- まえがき
- 序論 栄養教諭の仕事は健康教育の基盤づくり
- 第T章 栄養教諭に必要な基礎知識1
- 栄養教諭ってどんな仕事
- 1 栄養教諭が誕生した3つの理由
- (1) 朝食の欠食
- (2) 肥満とやせ
- (3) 孤食(テレビ食・マンガ食・ゲーム食)
- 2 栄養教諭の仕事は,学校給食の管理と食育(食に関する指導)
- (1) 給食管理
- (2) 食育(食に関する指導)
- @ 個別的な相談指導/ A 教科・特別活動等における教育指導/ B 教職員や家庭・地域との連携をとり調整して食育
- 3 栄養教諭がする朝食相談・指導
- (1) 朝食の不摂食の現状
- @ 朝食の不摂取は10人に1人/ A 朝食の欠食化の増加/B 朝食の欠食の習慣化/ C その戦略のひとつ
- (2) 栄養教諭がする朝食指導の事例
- @ 朝食指導例(その1)/ A 朝食指導例(その2)/ B 朝食指導例(その3)/ C 朝食指導例(その4)
- (3) 栄養教諭がする朝食の基礎知識
- @ 脳細胞の活動源はブドウ糖/ A ブドウ糖をとぎれさせない/ B でんぷんが脳に使われるまでの所要時間は?/ C 朝食は1日の活動源/ D 朝食は肥満や便秘予防/ E 朝食は必ず摂ろう/ F どのようにしたら朝食を食べるようになるか/ G 1日3食の意味と栄養/ H 果物やお菓子の朝食はどうしてダメなのか/ I 朝食はご飯とパン食,どっちがいいの/ J 食事をした後でも甘いものが食べたくなるのはどうしてか/ K 調理室での朝食/ L 夜食
- 4 栄養教諭がする肥満(太りすぎ)とやせ願望への指導
- (1) データをもとにした肥満指導―肥満傾向児の現状―
- (2) 肥満(太りすぎ)の基礎知識
- @ 体脂肪の増加/ A 肥満の要因/ B 太りにくいからだをつくるのは小学校低学年/ C 脂肪の量を減らす方法と体力づくり/ D 肥満と自律神経
- (3) データをもとにしたやせ願望への指導
- (4) やせ願望の基礎知識
- やせ体型のファッション化
- 5 栄養教諭がする孤食(こしょく)への指導
- (1) 孤食(こしょく)とは
- (2) どうして孤食が問題か
- (3) 孤食の解消
- (4) 児童・生徒の好きな料理・嫌いな料理
- 6 栄養教諭がする生活習慣病の予防指導
- (1) 生活リズムの確立
- (2) 生活習慣病と運動について
- @ 肥満と運動/ A 動脈硬化と運動/ B 高血圧と運動/ C 休養
- 7 栄養教諭がする食料・食品・食事の安全と不安への指導
- @ トレーサビリティ(traceability)「追跡可能性」/ A 残留農薬/ B 水質汚濁/ C 遺伝子組換え食品/ D 食品添加物/ E 賞味期限と消費期限
- 第U章 栄養教諭に必要な基礎知識2
- 栄養教諭が指導する内容と方法
- 1 どのような食習慣を指導するか
- (1) 食習慣に関する内容と方法
- @ 食習慣(習慣化している食生活)の形成を中心とする栄養教諭の3つの役割/ A 食習慣はどのようにして決まるのか/ B 食習慣の形成/ C 味覚育=味覚教育
- (2) 健康づくりのための食生活指針
- @ 幼児期(食習慣の基礎づくり)の食生活指針/ A 学童期(食習慣の完成期)の食生活指針/ B 思春期(食習慣の自立期)の食生活指針
- (3) 食事による摂取〔家庭・理科〕と環境・活動による消費
- 〔保健・体育〕の指導
- (4) 美意識の変遷〔美術・音楽・国語〕
- (5) 消費者としての食安全の情報収集・価値判断〔数学・技術・養護教諭・校医・PTA・卒業生・地域生産者〕
- @ 牛肉の話/ A ウシをインターネットで追跡してみよう
- 2 栄養教諭がする特殊支援教育(障害児の調理を含む栄養教育の実施要項)
- (1) 養護学校高等部の調理実習
- (2) 養護学校高等部の調理実習授業分析(抜粋)
