子ども集団づくり入門
学級・学校が変わる

子ども集団づくり入門学級・学校が変わる

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子どもたちの人間関係はかつてないほどバラバラになっている。

この本は、教育実践、とくに生活指導・集団づくりにおいて子どもと教師、子どもと子ども、教師と保護者の〈つながり〉と共同を取り戻し、新たに創り出すことを願って編集・著作されたものです。


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ISBN:
4-18-803245-6
ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
4刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 200頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第T章 わたしたちが教師であり続けるために
1 子どもたちのメッセージ
(1) 一人ひとりの叫び
(2) メッセージを読み解く
2 子どもとつながる 子どもと子どもがつながる
(1) 子どもたちの居場所
(2) なぜ暴力を振るうのか
(3) 暴力を乗り越えさせたもの
(4) リーダーとして認められるとき
(5) 異なる者どうしの出会い
3 子ども集団の物語を紡ぐ
(1) トロイの同盟 〜子どもたちが出会う〜
(2) 出会いから共同へ 〜班・グループづくり〜
(3) 「〜のくせに」「〜らしさ」を超えてつながる
4 保護者と教師が出会うとき
(1) 保護者に支えられて
(2) 保護者は実践のパートナー
(3) 「孤立」から「出会い直し」へ
5 教師の自立の決め手になるもの
(1) 学級の現実を読み解くことで揺れて
(2) 何が問題だったのか
(3) 「対話」から「出会い直し」へ
(4) 実践の再スタート
(5) 共に考え合う仲間がいる
第U章 子ども集団づくりをどう進めるか
1 学級における子ども集団づくり
(1) 学級ってどんなところ
(2) 学級づくりを構想する―子ども集団づくりをはじめよう
(3) 学級集団の発展について
2 バラバラな学級 ――学級地図を作る
(1) バラバラな子どもたち
(2) 子どもの声に耳を傾ける
(3) 学級の集団地図を描く
3 豊かな活動をつくる(小学校)
(1) 豊かな活動を通して子どもの生活世界を豊かなものに
(2) 自主性と自発性を重視した諸活動
(3) 活動を通して子どものネットワーキングを援助する
(4) 活動を通して自己指導と自主管理の発展を育てる
4 豊かな活動をつくる(中学校)
(1) 班やグループの活動を通して
(2) フォロアーシップとリーダーシップ
(3) 三年間の見通しと学年活動を豊かに
5 学級で事件が起きたとき
(1) 事件を教材化するか否かの判断をする
(2) トラブルを起こした子をどうとらえるか
(3) 事実をはっきりさせる
(4) 事実がはっきりしない時
6 「荒れ」と集団づくり(小学校)
(1) 子どもが「荒れ」るには理由がある
(2) 仲間と安心と信頼のある生活を築いていく
(3) 保護者と一緒に悩む
7 「荒れ」と集団づくり(中学校)
(1) 教師と子どもがつながる
(2) 子どもと子どもがつながる
(3) 職場の合意をとりつける
8 不登校の子どもの指導
(1) 子どもとどう出会うか
(2) 子どもが背負っているものをつかむ
(3) 不登校の子どもが生きられる学校づくりを
(4) 不登校を支えるネットワークづくり
9 特別なニーズを持つ子どもと子ども集団づくり
(1) 特別なニーズを持つ子どもがいる教室
(2) 共に生きる教室空間をつくる
(3) 特別支援教育とは
第V章 学びと子ども集団づくり
1 はじめに ―生活指導が追求する学びとは何か―
(1) 学びの視点から教師の指導性を問う
(2) 授業改造と子どもの生活
(3) 対話・討論と学び
(4) トラブルを読み解く
(5) 社会的文化的コンテキストを読みひらく
(6) 学びを通して集団づくりを構想する
2 集団づくりと学び
(1) 子どもが背負っている問題を教師・関係する子どもと読み解く
(2) 小さな出来事や事件を角度をつけて読み解く
(3) 生活現実のテーマを映し出すメディア情報・学習資料を読み解く
3 授業で追求する学びと集団づくり
(1) 子どもの生活現実を読み解く中で見えてくる世界からのメッセージ
(2) 体育の授業でつくりだした子どもの新たな世界
(3) 社会的文脈を読み解く「総合学習」とボランティア活動
4 学びの意味と集団づくり
第W章 学校づくりと子ども集団づくり
1 学校づくりをどうする
(1) 教育「改革」のなかの学校と教師たち
(2) 学校づくりを追求しよう
2 教職員がつながる
(1) 同僚との関係を築く
(2) 管理職とのパートナーシップをさぐる
(3) 専門職・専門機関との協同をさぐる
3 保護者・地域とつながる
(1) 学校づくりにむけて保護者とつながる
(2) 地域のおとなとつながる
4 子どもが参加する学校づくり
(1) 児童会活動の指導と学校づくり
(2) 生徒会活動の指導と学校づくり
(3) 学年の指導と学校づくり
(4) 部活動の指導と学校づくり
(5) 学級から多様な活動をつくりだす
補論 子ども集団づくりがめざす世界
1 教育の変革をめぐって
2 市民の立場に立つ公共性
3 関係性を変える
4 共同・自治と公共性
5 集団づくりの研究課題
(1) 子どもたちの生活に安全な基点(セーフ・ベース)を保障する
(2) ヘゲモニーの民主性
(3) リーダーの指導
(4) 対話・討論・討議と市民的公共の言葉

