- はじめに
- T 特別活動の改訂のねらいと基本方針
- 1 改訂の経緯(特別活動に望まれたこと)
- (1) 「理念は変わりません」
- (2) 「生きる力の共有」とは
- 2 改善の基本方針
- (1) 特別活動の課題
- (2) 特別活動の改善の基本方針
- 3 改善の要点
- (1) 目標の改善
- (2) 各活動・学校行事の内容の改善
- (3) 指導計画の作成と内容の取扱いの改善
- U 特別活動改訂のコンセプトと具体的な実践例
- U−1 なぜ目標が改善されたのか
- 1 目標の改善の基本方針
- 2 よりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てる
- 3 自己の生き方についての考えを深め,自己を生かす能力を養う
- U−2 学級活動に新たに規定された目標や内容が低・中・高ごとに示された意味は何か
- 1 新たに規定された学級活動の目標
- 2 低・中・高学年ごとの内容
- (実践例) 低・中・高に示された「生活づくり」の例
- 低学年 「仲良く助け合い,楽しい学級生活づくりを!」
- 中学年 「協力し合って楽しい学級生活づくりを!」
- 高学年 「信頼し助け合って,楽しく豊かな学級・学校生活づくりを!」
- (実践例) 低・中・高に示された「人間関係の形成」の例
- 低学年 「みんなが仲良くなる誕生会を考えよう」
- 中学年 「よりよい学級にするための係を考えよう」
- 高学年 「小学校最後が最高となる終わり方を考えよう」
- U−3 学級活動の〔共通事項〕に新たに加えられた内容の意図は何か
- 1 新学習指導要領との関連
- 2 学級活動の共通事項に新たに加えられた内容
- (実践例) 清掃などの当番活動等の役割と働くことの意義の理解/段階的な指導例
- 低学年 「めざせ そうじマスター!」(1年生)
- 中学年 「そうじの時間割を作ろう」(4年生)
- 高学年 「そうじパワーアップ大作戦」(6年生)
- U−4 児童会活動に新たに規定された目標や三つの内容とは何か
- 1 目標のポイント
- 2 三つの内容のポイント
- (実践例) 異年齢交流を図る児童会活
- 「縦割り班」を生かした活動
- 「兄弟学級(学年)を編成した活動
- 「異年齢集団活動」につなぐ「学年児童集会」
- U−5 クラブ活動に新たに規定された目標と三つの内容とは何か
- 1 クラブ活動の目標
- 2 クラブ活動の特質
- 3 クラブ活動の内容
- 4 クラブ活動の時数
- (実践例) 異年齢の人間関係を意識した例
- 「望ましい人間関係の形成」を目指すクラブ活動の計画(手話クラブ)
- U−6 学校行事に新たに規定された目標と五つの内容とは何か
- 1 学校行事が求める「人間関係」とは何か
- 2 学校行事が育む「連帯感」とは何か
- 3 学校行事で養う「公共の精神」とは何か
- 4 学校行事で「学校生活をつくる」
- 5 学校行事の五つの内容
- (実践例) 集団宿泊の例
- 「5泊6日自然学校」(5年生)
- V 期待される新たな特別活動と具体的な実践例
- V−1 全体計画をもとに「使いやすい年間指導計画」を作成する
- 1 新学習指導要領との関連
- 2 特別活動の全体計画
- 3 各活動・学校行事の年間指導計画
- 4 全体計画や年間指導計画以外に留意しておきたいこと
- (実践例) 「使いやすい年間指導計画」例
- 学級活動の年間指導計画例
- 児童会活動,クラブ活動,学校行事の年間指導計画例
- V−2 道徳的実践の指導の充実を図る
- 1 道徳的実践の指導の機会と場としての特別活動を意識する
- 2 道徳的実践の指導の充実を図るために
- (実践例) 集団の一員としての役割や責任を体得する例
- 低学年 「“4年生 ありがとうパーティ”を成功させよう」(2年生)
- 高学年 「最上級生として取り組む“朝の活動”を充実した時間にしよう」(6年生)
