- まえがき
- T 運動会指導の極意 パートT
- 〜クラス対抗リレー〜
- 一 クラス対抗リレー圧倒的四位
- 二 運動会を終えて
- 三 母親の反応
- 四 運動会余話──教育の営み
- U 運動会指導の極意 パートU
- 〜応援団指導〜
- 一 花の応援団の発祥
- 二 応援団の構成
- 三 役の決定
- 四 学年の担当を決める
- 五 応援団父母各位への報告
- 六 応援団は脇役であることを語る
- 七 ハチマキの練習
- 八 エールの練習
- 九 「赤白のあいさつ」の指導
- 一〇 子どもを熱中させるために
- V 遠足・移動教室での向山流子どもとのかかわり方
- 一 伊豆高原移動教室てんやわんや
- 1 出発/ 2 第一日目/ 3 第一日目夜/ 4 クラスレクリエーション/ 5 就寝/ 6 第二日目/ 7 帰校
- 二 遠足〜道中珍騒動始末記「富士五湖めぐりの巻」〜
- W 子どもの可能性を最大限に引き出す学芸会指導
- 一 教師の演出力
- 1 演出とは/ 2 学芸会での演出/ 3 学芸会は全員出演/ 4 演出方法/ 5 「歩くだけ」の採点/ 6 子どもの力を引き出す
- 二 学芸会の脚本を作る
- 1 学年の話し合い/ 2 子どもたちの話し合い/ 3 完成脚本“こんなおとうさんおかあさんに”
- 三 学芸会「かにむかし」の指導(一年生)
- 四 学芸会「光れココロ星」の指導(四年生)
- 五 学芸会「エソホの話」の指導(六年生)
- 六 学芸会「ほんとうの宝ものは」の指導(六年生)
- X “卒業式”呼びかけ指導の極意
- 一 プロの教師は怒鳴らない
- 二 向山流呼びかけ指導の実際
- 三 別れの言葉・送る言葉台本
- Y 離任式を美しく演出する
- 子どもの活動を最大限に引き出す「向山型行事指導」の解説 /星野 裕二
まえがき
全集三期も思い出深い内容が多い。一冊一冊が、私の教師としての足跡である。
いつの時代にか、「向山洋一に追いつき追いこせ!!」と挑戦する後輩も出てこよう。
未だわからぬそのチャレンジャーのために、向山実践の輪郭を述べておこう。
私は、小学校で三二年間の教師生活を送った。
そして、その三二年間のすべての実践が本になった。
毎年毎年の実践が、それぞれ単行本になっている。
本になったものの大半は、「その時その時」の「通信、報告、論文、手紙」などである。後から書いたものではない。
新卒時代の本は「新卒日記」「新卒研究授業」「教生の記録」「研究授業論文」などからできている。
当然ながら、すべて向山のオリジナリティであり、他人の文をはめこんではいない。そんなことをしていたら、本にはならなかった。
また、三二年間の三万時間を超える授業で、授業が一分以上のびたことは一〇回もない。ラストの一〇年間は、多分、一回もない。
向山型算数、向山型国語、向山型社会、向山型理科と言われるように、あらゆる教科、分野に及んでいる。
そこには、おそらく一〇〇を超える問題提起の論文があった。
つまり、「それまでの教科教育の主張を批判し」「それにかわる提案を示した」のである。
その代案は、「雑誌特集」に組まれたり、「単行本」になっていき、多くの人に支持されていった。
このような実践をつくり上げたのは、向山が教室の一人一人に目を行き届かせていたためである。
「一人一人の子どもを大切にしたい」と多くの教師は言う。しかし、努力している人は皆無だ。
教科書を出せない子が二人いる。教科書をうつせない子が三人いる。一問を解くとしばらくボーッとしている子が二人いる。字がグチャグチャな子が三人いる。「教科書の三二ページをあけて、二番をやりなさい」という指示ができない子が三人いる。
これが、向山学級の普通の姿だ。日本全国、どこでも同じ状態だ。
叱っても、どなっても、説教しても直らない。
向山は、一人一人のその子たちが「できるようにしてきた」「工夫してきた」のである。
これが、他の教師たちとの唯一で最大の違いだ。
教室こそ、教育研究の宝庫だ。海の向こうや遠い昔を求めている研究者には、手の届かぬ境地である。
評価の基準はたった二つ。
「子どもが変わった」という事実と「腹の底にズシーンとひびく手ごたえ」。これだけだ。
私は「子どもの主体性」とか「支援」とか「練り上げ」とかいうわけのわからない言葉が大嫌いだ。
そんな実践のほとんどすべてはにせもので、できない子どもは何も変化していない。
向山実践は「美辞麗句の教育実践」とは正反対のところに位置した。
駄目な研究の代表が附属小の研究。日本の教育に何の影響も与えないのみか、青年教師に悪い影響ばかり与えているくだらない研究だ。中には、研究だけでなく、変な圧力をかけるくだらない教師もいる。
熊大附小や新潟大附小のように立派な研究をしている学校もあるが、数は少ない。
「附属小はいらない」という声が強まるはずだ。
評価の基準はただ二つ、「子どもの事実」と「腹の底までの手ごたえ」。
本書を読まれる多くの青年教師が、自分の実践をこの二つを評価の基準として省みることを願う。
そして、問題状況の山積する自分のクラスの実態に果敢にとりくまれんことを!
いつの日か、向山実践に挑戦する後輩が続出することを夢みて。
二〇〇二年二月二二日 鹿児島教え方セミナー熊本阿蘇学会議で /向山 洋一
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