著者インタビュー
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学習指導要領改訂、最重要ポイントは何か
文部科学省中央教育審議会委員・教育課程部会長無藤 隆
2017/1/23 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程
 今回は、文部科学省中央教育審議会委員・教育課程部会長の無藤 隆先生に、新刊『無藤 隆が徹底解説 学習指導要領改訂のキーワード』について伺いました。

無藤 隆むとう たかし

文部科学省中央教育審議会委員・教育課程部会長。白梅学園大学教授兼子ども学研究科長。

―本書は、学習指導要領改訂のキーワードについて、馬居政幸先生の問いに答える対話形式で、わかりやすく解説いただいた書籍となっています。まず、本書のねらいについて教えて下さい。

 学習指導要領の改訂の元は中央教育審議会答申(2016年12月)ですが、それはかなり長いものです。丁寧に説明しようとすると、どうしても始めから終わりまで書くことになり、でも、それだとかえって要点がつかみにくい。そこで思い切って、手っ取り早く言えば、と私なりの言い方に直して、解説しました。

―今回の改訂のキーワードの一つとして、「社会に開かれた教育課程」があります。先生は本書の中でその主体は学校であると述べられていますが、この点について教えて下さい。

 文部科学省も教育委員会も、学校で子どもたちを指導する営みを支える行政の働きを受け持ちます。上が指示をして、下が従うというものではないのです。確かに学習指導要領などに遵守義務がありますが、それは最低基準ですし、細部までに立ち入らないようにしています。学校そして教師自身が学校での教科等の授業をどう進めればよいかの概略を示すのが指導要領です。それを学びの地図と呼びます。授業やカリキュラムにあり方に創造的に活かすための仕組みなのです。

―今回の改訂でもっとも注目されたキーワードの一つに「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点)」があります。このねらいについて教えて下さい。

 アクティブに学ぶというのは、本来的に子どもが学んでいくあり方です。子どもは学ぶ主体として、様々な情報を取り入れ、それを自分の考えを通して消化し、自分の身に付けていくからです。学習主体として学びの見通しを立て、教材や他の人と対話を重ね、それを通して、教科の中核をなす学びを可能にしていくのが主体的・対話的で深い学びという授業改善の視点なのです。

―今回の改訂では、教科における「見方・考え方」についても、重要なキーとなっていますが、これからどのように取り組むべきか、アドバイスをお願い致します。

 教科等におけるその教科ならではのものの見方やとらえ方があります。算数・数学であれば、その本質は数理的思考にあります。それは数学的概念の構造により支えられ、課題解決においてその思考の仕方を使ってみることで身に付きます。教科の中心概念を指導に当たって意識し、それを巡って、他の概念を組織できるようにしていき、その教科に固有の問題解決を進めます。

―本書では、「カリキュラム・マネジメント」を、先の三種のキーワードを関係づけるキーワードとして位置付けていますが、その理由について教えてください。

 学校はカリキュラムの下で授業の指導を行う場です。各々の授業そして単元において、そういったカリキュラムを通して、短期あるいは長期の、また教科内のさらに教科を越えていく目標へと指導を進めるのです。そのため、学校は授業の工夫をするために、時間や道具や人員の重点的配置を行い、メリハリを付けつつ、指導要領の目標と学校の目標を重ねていくわけです。その工夫がカリキュラム・マネジメントです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 自分が担当する教科やそこで特に工夫を図りたい単元があると思います。そこでどうすれば少しでもアクティブな学びへと進んでいけるかをまず試してみましょう。10時間の単元だとすれば、その内の1時間・2時間を工夫することから始めます。それを実際の授業を通して発展させていくことで、指導要領の改訂で目指そうとしていることが腑に落ちていくと思います。

(構成:及川)

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