- 児童会活動「みんなの心を一つにして学校行事を成功させよう」
- V−3 発達段階に即した集会活動
- 1 みんなで活動する楽しさからみんなのために活動する楽しさへ
- 2 よりよい生活をつくる集会活動の展開
- 3 人間関係を深めていく集会活動の在り方
- (実践例) 低・中・高学年の集会活動/段階的な指導例
- 低学年 「なかよし運動会を成功させよう!」(1年生)
- 中学年 「ふれあい集会パートUをしよう!」(3年生)
- 高学年 「1年生となかよくなれる集会をしよう!」(6年生)
- V−4 総合的な学習との有機的な関連を図る
- 1 改訂の趣旨・キーワード
- 2 代替
- (実践例) 修学旅行の例
- 「探求的な学習を取り入れた修学旅行」(6年生)
- V−5 学級経営との関連を図る
- 1 新学習指導要領との関連
- 2 学級経営を充実するため中核となる学級活動
- 3 学校生活における集団活動の発達的な特質を理解しての計画づくり
- 4 「学級集団の育生上の課題」を踏まえて重点化を図る指導と評価
- (実践例) 学級集団育成と学級活動の関連的な指導例
- 低学年 「学級の係をつくってみよう!」(2年生)
- 中学年 「学級のシンボルマークを作ろう!」(4年生)
- 高学年 「ボランティア活動で学級をステップアップ」(6年生)
- V−6 生徒指導やキャリア教育との関連を図る
- 1 生徒指導との関連を図る
- 2 キャリア教育との関連を図る
- (実践例) キャリア教育からの係活動や児童会活動の例
- 低学年 「係をつくろう」
- 中学年 「係活動をパワーアップしよう」
- 高学年 「6年生を送る会をしよう」(代表委員会)
- V−7 法教育との関連を図る
- 1 法教育の目的―自由で公正な社会の構築
- 2 特別活動での活用が重要
- 3 クラスの係決め
- 4 多数決で決めることの意味
- 5 子どもたちの意見の尊重
- (実践例) 話合い活動
- 低学年 「休み時間にみんなで何をして遊ぶかを決めよう」(1年生)
- 高学年 「学級ボールの使い方を見直そう」(5年生)
- V−8 健康や安全指導の充実との関連を図る
- 1 新学習指導要領との関連
- 2 健康(保健)に関する指導
- 3 安全に関する指導の充実
- 4 学級活動や学校行事の特質を踏まえた指導を行う
- (実践例) 健康や安全指導の充実との関連での実践
- 低学年 「こまったときは,子どもかけこみ110番!」
- 中学年 「けがのてあて」(血ってふしぎだな)
- 高学年 「メディアとのつきあい方」(テレビの見方を考えよう)
- V−9 命の教育との関連を図る
- 1 学校の動物飼育体験活用の意義とあり方
- (実践例) 動物飼育体験の活用
- 学級活動での実践例(クラスの動物を飼育する)
- 飼育舎での飼育例
- V−10 食育との関連を図る
- 1 新学習指導要領との関連から
- 2 学校給食の時間を積極的に活用する
- 3 「食育との関連を図った」学級活動の授業で大切にしたいこと
- (実践例) 学級活動(2)の特性を生かした食育の実践例
- 低学年 「カルちゃんをたくさんとろう」(2年生)
- 中学年 「野菜をもりもり食べよう〜野菜のパワー発見〜」(3年生)
- 高学年 「マイ弁当プロジェクト」(6年生)
- V−11 教育心理の側面からの指導方法を活用する
- 1 活用できる教育的心理的手法とは
- 2 学級活動での配慮点
- (実践例) 社会的スキルを生かした展開事例
- 低学年 「友だち増やそう大作戦〜一緒に遊ぼう〜」(1年生)
- 高学年 「自分も相手も大切にする意見の言い方を考えよう」(5年生)
- V−12 教材や資料を工夫して,効果的な実践をする
- 1 学級活動における教材や資料の作成と活用
- 2 児童会活動,クラブ活動,学校行事における教材や資料の作成と活用
- 3 教材や資料の保存や活用の工夫
- (実践例) 教材や資料を工夫した効果的な実践例
