- はじめに
- T 理科の改訂のねらいと基本方針
- §1 「生きる力」と理科教育
- 1 改正教育基本法等を踏まえた理科の改訂
- 2 「生きる力」という理念の共有
- 3 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- 4 思考力・判断力・表現力等の育成
- 5 学習意欲の向上や学習習慣の確立
- §2 理科の改善の具体的事項
- U 理科の改訂のポイント
- §1 理科改訂の特色
- 1 自然とのかかわり
- 2 科学的なかかわり
- 3 生活とのかかわり
- §2 理科6つの新内容
- 1 第3学年A(1) 「物と重さ」
- 2 第3学年A(2) 「風やゴムの働き」
- 3 第3学年B(2) 「身近な自然の観察」
- 4 第4学年B(1) 「人の体のつくりと運動」
- 5 第6学年A(4) 「電気の利用」
- 6 第6学年B(5) 「月と太陽」
- V 小学校理科の目標と内容
- §1 理科の目標
- 1 自然に親しむこと
- 2 見通しをもって観察,実験などを行うこと
- 3 問題解決の能力を育てること
- 4 自然を愛する心情を育てること
- 5 自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図ること
- 6 科学的な見方や考え方を養うこと
- §2 理科の年間指導計画例
- 1 年間指導計画の作成
- [第3学年]
- 1 第3学年 年間指導計画作成のポイント
- 2 第3学年 年間指導計画例
- [第4学年]
- 1 第4学年 年間指導計画作成のポイント
- 2 第4学年 年間指導計画例
- [第5学年]
- 1 第5学年 年間指導計画作成のポイント
- 2 第5学年 年間指導計画例
- [第6学年]
- 1 第6学年 年間指導計画作成のポイント
- 2 第6学年 年間指導計画例
- §3 理科の内容と学習指導例
- [第3学年]
- 1 学年目標
- 2 内容
- A 物質・エネルギー
- (1) 物と重さ
- (2) 風やゴムの働き
- (3) 光の性質
- (4) 磁石の性質
- (5) 電気の通り道
- B 生命・地球
- (1) 昆虫と植物
- (2) 身近な自然の観察
- (3) 太陽と地面の様子
- 学習指導事例@ 第3学年A(2) 「風やゴムの働き」
- 学習指導事例A 第3学年B(2) 「身近な自然の観察」
- [第4学年]
- 1 学年目標
- 2 内容
- A 物質・エネルギー
- (1) 空気と水の性質
- (2) 金属,水,空気と温度
- (3) 電気の働き
- B 生命・地球
- (1) 人の体のつくりと運動
- (2) 季節と生物
- (3) 天気の様子
- (4) 月と星
- 学習指導事例@ 第4学年A(2) 「金属,水,空気と温度」
- 学習指導事例A 第4学年B(1) 「人の体のつくりと運動」
- [第5学年]
- 1 学年目標
- 2 内容
- A 物質・エネルギー
- (1) 物の溶け方
- (2) 振り子の運動
- (3) 電流の働き
- B 生命・地球
- (1) 植物の発芽,成長,結実
- (2) 動物の誕生
- (3) 流水の働き
- (4) 天気の変化
- 学習指導事例@ 第5学年A(3) 「電流の働き」
- 学習指導事例A 第5学年B(4) 「天気の変化」
- [第6学年]
- 1 学年目標
- 2 内容
- A 物質・エネルギー
- (1) 燃焼の仕組み
- (2) 水溶液の性質
- (3) てこの規則性
- (4) 電気の利用
- B 生命・地球
- (1) 人の体のつくりと働き
- (2) 植物の養分と水の通り道
- (3) 生物と環境
- (4) 土地のつくりと変化
- (5) 月と太陽
- 学習指導事例@ 第6学年A(4) 「電気の利用」
- 学習指導事例A 第6学年B(5) 「月と太陽」
- W 新しい理科の実践課題と具体例
- §1 科学的な言葉や概念を使用し考えを説明する学習活動
- 1 科学的な言葉や概念
- 2 科学的な言葉や概念を使用し考えを説明できる子どもを育む視点
- 3 子どもの考えを促進させる観察,実験結果整理の視点
- §2 環境教育の推進
- 1 理科と環境教育
- 2 理科の学習内容と環境教育
- 3 指導上の留意事項
- 4 各学年の実践事例
- 付録・小学校学習指導要領「理科」
はじめに
平成20年3月に学習指導要領が改訂され,いよいよ新しい理科教育のスタートです。移行措置の先行実施に伴い,来年度から新しい内容にもとづく授業が展開されます。
新学習指導要領理科は次のような特徴をもっています。
【理科の内容が3区分から2区分に】
現行学習指導要領では,理科の内容の領域構成は,「A生物とその環境」,「B物質とエネルギー」,「C地球と宇宙」の3区分です。この3区分が,今回,子どもが自ら条件を制御して実験を行い,規則性を帰納したり,一定の視点を意識しながら自然を全体と部分で観察して,特徴を整理したりする子どもの学び方の特性を踏まえて,「A物質・エネルギー」と「B生命・地球」の2区分に改められました。
【六つの理科の新内容が追加】
理科の授業時数の増加に伴って,それぞれの領域構成において三つずつ新たな学習内容が追加されました。「A物質・エネルギー」については,例えば,風やゴムの働き,物と重さ,電気の利用などが追加されました。「風やゴムの働き」は科学的な体験の充実を,「物と重さ」は物質概念の定着を,「電気の利用」は,持続可能な社会への対応をねらいとしています。「B生命・地球」については,例えば,自然の観察,人の体のつくりと運動,月と太陽などが追加されました。「自然の観察」は自然体験の充実を,「人の体のつくりと運動」は人体概念の定着と生命尊重の態度の育成を,「月と太陽」は,空間概念の定着をねらいとしています。
【理科で言語活動を充実】
言語活動の充実について,小学校理科では,子どもの科学的な見方や考え方が一層深まるように,観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を重視します。特に,観察,実験において結果を表やグラフに整理し,予想や仮説と関係付けながら考察を言語化し,表現することを一層重視することにより言語活動の充実を図ります。
【理科で体験活動を充実】
小学校理科では,生活科との関連を考慮し,科学的な体験や自然体験の充実を図ります。科学的な体験については,例えば,第3学年の「風やゴムの働き」が考えられます。風で動くおもちゃやゴムで動くおもちゃをつくるものづくりの活動を通して,風力やゴムの伸びとおもちゃの動く距離とを関係付けて考えるなどの学習が考えられます。自然体験については,例えば,第3学年の「身近な自然の観察」が考えられます。校庭や近くの公園などで,そこで生息している生物の様子を調べ,土の様子や樹木の状況などの環境とのかかわりについて体験的に学習を進めることが考えられます。
【理科で環境教育を推進】
持続可能な社会の構築のために,各教科等において環境に関する学習の一層の推進が重視されています。理科においては,例えば,第6学年「水溶液の性質」の学習は,子どもとともに学習後の廃液の処理について考えることにより,環境への負荷に留意した学習の充実を図ることが考えられます。さらに,生物を対象とした学習は,生命を尊重しようとする態度の育成はもとより,環境保全の観点から,より充実した指導の工夫,改善を考えていくことができます。
本書は,こうした小学校理科の改訂の趣旨を十分に理解し,先駆的に理科教育を実践している先生方が分担してそれぞれを解説したものです。本書から新しい理科教育の方向性を多くの先生方が理解し,その理解のもとに学習指導の工夫改善が図られることを願ってやみません。
平成20年10月 /村山 哲哉
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- 明治図書