- @ 授業内容/ A 包丁について/ B 材料の切り方/ C材料のむき方/ D 材料や調味料の計り方/ E まとめ
- 3 栄養教諭がするエコ・クッキング〔家庭・技術・食品販売店〕
- (1) エコ・クッキングとは
- (2) 教科との連携にはエコ・クッキングが最適
- (3) エコ・クッキング実践事例
- @ 台所の心がけエコ・キッチン/ A 食物への感謝を養うエコ・クッキング/ B 家庭科の調理体験はエコ・クッキング
- 4 栄養教諭がする指導〔理科・生活・家庭〕 ―栽培・収穫・試食―
- 5 栄養教諭がする調理員と子どもとの共同作業
- 6 栄養教諭がする家庭・地域と連携した食に関する指導
- 7 栄養教諭がする食育の授業〔国語・社会・英語〕 ―地域食文化を中心に―
- (1) [実践事例]国際…トムヤムクン
- @ 第1時間目:冷蔵庫や冷凍庫の探検/ A 第2時間目:エコ・トムヤムクン創作料理に挑戦
- (2) [実践事例]日本…おでん
- @ おでんはバランス食/ A 献立の3つの基本構成
- (3) [実践事例]土佐…かつおのたたき
- @ 地域食がおいしいのは/ A 地域の伝統食品や伝統料理を知ろう/ B 地域と連携した食習慣の形成/ C 自分の住んでいる地域食は/ D 伝統食の考えを変えよう
- 8 教育としてのクッキング
- (1) クッキングの基礎基本
- @ クッキングはつくるのが楽しい/ A 料理を食べるのが幸せであり,喜びであり,感謝の気持ち/ B 次への創作意欲がわいて,アイデアが浮かんでくる
- (2) 3つの基礎基本を含む教材例
- @ 第1段階:1品1食メニューの3種類/ A 第2段階:3品1食メニュー/ B 第3段階:2品とデザートのメニュー
- 9 栄養教諭がする個別指導の実施要項
- (1) 栄養アセスメント(nutritionalassessment)のながれ
- @ エネルギー消費と摂取のバランス/ A 栄養素のバランス
- (2) 予防的栄養指導の実施要項
- @ 目的別・一時的栄養・エネルギーの偏り/ A 自然食品とサプリメント
- (3) 調理実習の実施要項
- @ 調理体験から生まれる3つの実力/ A 食事
- 10 栄養病理への指導ポイント1:アレルギー
- (1) 学校給食のアレルギー対応
- 個に応じた学校給食の工夫「食物アレルギー給食の実践」
- (2) 食物アレルギーはどうして起こるか
- @ アレルギーのメカニズム/ A 食物アレルギーにより引き起こされる症状
- (3) アレルギーの診断
- 食物アレルギーの予防と注意点
- (4) 食物アレルギーの個別指導例
- 個に応じた食物アレルギーの指導
- 11 栄養病理への指導ポイント2:摂食障害
- (1) えん下(げ)障害
- (2) 神経性食欲不振症
- (3) 摂食・えん下障害に関する質問
- 12 栄養病理への指導ポイント3:スポーツ活動
- (1) スポーツを行う児童・生徒への個別指導
- (2) スポーツと栄養
- (3) スポーツ栄養の3必勝法
- @ スポーツの勝利はでんぷんから/ A 筋肉のひび割れはアミノ酸が治す/ B 血糖値を高くしない食べ物を選択しよう
- (4) 骨をつくる
- (5) 水 分
- (6) ジュニア期(小・中学生)のスポーツ栄養の項目
- 13 栄養病理への指導ポイント4:味覚
- (1) 味覚は五感のひとつ
- @ 銅と亜鉛不足/ A 5基本味を脳に記憶
- (2) 好き嫌いをなくす味覚育
- 第V章 栄養教育の方法と身につく学力
- 1 栄養教育とは
- (1) 食育は伝統食の継承と創造
- (2) 旬の食品
- 2 栄養教育の方法
- @ 観察・調査による情報/ A 情報の分類/ B 情報の評価・判断・選択/ C 実践・実習/ D 創造
- 第W章 栄養教諭の職務とは
- 学校栄養職員から栄養教諭に移行した方へ
