- シリーズ発刊に寄せて・シリーズの読み方
- まえがき
- 第1章 授業をアクティブにする工夫
- 1 アクティブな授業とは
- 2 アクティブな授業のための素地・土台
- 3 安心感のある学びの環境づくりのポイント
- 4 授業をアクティブにするために意識したいポイント
- 第2章 1学期 アクティブな授業の基礎づくり
- 〇 アクティブな授業の素地づくりで一斉授業の確立を
- 〇 「聞くこと」の確立
- 〇 ペア学習の成立を目指す
- (1) 座席の近い子ども同士のペア
- (2) 構成的なペア学習
- (3) 少人数グループ学習
- (4) 日常的な協働的活動
- 1 バリエーション音読(国語)
- 2 10マス計算(算数)
- 3 「気持ちわかる?」で間違うことのできる教室づくり(算数)
- 4 全員起立で全員発言(道徳)
- 5 ペアで伝え合い&コメント交換(国語)
- 6 ペアでおしゃべりタイム(国語)
- 7 質問ペアトーク(国語)
- 8 消しゴムチケット(算数)
- 9 お話再生 ボイスレコーダー(算数)
- 10 お隣に聞こう(国語)
- 11 輪番発言(社会)
- 12 部屋の四隅(国語)
- 13 雪玉転がし(理科)
- 14 ペアから人数を増やしてチャレンジ(体育)
- 第3章 2学期 子どものつながりを生かしてアクティブに
- 〇 授業の自由度を高めて協働的な学びをバージョンアップ
- 〇 少人数グループ学習をバージョンアップ
- 1 ペアでショーアンドテル(国語)
- 2 ペアを合体してグループ学習(理科)
- 3 クイズで学び合おう(社会)
- 4 自由移動でペア学習(算数)
- 5 チェックし合いながら書き進めよう(国語)
- 6 グループで役割ローテーション(体育)
- 7 順位づけ(ランキング)で話し合おう(社会)
- 8 グループでミッション(理科)
- 9 ワールド・カフェ形式の話し合い(国語)
- 第4章 3学期 自由度の高い学習と次年度への橋渡し
- 〇 自由度を高めた協働的な学習へのチャレンジ
- 〇 学年の学習内容の確実な習熟
- 〇 次年度への橋渡し
- 1 おでかけ1・2・3・4(算数)
- 2 付箋紙を使ってブレインストーミング&KJ法(社会)
- 3 ペアでギャラリーウォーク(図工)
- 4 作文回覧・返事を書こう(国語)
- 5 協働で課題解決(算数)
- 第5章 授業をアクティブにするチェックポイント10
- ―授業の主体性と協働性を高める点検リスト―
- 1 あなたの授業はアクティブになっているか
- 2 アクティブ授業づくりのチェックリスト10
- あとがき
シリーズ発刊に寄せて
次期学習指導要領に向けた動きが加速しています。ここまでの流れの中で最も注目を浴びたキーワードの一つがアクティブ・ラーニングだと言っていいでしょう。アクティブ・ラーニングは「考え方だ」,いや,「方法論だ」などの議論を経て「主体的・対話的で深い学び」という授業改善の視点というところに落ち着きました。
アクティブ・ラーニングという言葉は,次期学習指導要領からはなくなりますが,重要なのは文言の行方ではなく,それを導入しようとした背景です。
紆余曲折はありましたが,定義が変わったわけではありません。原点を確かめるためにその定義を確認しておきましょう。
「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」(中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)」(平成24年8月28日)に接続する「用語集」より)とあります。
この定義の冒頭部分が,この授業改革のストライクゾーンをズバリと捉えているように思います。子どもたちがこれから必要な能力・資質を身につけるために,様々な学習形態があっていい,しかし,それは一斉講義形式の指導ではないと言っています。また,「能動的」な学習という言葉に象徴されるように,「子どもたちの学習意欲を重視せよ」というメッセージが込められています。
なぜそのようなことを言っているのでしょうか。これまでわが国は,一斉講義型の指導で,とても効率的に知識を注入することに成功しました。多少の学力低下問題はありましたが,長年にわたって国際学力調査において高い学力を誇ってきました。しかし一方で,それだけでは,これから激変が予想される世の中を生き抜いていけないのではないかという危機感が高まっているのです。
グローバル化やIT化が進化する中で知識基盤社会へ移行しています。知識基盤社会とは,やたらと知識を詰め込むことが大事になる世の中のことを言っているのではありません。変化が激しく,常に,新しい未知の課題に試行錯誤しながらも対応することが求められる社会のことです。多様な価値観を理解し,多様な人と協働し,問題を解決していく能力が求められているのです。
アクティブ・ラーニングの視点での授業の見直しは,そうした状況を迎えているのに,学校に来て一日中,クラスメートの後ろ頭を眺めながら,他者の発言に耳を傾けながら,板書されたことをひたすら写し,他者と話し合うことも協力し合うことも,助け合うこともなく,新しいアイデアの1つも思い浮かべることのない時間を繰り返し体験していて,「大丈夫ですか?」と問うているのです。そして,そうした社会の変化に伴う,必要な能力・資質の変化によって,それらが身につくように絶えずカリキュラムを見直し(カリキュラム・マネジメント),そして,そこで主体的で協働力をもった子どもたちを育ててほしいという願いの具体化案を投げかけているのです。求められる学習者の姿は,図1(省略)のように社会のあり方の変化から生じているのです。
しかし,そうはいうものの,授業をアクティブにしたいけど,どこをどうしたらいいかわからないというのも現実的な悩みです。それを解決するために6人の教師が名乗りを上げました。小学校1年生編を阿部隆幸,2年生編を浅野英樹,3年生編を生方直,4年生編を阿部琢郎,5年生編を松山康成,6年生編を佐藤翔のいずれも昇り龍の勢いの大活躍のみなさんです。彼らはそれぞれが自分なりの視点で,アクティブな授業を追究してきました。そして,その追究の結果を,講師として招聘された先で,また,雑誌や書籍の中で発表してきました。話してよし,また,書いてよし,そして何よりも,実践してよしの実力者揃いです。1年間の実践を紹介できるのがその実力の証明です。
しかし,私が彼らに注目するのは,実践力や表現力だけではありません。その人柄です。勤務校では指導的立場や数々の主任をこなしています(または,その経験者)。それぞれ超がつくほど多忙でも,執筆を依頼すると「はい,喜んで」と快諾してくれました。いつ会っても爽やかな笑顔で子どもたちと真摯に向き合っている事実を知らせてくれます。彼らの講座には同僚が来ます。職場での信頼の証明です。そんな彼らの実践をぜひ,全国の方々に知ってほしいと思い,執筆をお願いしました。
文章の奥に隠されたあたたかな人柄も感じていただければ幸いです。この6冊が,みなさんの授業づくりのヒントとなり,子どもたちのやる気や生き生きと学び合う姿につながることを願ってやみません。
/赤坂 真二
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- 明治図書