- まえがき
- 第1章 単語が書ける生徒を育てる
- §1 単語スキルの効果 〜2002年2月:中学2年生〜
- §2 英単語スキルへの私の3つのこだわり
- (1) カタカナをふる
- (2) 「なぞり書き」をさせる
- (3) 単語の覚え方でカナをふろう
- §3 「単語スキル」をサークルで検討
- §4 効果のある生徒と効果のない生徒
- §5 英単語スキル 〜第1時の授業〜
- (1) 「指書き」から「なぞり書き」へ
- (2) 練習
- (3) 確認チェック
- §6 英単語5題の小テスト 〜次の時間の最初にどのくらい覚えているかの確認テスト〜
- §7 英単語スキル 〜第2時の授業〜
- (1) 空書きで3回,その後ノートに練習(約2〜3分)
- (2) ノートに書けるかどうか,チェックする(2分)
- §8 新天地での「単語スキル」試行錯誤 〜生徒の反応は上々〜
- §9 もう1つの課題 〜レッスンテスト(25題の単語テスト)の結果から〜
- §10 「指書き」をしない生徒への対応
- §11 「指書き」をどのようにさせるか 〜中学1年生での「単語スキル」〜
- §12 新・単語スキルにみる 早い子への対応 〜ワードパズルを作成〜
- §13 指書きの効用
- §14 英単語BINGOで,「書く」「聞いた単語を見つける」練習を……
- §15 BINGOゲームの効果
- §16 まとまっての単語テスト 〜25題テスト〜
- §17 25題テストのやり方 〜4回分印刷する〜
- §18 英単語100題テスト実施
- §19 夏休み明けの最初の授業は100題テストから
- §20 現在の単語指導 〜まだ,完成はしていない〜
- (1) 黒板に文字を書いていく
- (2) 全ての生徒に単語を読めるようにさせる
- (3) 単語練習をさせる
- 第2章 音読のできる生徒を育てる
- §1 なぜ生徒は読めないのか 〜生徒の読めない理由をさぐる〜
- §2 自らの音読を反省して 〜セミナーで感じた1つの出来事〜
- 第3章 英会話のできる生徒を育てる
- §1 究極の英語教師の願い 〜英会話ができる生徒〜
- §2 簡単な質問100個程度にはスラスラ答えられる 〜スラスラ英会話〜
- 第4章 日本語訳のできる生徒を育てる
- §1 訳読式授業のやり方 〜「視写」→「日本語訳」:無駄のない流れを作る〜
- §2 訳読式授業を行うようになったきっかけ 〜英語の読めない生徒を見て〜
- §3 訳読式授業から見えてきたもの 〜訳せないのは単語の意味がわからないから〜
- 第5章 文法が理解できる生徒を育てる
- §1 文法指導は,文法が理解できていればよしとする
- §2 英文法スキル
- あとがき
まえがき
誰でも単語は書けるようになる。
そう実感した半年の研究実践であった。
と同時に,
「できない」子が,できるようになる指導法
を,本格的に研究してみようと思った。
それは,TOSSに学び,TOSSの開発教材(向山実践)である「赤ネコ漢字スキル」や「向山型算数」「向山型国語」という先行実践があったからである。
それを,中学の英語授業に生かしていこうと思ったのである。
今まで私は,どちらかというと英語授業はコミュニケーション活動中心に授業を行ってきた。
それはそれで,私自身には大変勉強になり,自分の授業に自信をもたらせた分野でもあったが,コミュニケーション活動の対極にある,「基礎基本」活動は,生徒個人にまかせ,家庭学習や,中には塾でそれらの力を補っているのが現実であった。
それを今,取り戻そうと考えている。
例えば,単語指導。
今まで私は,生徒の個々の力にまかせ,授業中には単語は導入するものの,単語を「書く」という練習時間をあまり設けなかった。
そもそも授業中に単語を練習させないで,できない生徒ができるようになるはずはないのである。
そんな当然のことを,私は宿題にし,次の時間小テストを実施するという方法で,単語学習は生徒に任せてきた。
それでも,時には,発音練習した後に,何回かノートに書く指導をしたことがあるが,今にして思えば,お遊び程度でしかなかった。
