- まえがき
- 第1章 現代の子どもの食事情
- ――子どもの食が危ない―― /平野 直美 /西川 貴子
- 1 子どもの食は油づけ!!
- 1 子どもたちの油好きの食生活は危険!
- 2 この40年で増えた脂質の摂取
- 3 子どもの好きな料理は脂質が多い
- 4 子どもの好むお菓子も脂質がいっぱい
- 5 子どもたちはマヨネーズが大好き
- 2 子どもたちはカタカナ食の外食が大好き
- 1 外食利用が増加している
- 2 食の外部化の背景
- 3 外食はカタカナ食で,油が多い
- 4 外食で子どもの味覚は大丈夫?
- 3 小児生活習慣病予備軍を招く脂肪の多い食事
- 1 小児生活習慣病予備軍とは?
- 2 脂肪のとりすぎが招く,小児の高コレステロール血症
- 3 動脈硬化は小児期から始まっている
- 4 小児肥満の抱える問題
- 4 朝食を欠食する子どもたち
- 1 朝食を欠食する子どもたちの現状
- 2 脳のはたらきに影響を与える朝食の欠食
- 3 脳は大食漢!?
- 4 「朝食は必ず食べる」が基本!
- 5 孤食・個食・固食が増えている
- 1 子どもたちの食事は孤食が多い
- 2 孤食を望む子ども側の理由
- 3 孤食の弊害とは
- 4 家族そろっても個食?
- 5 さらに固食の心配も
- 6 偏食・小食・遊び食べ
- 1 子どもをめぐる摂食上の悩み
- 2 偏食・好き嫌い
- 3 小食・食欲がない
- 4 遊び食べ・むら食い
- 5 かめない子・かまない子
- 第2章 「食育」という学校と家庭の新しい教育課題
- /長瀬 荘一
- 1 「食育」とは何か? 教育としての意味
- 1 「食育」は百年前に誕生した?
- 2 1960年〜1970年代に変動した日本人の食生活
- 3 「飽食」の時代から「崩食」の時代に
- 4 「食育」とは何か? 学校や行政における位置づけ
- 5 新聞や雑誌,NPO法人における「食育」
- 6 国が行ってきた「食育」の施策
- 2 2005年「食育基本法」が提起していること
- 1 「食育」は知育・徳育・体育の基礎となる
- 2 「食育」は国民の生涯にわたる課題
- 3 食に関する感謝の念と理解を深める
- 4 全国規模の食育推進運動を展開する
- 5 伝統的な食文化,環境と調和した食料生産を図る
- 6 家庭において「食育」を推進する
- 7 学校,保育所等において「食育」を推進する
- 8 地域において「食育」を推進する
- 3 食育を考えるための‘4W2H’とは
- 1 食育の基本になる‘4W2H’
- (1) What(何を食べるか)という食育
- (2) How much(どれほど食べるか)という食育
- (3) When(いつ食べるか)という食育
- (4) Where(どこで食べるか)という食育
- (5) Who(だれと食べるか)という食育
- (6) How(どのように食べるか)という食育
- 2 「サザエさん一家の食卓」が教えること
- 3 食育を確かなものにする五感体験
- (1) 気をつけて食べる体験
- (2) 美味しく食べる体験
- (3) 正しく食べる体験
- (4) 料理をする体験
- (5) 配膳や後片づけをする体験
- (6) 「もったいない」を感じる体験
- (7) 「食料の60%が外国産」を実感する体験
- 4 子どもの食育で取り上げたい15課題
- 課題1 「栄養素や栄養バランス」について
- 課題2 「食材や食品の選択」について
- 課題3 「好ましい食習慣」について
- 課題4 「楽しい食環境」について
- 課題5 「美しい食べ方」について
- 課題6 「伝えたい食文化」について
- 課題7 「食の五感体験」について
- 課題8 「味覚の育成と異常」について
- 課題9 「食と健康や病気」について
- 課題10 「食と子どもの学力」について
- 課題11 「食と子どもの情操」について
- 課題12 「食の安全と安心」について
- 課題13 「食の生産と資源」について
- 課題14 「正しい食情報」について
- 課題15 「学校と家庭・地域の連携」について
- 第3章 子どもの食と栄養,栄養バランス
- /西川 貴子
