- はじめに
- 第1章 生徒の目線で授業づくりを見直してみよう
- @生徒の目線に立った「指導方法」の見直し
- A生徒の目線に立った「数学的な見方・考え方」の見直し
- B生徒の目線に立った「指導内容」の見直し
- 第2章 中学校数学50の難所ストンと落ちる教え方
- 1年
- 01 「すう」なの? 「かず」なの?
- 数と式 正の数・負の数
- 02 整数って0,1,2,3…じゃないの?
- 数と式 正の数・負の数
- 03 3マイナス4? 3ひく4?
- 数と式 正の数・負の数
- 04 「マイナス×マイナス」はどうしてプラスになるの?
- 数と式 正の数・負の数
- 05 2a+3は式なの? 答えなの?
- 数と式 文字の式
- 06 計算の答えは1つの値にならないの?
- 数と式 文字の式
- 07 方程式って「=」で続けちゃいけないの?
- 数と式 方程式
- 08 過不足に関する文章題がわからない!
- 数と式 方程式
- 09 「道のり・速さ・時間」に関する文章題がわからない!
- 数と式 方程式
- 10 「関数」って何?
- 関数 比例と反比例
- 11 xが増えるとyが減るのが反比例じゃないの?
- 関数 比例と反比例
- 12 なんでものさしや分度器を使ってはいけないの?
- 図形 平面図形
- 13 πって数なの? 文字なの?
- 図形 平面図形
- 14 見取図がうまくかけない!
- 図形 空間図形
- 15 「ねじれの位置」ってどんな位置?
- 図形 空間図形
- 16 平均値だけで比べちゃいけないの?
- 資料の活用 資料の活用
- 2年
- 17 分母をはらってはいけないの?
- 数と式 式の計算
- 18 乗除の混じった計算ができない!
- 数と式 式の計算
- 19 2けたの整数はabじゃないの?
- 数と式 式の計算
- 20 なんで奇数は2n+1なの?
- 数と式 式の計算
- 21 なんで2つの数を違う文字で表すの?
- 数と式 式の計算
- 22 食塩水の濃度に関する問題がわからない!
- 数と式 連立方程式
- 23 異なる単位の数量を求める速さの問題がわからない!
- 数と式 連立方程式
- 24 「変化の割合」って何の割合なの?
- 関数 一次関数
- 25 一次関数のグラフを利用した問題がわからない!
- 関数 一次関数
- 26 「平行線の性質」と「平行線になる条件」ってどう違うの?
- 図形 図形の調べ方
- 27 なんで「三角形の内角の和は180°」を証明するの?
- 図形 図形の調べ方
- 28 合同条件を使った証明の進め方がわからない!
- 図形 図形の調べ方
- 29 問題の図は代表の図?
- 図形 図形の調べ方
- 30 二等辺三角形の性質の証明,どこがいけないの?
- 図形 図形の性質と証明
- 31 平行四辺形の性質を使ってかいた図,どこがいけないの?
- 図形 図形の性質と証明
- 32 「長方形はすべて平行四辺形である」って,何が言いたいの?
- 図形 図形の性質と証明
- 33 「同様に確からしい」ってどういうこと?
- 資料の活用 確率
- 3年
- 34 どうやって計算方法を説明すればいいの?
- 数と式 多項式
- 35 無理数ってどんな数なの?
- 数と式 平方根
- 36 √2+√3って,これ以上計算できないの?
- 数と式 平方根
- 37 なぜ解が問題の条件に合うか確かめないといけないの?
- 数と式 二次方程式
- 38 動点と面積の問題がわからない!
- 数と式 二次方程式
- 39 関数y=ax2と一次関数の「変化の割合」は意味が違うの?
- 関数 関数y=ax2
- 40 関数y=ax2の変域に関する問題がわからない!
- 関数 関数y=ax2
- 41 対応する辺がわからない!
- 図形 図形と相似
- 42 平行線はどこにあるの?
- 図形 図形と相似
- 43 線分の比と平行線の性質をちゃんと証明しないの?
- 図形 図形と相似
- 44 中点連結定理の問題がわからない!
- 図形 図形と相似
- 45 証明の場合分けができない!
- 図形 円の性質
- 46 円周角の定理の「逆」ってどういうこと?
- 図形 円の性質
- 47 円の接線って,定規をずらしていってひいちゃダメなの?