- 低学年 「わくわくパーティーでやるゲームを決めよう」
- 中学年 「笑顔いっぱいの3年○組」
- 高学年 「○○小学校の自慢ついて確認し,一緒に考えよう」
- 付録 小学校学習指導要領「特別活動」
はじめに
「ゼロからの出発」。これが,小学校・特別活動の学習指導要領の改善に課せられた使命であり,改善にかける思いではなかったかと思われます。今回の改訂は,教育のあるべき姿とは何か,それに対して特別活動ができることは何か,もう一度原点に戻って,再検討する作業であったと言えます。
たしかに,今回の改訂は全教育課程を通して,これまでのような派手さは見られません。生活科の導入(平成元年)や総合的な学習の時間の新設(平成10年)のような,改訂の目玉というものが特段にないからです。しかし,それはある意味,世界的にその「優秀性」が標榜されている日本の教師に問いかける内容の改訂であったのではないか,と考えられます。小学校・特別活動の改訂は,特にそうであったと,まとめることができます。
特別活動は,「生きる力」に直結する内容を持つだけに,その実践がしっかりなされていなければ日本教育の根幹が揺らいでしまうのではないか。「ゼロからの出発」の背景には,文部科学省・杉田洋教科調査官を始めとして,この危機感があったのです。
「今,なぜ特別活動なのか」。「ゼロからの出発」は,ここから出発しなければなりません。まずは,「子どもから(出発する)」の観点からです。
教育の真髄が,「個と集」との関係性にあると言う時,実際には「個が孤に,集が衆に」なっている状況が,子どもの世界に生まれています。その背景として,「個性」のとらえ方の取り違えもありました。我が国では今なお,個性を主体性としてではなく,多様性(他との違い)と捉えているからです。
「個性重視(尊重)」の教育も,「連帯の中で輝く,自らのよさに向かって一生懸命がんばる」という,本来の「個性」の概念と離れたことも否めません。個性化における個別化・多様化の側面が強調される余り,反面,人間関係づくりが疎かにされました。「個性重視」の教育とは,主体性としての個性の発揮の結果としての多様性を認め,保障しようとする教育なのです。
今回の改訂では,「人間関係」づくりが要請されるようになりました。だが,それは,特別活動が成立時から特質とされる本来的機能です。それを改めて確認しなければならないほど,社会に影を落とす深刻な問題になっていたのです。また,人間関係構築や社会参画への実践的態度の育成は,さらに「自己の生き方についての考え方を深め」させることにも機能しなければなりません。「心の教育」(道徳)に終わるのではなく,「心に響く教育」へとさらに深化・発展させるためにも,特別活動に期待されるところは大きいのです。
「ゼロからの出発」に基づく小学校・特別活動の改善作業は,いかにして「生きる力」の理念を,子どもや学校現場の実態,すなわち身の丈(寸法)に合ったものにするかという作業であったとも言えるでしょう。言い換えれば,今回の改訂においては,特別活動の機能の一層の「一般化・定着化」を目指していると言えます。そこで,各学校の実践に少しでも役立てていただけるよう,本書は,以下のことを重視して構成されています。
◆「改訂」をさらに理解しやすくする,具体的かつ平易な記述。
◆「改訂」のさらなる発展的な理解につながるように,その改善の趣旨がより読み取れるような,「解説」を超えたきめ細かな記述。
◆「改訂」のポイントが,この一冊で把握できるように要点化した内容。
◆「改訂」を実践するとは,どういうことか。実践化へのポイントと実践の具体策にスペースを大きく割いた構成。
なお,本書の刊行に当たり大変お世話になりました明治図書出版株式会社の安藤征宏氏に対し,心から感謝申し上げます。また,私達を温かく指導してくださり,本書の刊行を鶴首されている初等中等教育局教育課程課教科調査官の杉田洋先生に対し,この場を借りて心よりお礼申し上げます。
平成20年10月 編著者 /新富 康央
-
- 明治図書