まえがき

 この本は、教育実践、とくに生活指導・集団づくりにおいて子どもと教師、子どもと子ども、教師と保護者の〈つながり〉と共同を取り戻し、あらたに創り出していくためのものです。

 その一つである〈子どもと教師のつながり〉で悩んでいる教師は多いのではないでしょうか。教師を拒否し、級友たちとトラブルを繰り返す子どもが増えています。しかし、その子どもほど、他者とのつながりの欲求をもちながら、うまくそれを表せないのです。

 否定的と見える行動の中に子どもの自己肯定要求がある。そのことを基本にして子どもの抱える課題をとらえることが、子どもとつながる第一歩です。

 二つめに、〈子どもたち自身がつながる〉世界を、自治的活動と学び・文化的活動をとおして子どもたちと共にどう追求していくか。

 活動をつくりだす主体は子どもたちの集団です。生活世界の共同の実践者であり未来の市民である子どもたちの関係性を全生研では〈子ども集団〉としてとらえています。それは学級(クラス)集団を基礎としながらも、その制度的な縁取りだけで考えるのではなく、学級や学年を超えた多様なつながりと規模の集団を指しています。

 三つめは、〈保護者と教師のつながり〉も、今なかなか大変な状況にあるのではないでしょうか。保護者からすると、学校への要求があるし、専門職者である教師への期待もあります。教師からすると、教育政策のもとでの学校の実像を知ってほしい思いがあるし、子どもたちが自立に挑み成長していくプロセスを共感的に理解してほしい願いがあります。お互いに立場こそ違えども、対話によって共有され合意されることは多くあります。保護者と教師は、一緒に考え、対話し、力を合わせていく人たちです。

 四つめに、〈学校が地域社会とつながる〉ためにはどのような観点で日々の実践を行っていけばよいのでしょうか。学校が学校としてよみがえるためには、地域社会における学びの公共空間を多様な分野の人々が守り支えていくことが不可欠です。また、この共同を通して地域の人々自身が育ちあう関係がより豊かになっていきます。教育の公共性とはこのような営みのことであり、〈子ども集団づくり〉がめざす世界も、市民的な公共性と自治にほかなりません。

 さらに、この本は、わたしたちが教師として、わたしたちを取り巻く世界とつながり、教師である自己自身と出会い直すためのものです。

 いま、日本は市場原理の競争主義を突き進んでいますが、いつまでもこの状態が続くわけではありません。イギリスを初め、市場原理型社会のひずみに行き当たり転換してきた例もあります。すでに、市場原理を超える別の生き方、すなわち共同あるいは協同の原理に立つ日常の関係性、学校づくり、職場づくり、地域社会づくりが立ち上がってきています。それはしずかに政治の世界をも揺るがしはじめています。

 しかし、その一方で、学校教育において拡張される競争原理の悪影響は、なおも子どもたちを深く悩ませ、追い込み、そのつらさや矛盾・葛藤のアクティング・アウトとして、子どもたちの新たな暴力的関係が全国各地で起きています。それをただ自分本位の粗暴さとしての「荒れ」と見るのではなく、「つながりの崩壊」に着目しつつ、子どもたちが他者とつながり、その過程で自己を発見・再発見していくように実践を切りひらいていくことが、いま全国共通の実践課題になっています。ここにこそ、一人ひとりの自立を希望へと導いていく教育の役割があります。

 全生研は、これまでの実践と研究の蓄積に立って、生活指導・集団づくりの諸課題に取り組んできています。現代の教育と学校の多くの課題を前にして、上述した見方・考え方に基づく〈子ども集団づくり〉を実現することがそれらの課題を打開する道に通じるという認識にたっています。副題を「学級・学校が変わる」としたのもそのためです。本書の活用とご批正をお願いします。

 文中の子どもの名前はすべて仮名としました。必要な用語の説明は、最小限に絞って、注記に入れてあります。

 なお、本書の執筆グループは以下の通りです(担当章ごとに五十音順。*印は刊行委員)。

 第T章 わたしたちが教師であり続けるために

 (浅見慎一、今関和子、折出健二*、栗城順一*、高原史朗、村越規雄)

 第U章 子ども集団づくりをどう進めるか

 (大和久勝*、柏木修、斎藤修、坂田和子*、篠崎純子、白桃敏司、田辺一馬、中川晋輔、宮崎久雄)

 第V章 学びと子ども集団づくり

 (井本伝枝、加納昌美、北嶋節子、鈴木和夫*、高橋廉*、本田広行)

 第W章 学校づくりと子ども集団づくり

 (安島文男*、上木洋一、小室貴、塩崎義明、志賀廣夫、照本祥敬*、花山尚人)

 補論および説明注記

 (折出健二)


  二〇〇五年六月六日   /全生研常任委員会「新入門」(略称)刊行委員会

著者紹介

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 全生研(全国生活指導研究協議会)は、46年余の歴史をもつ民間教育研究団体。英文名はThe Japanese Society for Life Guidance Studies。

 全国に支部をもち、小・中学校の教師を中心に研究者も交えて実践交流と研究討議をおこなっている。会員によるサークル活動を基盤として、毎年、春のセミナー、夏の全国大会、地区学校、各支部やブロック主催の講座・研究会等で教育実践にふかくコミットしたテーマを追求している。市民的公共性にひらかれた研究団体として、子ども・保護者・教師の共同の学校づくりをめざしている。機関誌は『生活指導』

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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