- はじめに
- 第1章 わらべうたと共に歩もう
- 日本の音楽,どこへ行く?
- 子どもの声を知ろう
- わらべうたで音楽の第一歩
- 歌うの大好き! わらべうた
- 第2章 わらべうたを取り入れよう
- 耳を澄ませて
- 言葉とわらべうた
- わらべうたで音楽遊び
- 遊びのすすめ
- 第3章 わらべうたで遊ぼう
- じゃんけん
- 1 かぼちゃがら(秋田県)
- 2 やなぎのしたには(栃木県)
- 3 おてらのおしょうさんが(広島県)
- 4 にぎりぱちり(鹿児島県)
- 鬼遊び
- 5 かぐれかご(青森県・鬼決め)
- 6 へらへらのかみさま(愛知県・鬼決め)
- 7 だいこんかぶらの(香川県・鬼決め)
- 8 じょうりぎ(青森県・鬼決め)
- 9 あめかあられか(長野県・つかまえ鬼)
- 10 おおまたこまたか(東京都・つかまえ鬼)
- 11 やまとのやまとの(大阪府・つかまえ鬼)
- 12 ここはおおみの(山口県・つかまえ鬼)
- 13 おやとろことろ(福岡県・子取り鬼)
- 14 ずるまさる(沖縄県・子取り鬼)
- 15 ねこがごふくやに(鳥取県・色鬼)
- 16 たなばたさん(栃木県・てぬぐい落とし)
- 縄跳び
- 17 やまでらの(秋田県)
- 18 いちわのからすが(宮城県)
- 19 おちゃをのみに(宮城県)
- 20 いちはっさん(愛知県)
- まりつき
- 21 どんぐりころちゃん(徳島県)
- 22 加藤清正(鹿児島県)
- 23 てぃーたーみゆ(沖縄県)
- 手遊び指遊び
- 24 にいがたせんべ(新潟県・手遊び)
- 25 こどもとこどもと(東京都・指遊び)
- 26 いちにさん(広島県・指遊び)
- 27 ちゃつぼ(広島県・指遊び)
- 28 おもやのもちつき(京都府・手合わせ)
- 29 おしょうさんのおもちつき(静岡県・手合わせ)
- 30 さんといちに(鳥取県・手合わせ)
- 輪遊び
- 31 なみなみわんわちゃくり(沖縄県)
- 32 おおなみこなみで(東京都)
- 33 ゆすらんかすらん(広島県)
- 34 人工衛星(東京都)
- その他の遊び
- 35 かごかごじゅうろくもん(京都府・ゆすり遊び)
- 36 じごくごくらく(広島県・ゆすり遊び)
- 37 らかんさん(静岡県・物まね遊び)
- 38 あずきしょ(宮城県・背負い遊び)
- 39 こめやさん(東京都・背負い遊び)
- 40 こいのたきのぼり(山口県・胴送り)
- 41 ほうしほうし(岡山県・数遊び)
- 42 いっぴきちゅー(長野県・数遊び)
- 43 ふねだふねだ(愛知県・身振り遊び)
- 44 とおれとおれ(大阪府・くぐり遊び)
- 45 うぐいすのたにわたり(香川県・くぐり遊び)
- 46 せっくんぼ(鹿児島県・押し合い遊び)
- 47 ひとりでさびし(宮城県・お手玉)
- 48 じゅうごやんおつきさん(宮崎県・綱引き)
- 49 いろはにこんぺいと(愛知県・ゴム跳び)
- 50 のりこんで(山口県・絵描き)
- おわりに
はじめに
幼少よりピアノやヴァイオリンを学び,西洋音楽の道を歩んできた私ですが,実はつい最近まで“音楽”を心の底から楽しいと感じたことがありませんでした。私にとって“音楽”は訓練であり,孤独な戦いでした。いつも目の前にあるのは厳しい師の顔と温かみのない楽譜…。音を自分で操ることができるのは確かに嬉しいけれど,音が楽しく聞こえてこない憂鬱が何年も何年も私の心の中にたまっていたのです。しかしわらべうたに出会い,ようやく“音楽”というものがとても身近で,楽しいものだったのだと思い出すことができました。
本来であれば“音楽”は人の心を癒し,人々の生活を楽しいものにしてくれるはずのもの。しかし“音学”や“音が苦”といった言葉が聞かれるように,楽しいはずのものが苦になっている現実が日本の音楽教育にはあります。わらべうたを音楽教育として導入することには賛否両論ありますが,私はやはり“音楽”の本来の在り方を知るためにも,子どもたちにわらべうたを“音楽”として伝えていきたいと思っています。後にも詳しく記載しますが,わらべうたは子どもが作り出したものも多く,そのメロディーの音域,歌の長さ,歌詞の単純さはどれをとっても子どもに適しています。昔々の子どもたちが作詞・作曲者であるということは,現代の子どもたちにとってもわらべうたは彼らの音楽であり,文化なのです。
子どもたちへ音楽を導入するにあたっては,楽器を習うよりもまず自分の“声”という素晴らしい楽器を,自信をもって奏でる楽しさを知ってもらうことが大事だと考えます。今ではほとんど歌われなくなった民謡などの音楽も人々の生活ととても密接な関係にありました。音楽は言葉であり,言葉は文化となります。文化は民族がもつ最大の知恵…そしてそこから生まれくる芸術が音楽。このループを途絶えさせないために,もう一度日本の文化を見直し,わらべうたを“音楽”として子どもたちに与えたい。私の中で,年々そういった思いが強くなってきたのです。
前回の乳児編とは少し違い,今回の幼児編ではすべてではないにしろ,なるべくもとの遊びを忠実に行うようなかたちとなっています。それは歌の中の躍動感やリズム感などが,その遊びだからこそ生まれるものであるという理由からです。また,最近ではまりつきやお手玉,縄跳びなどが苦手な子どもや,お友達と上手に付き合うことができない子どもも増えつつあるようです。基本的な運動能力,対人関係などを自然と身に付けることができるのもわらべうたの魅力です。“音楽”と聞くと「え? 難しそう」なんて思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,上にも記したように,“遊びの中で自然に”が私のモットーとするところです。もともと生活の中にあった自然なかたちの音楽,わらべうたをこれからの子どもたちにも残していきたいですね。
/加藤 ときえ
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