- 図形 円の性質
- 48 「逆」の証明がなんだかスッキリしない…
- 図形 三平方の定理
- 49 2点間の距離の問題がわからない!
- 図形 三平方の定理
- 50 正四角錐の体積の求め方がわからない!
- 図形 三平方の定理
はじめに
中学校で指導する内容は,学習指導要領の改訂ごとに少しずつ変わってきてはいますが,大きなところでの変化はありません。それだけ指導すべき内容が整い,成熟してきているといえます。今年度中にも示される予定の新しい学習指導要領でも,数学では指導する内容がそれほど大きく変わるということはないと思います。
では,今までの指導方法がこの先10年も安泰かというと,そうではありません。同じ指導内容でも,成果を上げたり,生徒の理解度を高めたりするためには,まだまだ改善の余地があります。この指導方法の改善については,次期学習指導要領のキーワードでもある「アクティブ・ラーニング」を中心として,今後さらに話題になってくると思います。いわゆる流行の部分です。
また,生徒にとって「難所」となっているところは,今も昔も変わりません。いわゆる不易の部分といってよいでしょう。
例えば,数学の教師にとって,「作図する」というとき,定規やコンパスだけを使って図をかくことは当たり前です。しかし,小学校で三角定規や分度器なども使って図をかいてきた中学1年の生徒は,「なんで急に不自由なことをするんだ」と思うだけで,その真意はなかなか伝わりません。そこには「なんで」という素朴なつぶやきがあります。
また,正の数・負の数や平方根,関数などの新しい概念を指導すると,生徒は大きな抵抗感を覚え,教師からすると「そんなことは気にしないで,大きくとらえればよいのに」と思われることにまで神経をとがらせていることがよくあります。新しい世界に入っていく不安感がついて回るのです。
それとは逆に,「平行四辺形の性質」と「四角形が平行四辺形になるための条件」は厳密に区別しなければならないのに,どちらも同じだと考えている生徒は少なくありません。他にも「2つの奇数の和が偶数になる」ということを説明する場面で,「なぜわざわざm,nを整数として2m+1,2n+1と表すのか。『2つの奇数の和』だから,2n+1だけでよいのではないか」と考え,一つ一つを区別する必要性を理解できない生徒がいます。これは,奥深い数学の一端に触れたときの戸惑いともいえるものです。
あるいは,「道のり・速さ・時間」の問題や,食塩水の問題を見たとたんに,すぐに「わからない」とさじを投げ,あきらめをみせる生徒もいます。
このような生徒の素朴なつぶやき,不安感,戸惑い,あきらめといった心の叫びを,私たち教師が機械的,あるいは断定的に扱ってしまうと,生徒はそれ以降そのことにこだわり続け,やがては数学嫌いになってしまう恐れがあります。ですから,生徒のもっている疑問に正しく向き合い,適切に対応したり,生徒自身に考えさせ,正しい判断ができるように横から支えてあげたりすることが大切です。しかし,その適切な対応とか,横から支えるといったことが案外難しいのです。
そこで本書では,中学校数学の難所を一つ一つ拾い上げ,50に絞って解説することにしました。第2章の「中学校数学50の難所 ストンと落ちる教え方」です。
ただし,ここで示した50がすべてというわけではありません。生徒はもっともっとたくさんの疑問をもっています。それらに対処すべき方向性を提案しようとしたのが,第1章「生徒の目線で授業づくりを見直してみよう」です。第2章で取り上げられなかった難所も,第1章に示した方向性で考えていけば,自ずと解決の道が開けてくると思います。ただ,具体例が少ししか示されていないので,つかみにくい部分もあるかもしれません。したがって,第1章と第2章を往復して読んでいただき,自分なりに生徒の疑問や心の叫びに対処できるようになっていただければと思っています。
最後に,本書の企画の提案や内容について相談に乗っていただいた明治図書出版の矢口郁雄さんに感謝申し上げます。ご支援とご厚意がなければ本書は発刊されなかったものと思っております。ありがとうございました。
2016年8月 /五十嵐 一博
授業では、生徒が小学校で教わってきたことを覆す(実際は発展させるのですが)時に、混乱を招かないように気をつけています。
「数」を「かず」と読むか、「すう」と読むかなど、些細なことも言及されていて、「へー、なるほどー」と思いながら読ませていただきました。
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