- 1 栄養教諭の配置と身分
- (1) 栄養教諭の配置
- (2) 栄養教諭の身分
- 2 栄養教諭免許制度の概要
- 3 栄養教諭の職務内容
- (1) 栄養教諭の職務内容と役割
- (2) 食に関する指導(食育)の充実と期待される役割
- (3) 栄養に係る教育に関する教科の授業内容
- @ 小学校の教科/ A 中学校の教科
- 第X章 栄養教諭とキャリア教育
- 進路に栄養教諭を考えている高校生へ
- 1 栄養教諭・管理栄養士・栄養士は楽しい仕事・やりがいのある仕事
- (1) 問題解決学習で栄養教育を
- (2) 将来の食文化をつくる楽しさ
- (3) 個人や国民の幸せの源をつくる楽しさ
- 2 栄養教諭への道
- (1) 栄養教諭になる方法
- (2) 栄養教諭になるための代表的で基本的なコース
- (3) 栄養教諭の免許を取得するための免許申請に必要な単位をそろえる各種のルート
- 資料1 教育の年間計画(事例 高知市立朝倉第二小学校)
- 資料2 教育システムと地域のネットワーク(南国市立後免野田小学校)
- 資料3 食育基本法(解説)
- 参考文献
- さくいん
まえがき
学校教育法の一部が改正されて,平成17年4月から小学校や中学校に栄養教諭が配置されました。平成19年3月の時点では,25都道府県と11国立大学法人に330余名が栄養教諭としてスタートしています。今後は,すべての都道府県に継続して,栄養教諭制度が採用されていくことが期待し,予想されています。
現代の課題として,朝食を食べない,子どもの肥満傾向と極端なやせ願望,孤食などが話題となっています。なぜ重要視されるのでしょうか。
朝食の欠食は脳の働きを制限させます。持っている力を最大限に発揮できないのです。筋肉も同じです。肥満は将来の病気を約束します。食事を極端に減らしたファッション化したやせ願望は,貧血や骨粗しょう症を誘い出します。孤食はコミュニケーション能力を開発させないまま,大人になります。これらの共通する原因は栄養素のインバランスからきています。子ども時代に心の栄養不足が心を耕さないことが心配です。
このような望ましくない生活の習慣によって生活習慣病となっていくのです。人間が80歳まで生きるとすると一生では約8万回食事をします。
食の大切さと望ましい食生活習慣について,学校給食を教材として指導するために栄養教諭が誕生したのです。
学校栄養職員は「給食管理」を主な業務としてきましたが,栄養教諭は「給食管理」と「食に関する指導」をします。それは,栄養士の専門性と教職の仕事です。栄養教諭単独ではなく,他教科の教員や学級担任や養護教員と連携しながらの授業です。学校内だけではなく,地域の方と協力しながら食指導をするのです。
栄養士,管理栄養士の仕事は喜んでいただける楽しい,やりがいのある仕事ですが,栄養教諭はそれに,教え導く教育が加わります。出会った子どもたちが一生健康で幸せに過ごせるようにサポートできるのです。
進路に迷っている高校生へ,栄養士にはなるけど栄養教諭はどうしようかなと思っている学生さんへ,栄養教諭へ移行を考えている学校栄養職員の方々に,本書では,例えば朝食について,具体的に事例を紹介しています。進路決定のきっかけになってほしい,大学の教科書として使っていただきたい,指導案の参考になりたいとの思いで書かせていただきました。
本書を刊行する機会を与えていただき,企画が具体化する過程において適時にご助言をいただき,いつも,温かく見守ってくださり導いてくださいました明治図書出版社の樋口雅子編集部長に,心から深く感謝申し上げます。
平成19年 /小西 文子
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- 明治図書
- 栄養教諭の実習受け入れの際に、参考にしました。2019/12/2650代・小学校教頭