- まえがき
- ▼第一章 百発問づくりの極意
- 一 なぜ百発問づくりが必要か
- 二 短時間でできる百発問づくりの秘訣
- 1 作品に書いてある語をそのまま使った発問
- 2 作品の中にある助詞を使った発問
- 三 「語意」の発問づくりが、中心発問に波及する
- ▼第二章 作品の特徴から設定、分析批評一〇の観点
- 一 色
- 二 話者の視点
- 三 時の経過
- 四 季節
- 五 人物像
- 1 読み取れる情報の相互発信
- 2 性別
- 3 話しかけている相手
- 4 おかれている状況
- 5 人物の考え
- 6 人物の願い
- 六 クライマックス
- 七 省略語
- 八 あいまいさ
- 九 イメージ
- 一〇 助詞
- ▼第三章 物語文を教材化する
- 一 大きなかぶ
- 1 PISA型、三つの読解力と発問
- 2 かぶの動きは、「解釈」できるか
- 3 かぶの動きにかすった発問と実践
- 4 伏線を張る
- 5 「かぶの動き」を問う
- 6 思いではなく、事実で問うべきだった
- 二 くじらぐも
- 1 第一場面の読み取り
- 2 第二場面の読み取り
- 3 第三場面の読み取り
- 4 第四場面の読み取り
- 5 第五場面の読み取り
- 三 三つのお願い
- ▼第四章 詩を教材化する
- 一 山のあなたを
- 二 心よ
- 三 かごめかごめ
- 四 故郷
- 1 ひっかかる箇所
- 2 学級での授業
- 3 向山氏のコメント
- 五 冬景色
- 1 教材の特長
- 2 学級での授業
- 3 向山氏のコメント
- 六 喧嘩のあと
- ▼第五章 短歌を教材化する
- 一 さくらばな散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞたちける
- 二 月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月
- 三 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
- 四 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ
- 1 現代の「朝顔」ではない
- 2 授業実践
- ▼第六章 俳句を教材化する
- 一 かれ朶に烏のとまりけり秋の暮
- 二 木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ
- 三 石山の石より白し秋の風
- 四 古池や蛙飛びこむ水の音
- 1 学級で授業をする
- 2 向山氏のコメント
- 五 荒海や佐渡に横たふ天の川
- 1 サークルで模擬授業をする
- 2 学級で授業をする
- 3 向山氏のコメント
- 六 戸をたゝく狸と秋をおしみけり
まえがき
最近参加した国語の研究大会で、こんな話題が出た。
「教育現場では、相変わらず『子どもに学習問題をつくらせる国語科の授業』が展開されています」
「教師の『教材研究』ができていないのに、子ども任せの学習問題などつくって進めても、国語の力がつくはずがありません」
実践研究発表の協議会や大学教授たちのパネルディスカッションで出た話題だ。
私も、「そうだそうだ」とうなずきながら聞いていた。さらに、次の話題も出た。
「子どもたちに学習問題をつくらせる前に、先生自身が教材研究をしっかりやってほしいです」
だが、話題は、それ以上進展しなかった。期待していただけに、残念でならなかった。
教材研究をする場合、次の二点が重要になる。
A 教材分析
B 授業の組み立て
文学教材にしぼって、読者諸氏に問いたい。
1 あなたは、教材分析をするために、どのような作業をしていますか。
2 あなたは、授業を組み立てるために、どのような作業をしていますか。
おそらく、次のような答えをされるだろう。
ア 暗唱できるくらい、教師自身が何度も全文音読して、内容を把握します。
イ 登場人物の心情、行動の原因、事件の推移、主題など、自分なりの解釈をもちます。
ウ 一時間ごとの授業細案(指示・発問と、予想される反応)を立てます。
エ 一時間ごとの板書計画(児童自ら板書させる場合も含む)を立てます。
私も、二〇代の半ばから、研究授業をする場合、そのような修業はしてきた。
だが、授業で手応えを感じたことは、ほとんどない。あったとしても、向山洋一氏の実践や、法則化論文で魅力を感じた実践の追試をしたときくらいだった。自分が教材研究をした授業で、手応えを感じたのは皆無に等しかった。
転機がおとずれたのは、三九歳のとき、今から一〇年前のことだ(きっかけは、第一章でふれている)。
少しずつ授業の手応えを感じるようになった。
原因は、これだった。
@ 文学教材を授業にかけるとき、向山型分析批評の観点を使って、百発問づくりをする。
A 百発問の中から中心発問を決め、授業の組み立てを考える。
B サークル例会で模擬授業にかけて検討してもらい、組み立てを修正する。
C 再度、サークル例会で模擬授業にかけ、組み立てを決める。
D 学級で授業をする。
サークル例会に参加し、この作業を一〇年間続けてきた。していくうちに、変化が現れた。
「今日の国語、楽しかったあ!」
子どもたちからこういった声が出るようになる。
教師が黙っていても、指名なしで意見が続いていく。討論が白熱する。
徐々に、授業の手応えを感じるようになってきた。
○ では、どのようにして百発問づくりを継続できたのか。
○ 百発問の中から、分析批評のどの観点を使い、「中心発問」を決めることができたのか。
○ 中心発問の決定後、どのようにして「伏線発問」を組み立てることができたのか。
○ たくさん出た意見をどのように整理したり、しぼりこんだりしたのか。
本書では、このような手順を具体的に述べている。
実践編では、四つのカテゴリー「物語文」「詩」「短歌」「俳句」に分けて、教材を取り上げた。このうち、「詩」「短歌」「俳句」については、中学校でも十分対応できる内容を紹介した。今日的な課題であるPISA型読解力の「情報の読み取り」「解釈」「熟考・評価」への対応も意識して行っている。
文学教材の教材分析や、発問づくり、授業づくり。最初の四年間は、TOSS長州教育サークル槇田健代表が結成していた「土の会」(金子みすゞの詩を教材化する会)が、修業の場だった。毎月、金子みすゞの詩集から、一遍を決めて模擬授業にかける。槇田氏から指導を受ける。この学びが、出発点になっている。
五年目以降、長州の子サークル「TOSS/Advance」と、私の運営する子サークル「TOSS/TAMAGAWA」で模擬授業を行い、クラスでの実践に取り組んできた。
今回収めた実践の多くは、河田孝文代表「TOSS/Advance」の仲間に模擬授業を検討してもらい、授業化したものだ。本書が日の目を見ることになったのも、河田代表と、仲間たちのおかげである。
「今までに発表されてきた法則化時代のものと、どこがどう違うか? その昔を知らない人もいそうだし。実践をまとめてみませんか」
と、樋口氏より連絡をいただいた。本書を刊行してくださった樋口編集長に、心から感謝を申し上げたい。
文学教材で子どもたちの読解力を育てたいと願っている方々に、少しでもお役に立つことがあれば幸甚である。
二〇〇八年五月
TOSS/Advance・TOSS/TAMAGAWA /新川 莊六
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- 明治図書
- 分析批評の具体が分かりやすい。2024/2/2240代・小学校教員