著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
英語の授業でコミュニケーション能力を高めよう!
岡山県倉敷市立連島南小学校教諭江尻 寛正
2017/3/23 掲載
今回は江尻寛正先生に、新刊『はじめての小学校英語 授業がグッとアクティブになる!活動アイデア』について伺いました。

江尻 寛正えじり ひろまさ

岡山県倉敷市立連島南小学校教諭。
1977年大阪生まれ。
小5から中学は奈良で過ごし、高校は大阪、大学は京都の学校に進む。
大学卒業後はインストラクターとしてスポーツクラブで勤務。その後、教師を志し、京都・東京・サンパウロ・岡山で教鞭をとる。
「We can’t do everything for everyone everywhere, but we can do something for someone somewhere.」(Richard L. Evans)が座右の銘。
様々な地域・国・職種を経験したからこそのグローバルな視点で日常の授業・業務を俯瞰し、毎日を充実させるために”思考”と”試行”を繰り返している。

―次期学習指導要領では小学校3・4年から外国語活動、5・6年で英語が導入されるようです。そんな中、本書に込められた思いをどうぞ教えてください。

 「何から始めたらいいの?」という現場から聞こえる不安の声に対して「何か自分にできることをしたい」と思って書きました。
 また、「教科になったから」ということで、安易に単純なドリル学習や文字練習が行われることを私は危惧しています。「英語を定着させなければならない」と考えすぎて、「コミュニケーション能力を養う」という目標を指導者自身が見失ってしまうのではないかということです。
 そうならないように、「小学校英語でコミュニケーション能力を高める活動例を紹介したい」という強い思いを込めています。
 

―本書では10分でできる「コミュニケーション」「ゲーム」「文字」の学習活動を紹介くださっていますが、どれか1つおススメのものがありましたらご紹介いただけないでしょうか。

 「”You can” Time」をモジュールや帯活動で継続的に取り組んでほしいと思っています。
 この活動は、友達のできることを話し合い、その子の良さを共有し、それを英語で本人に伝えるというものです。
 お遊びの英語ではないし、英語をただ覚えるだけでもありません。
 「人とつながるために英語を使う」活動です。そして、言われた当人は自尊心も高まります。
 私が実践してきた活動の中でも、特に対話的で深い学びだと思います。ぜひ取り組んでもらいたいと思っています!

 

―本書では学習活動を組み合わせてどう授業をつくっていくとよいか、授業の実践モデルも書かれていますが、具体的にどんな授業を紹介くださっているのでしょうか?

 紹介している授業は全て、 “短時間の価値ある活動”を組み合わせた授業です。これは、様々な課題を抱えた子どもたちでも集中できるユニバーサルデザインの授業とも言えると思います。
 また、文部科学省が公表した移行期間中の素案にも対応させています。
  その中でおススメは、「How much?」の授業ですね。文部科学省の素案で新しく取り上げられた表現です。これに国際理解の視点を入れることで、英語を使う必然性が生まれ、意欲も高まります。“すべらない授業”の1つです!

 

―先生は、大阪生まれながら、京都・東京・サンパウロ・岡山で教鞭とられるなどとてもユニークなご経歴をおもちですね!なぜまたそのようなご経歴に?

 わはははは。おもしろい質問ですね。なぜこんな経歴になったのでしょう。私も分かりません…。ただ、そろそろ「教員採用試験の受かり方」という本を出せるんじゃないかとは思っています…。
 ふりかえって思うのは全てに必然性があるということです。東京に行ったおかげで“小学校英語”と出会い、サンパウロに派遣されたおかげで“コミュニケーションの道具としての外国語”に出会いました。だからこそ、こうして今、“英語の授業でコミュニケーション能力を高める”という本を執筆することができました。
 私自身、チャレンジしてみる中で自分の可能性を広げることができました。小学校英語が始まる今、思い切って授業をやってみる中で、教師としての力量や経験が大きくアップしていくのではないでしょうか。

―ありがとうございました。最後に、来年度から英語の授業を頑張ってみようかな、と考えておられる先生にメッセージをお願いいたします。

 「コミュニケーション能力を養う」という目標を見失わずにいてほしいと思います。
 授業の中で、リピートを何度もさせることもあるでしょう。文字の練習を繰り返しさせることもあるでしょう。でもそれで終わらず、3分でもいいのでコミュニケーション活動を入れてあげてほしいと思います。たった3分でも継続すれば大きなものになります。時間的なことだけではなく、“言葉で人とつながるおもしろさ”が大きくなれば、“人とすすんでかかわろうとするようになる”でしょう。
 「コミュニケーション能力の素地や基礎を養う」という目標に向かって、大きな改革の波を進んでいけたらと思います。本書がその波を乗り越えるヒントになれば、何よりうれしく思います。

(構成:佐藤)
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