが、「チャレンジ型のテスト」 と「間違い探し」 ですね。
 「チャレンジ型のテスト」とはどういうものなのか、その詳細は本書をお読みいただくとして、子どもから「え!? もう授業終わり!?」という言葉が当たり前のように聞こえるぐらい、授業に集中します。例えば、スピーキングの活動は、チャレンジ型にすると生徒が受け身になりにくいです。主体的に活動を続けていれば、生徒は時間の流れを忘れてしまい、50分があっという間に終わってしまうように感じるのです。
 また「間違い探し」は大人気のテストです。テストといっても必ずしも評価に入れる必要はなく、ただの「活動」という位置づけで行うこともできます。間違い探しを授業で行うと、

「個人」→「ペアで確認」→「班で確認」→「全体で共有」→「テスト」→「ペアで採点」

という流れをつくりやすいです。このローテーションの中では、「全体で共有」の部分以外は、教師の出番はほぼありません。まさに「主体的に学ぶ」ということになります。次の時間の冒頭に同じような間違い探しのテストを位置づけておけば、復習にも力が入ることでしょう。
 「テスト=生徒が受け身になる」という思いがどこかにあるかもしれません。しかし、それはやり方次第です。生徒が主体的に動くテスト、というものはあり得ます。アクティブ・ラーニングという言葉をよく聞きますが、テストが変わらなければ、本質的な授業改善にはならない、と私は考えています。つまり、

「テストが変われば、授業は変わる」

と考えているということです。

―新年度、本書を使って1年間の英語テストの設計図を描いていただきたいですね! 読者の先生に向けてメッセージをお願いいたします。

 授業は1年間で完結します。たった1回の授業を変えるアイデアも重要ですが、年間を通じてみると「例年と変わらない授業だったな…」という思いを持っている方も多いのではないでしょうか。授業を根本からよくしようと思えば、テストを変えることが一番簡単です。
 テストが変われば、授業は変わります。しかし、テストに関しての研究やいろんなアイデアなどは、あまり多くありません。本書はそんな思いから生まれました。身近なところから取り組めるアイデアBOOKです。ぜひお読みいただき、ご活用いただければ幸いです。

(構成:林)

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