もともと,「できない」生徒の多くは,家庭で勉強しない。
勉強しないから,勉強するという習慣すら身につけられず,学校に来ても主体的な学習ができない。
それを,「家でやってきなさい」と言ってもやってくるはずはない。
だから,「できない」生徒は,いつまでたってもできないままなのである。
そこで,私は「私家版:赤ネコ単語スキル」を開発し,単語を書く練習を授業内に設けることにした。
ただ,「何回も書きなさい……」では,「ただ書いているだけ……」という状態となり,覚えるとこまでいかない。
その結果,
「俺は練習しても結局だめなんだ」
「勉強しても無駄だよ」
と,勉強に対する意欲も激減していく。
しかし,逆に,単語を授業中に書いて,練習して,覚えられるようになると,勉強に対しての意欲も生まれてくることがわかった。
学力が,「学欲」(学習意欲)につながったのである。
自信を持つのである。
やはり,「わかったり」,「できたり」といった成功体験が,生徒の意欲を生むのだと,私ははじめて理解した。
決してそれは,単語が書けるようになるという次元だけの問題ではなく,
「単語が俺にも書けるようになるんだ……」
という自信が,英語授業の他の場面でも意欲を表し,効果を発揮するのだということも,ここ半年の研究でわかったことである。
その重要キーワードは,
授業中
ということである。
今さらながらであるが,「授業で勝負」という言葉通りである。
授業中に単語練習をさせる……ということである。
さて,単語を書けるようにするためには,ステップを踏めばよい。
そのステップを踏めば,単語は書けるようになる。
どの子も単語は書けるようになる。
しかし,生徒は次の日まで,一度覚えた単語を覚えていられるかどうかは,保証できない。
つまり,「単語が書けるようになる」ということと,「単語を覚えていられる」というのは,別の話であり,また別の技能になるのである。
だから,全ての生徒に単語を書けるようにさせても,次の時には,忘れていることもある。
しかし,それでもいったんは,生徒は書けるようになるのである。
再度言うが,単語を書けるようにすることは,難しいことではないのである。
ただ難しいのは,覚えた単語を覚え続けさせることなのである。
記憶させ続けることなのである。
そして,せっかく覚えた単語も次の時間には,忘れている生徒が50点以下の生徒には多い。
しかし,大事なことは,そんな「できない」生徒が,できないながらも「かすかな」成長を大きく喜ぶことである。
これは,決して誇張して言っているわけではない。
世の中には,生徒の成長を踏みにじるようなことを平気で言う先生や保護者がいる。
「できない」生徒が,ほんの少しでもできるようになるために,どれだけ努力をしているか……。
励まし続けるのである。
どんな進歩も,ほめ続けるのである。
子どもたちは,例えば,2点から,5点になっただけでも,大きな努力を払っている場合がある。
合格点が8点であっても,
「よくがんばったね」
と声をかけたい。
音読できなかった生徒が,カタカナをふってまで読めるようにしようとしている姿を見たら,「おっ! がんばっているね」と声をかけたい。
できない生徒にとっては,必死なのである。
さて,本書は,私たちトークライン中学秩父「JEサークル」の機関誌から誕生した。
私たちJEサークルでは,TOSSでの学習をもとに,
(1) 教科の最先端の実践研究
(2) 時代が要請している課題の追求
(3) 「できない」生徒ができるようになる指導法
の3つを研究テーマにあげて,学習している。
その(3)が,本書になったのである。
まだまだ完成された形はない。
しかし,本書から,多くの実践ヒントを得られることと思う。
どうぞ,最後までお読みいただき,ご意見,ご感想,ご批判を遠慮なく,いただけたら,幸いである。
平成15年10月8日(水)
トークライン中学秩父「JEサークル」代表 /瀧沢 広人
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