- 1 栄養バランスとは
- 1 まず1日3回食べること
- 2 バランスは1週間の単位でとる
- 3 いろいろ食べると「バランス」はバッチリ
- 2 栄養バランスのとれた食べ方のすすめ
- 1 食品の栄養的特徴を知ろう
- 2 1回の食事に主食と主菜と副菜を
- 3 食事バランスガイドを活用しよう
- 3 和食のよさを見直そう
- 1 和食と日本型食生活
- 2 「米」と「大豆」を組み合わせた日本人の知恵
- 3 子どもたちに和食のよさを伝えたい
- 4 「まごはやさしい」食のすすめ
- 4 インスタント食品,レトルト食品,お惣菜ものとのつきあい方
- 1 大量生産される加工食品
- 2 即席めんの生産量と消費量
- 3 冷凍食品・レトルト食品の生産量
- 4 加工食品の安全性
- 5 加工食品を上手に利用する
- 5 サプリメントとの正しいつきあい方
- 1 保健機能食品の分類
- 2 特定保健用食品とは
- 3 栄養機能食品(サプリメント)とは
- 4 表示義務
- 5 サプリメントを上手に利用する
- 第4章 子どもの食習慣と健康・病気
- /平野 直美
- 1 子どもの生活習慣が乱れている
- 1 夜ふかしの問題点
- 2 「寝ない子」は太る
- 3 「早寝・早起き・朝ごはん」
- 4 子どもの生活習慣とメディア
- 2 子どものからだが危ない
- 1 急増するペットボトル症候群
- 2 スポーツドリンクにも注意がいる
- 3 咀嚼(そしゃく)力の低下
- (1) 不正咬合(こうごう)・ディスクレパンシー
- (2) 母乳保育と顎の発達
- (3) 顎(がく)関節症の低年齢化
- 3 子どもの生活習慣病の予防と対策
- ――小児期からのメタボリック・シンドロームの予防――
- 1 肥満の予防と対策
- 2 小児の高脂血症の予防と対策
- 3 糖尿病の予防と対策
- 4 メタボリック・シンドロームを予防しよう!
- 4 食物アレルギー
- 1 なぜ食物アレルギーは増加するのか?
- 2 食物アレルギーのメカニズム
- 3 アナフィラキシーショック
- 4 新しいタイプの食物アレルギー
- 5 食物アレルギーとアレルギーマーチ
- 6 食物アレルギーは自然寛解するという希望をもって
- 5 子どもの脳を健やかに育む食生活
- 1 キレる子ども,イライラする子ども
- 2 情動のコントロールは脳の前頭前野のはたらき
- 3 「平常心」を保つセロトニン神経
- 4 セロトニン神経を鍛えるには太陽とリズム運動
- 5 心をつくるモノアミン
- 6 「心」をコントロールする神経伝達物質と食生活
- 第5章 子どもを取り巻く現代の食環境
- /平野 直美
- 1 「飽食」の時代から「崩食」の時代へ
- 1 家庭での「崩食化」
- 2 「食」が軽視される時代
- 3 家庭での「食育」は家族一緒に食事をつくることから
- 2 子どもとダイエット
- 1 若い女性に多い「やせ志向」
- 2 間違ったボディ・イメージと理想体型
- 3 子どもの心の葛藤と摂食障害
- 3 社会にあふれる食の情報
- 1 フードファディズムとは?
- 2 フードファディズムの問題点
- 3 フードファディズムに負けない食教育
- 4 ファーストフードからスローフードへ
- 1 ファーストフード・スローフードとは?
- 2 日本における「地産地消」と「身土不二」
- 5 学校給食と栄養教諭の役割
- 1 栄養教諭制度スタート
- 2 栄養教諭の職務とは
- 3 栄養教諭に期待される役割
- 4 学校給食の役割
- 5 学校給食は生きた教材
- 第6章 子どもに教えたい食のスキルとマナー
- /西川 貴子
- 1 お手伝いで学ぶ食のスキル
- 1 家庭の食卓は学びの場
- 2 五感を使う調理の体験
- 3 体験学習の大切さ
- 4 体験学習には大人のかかわり方が大事
- 5 体験は,偏食改善や予防につながる
- 6 週に1回でもお手伝いの日を
- 7 大人への食育も急務の課題
- 2 食卓でのマナー
- 1 日本のお箸文化
- 2 お箸の正しいもち方と箸使いのタブー
- 3 「ばっかり食べ」は和食のマナー違反
- 4 食卓のマナーの始まりと意味
- 3 「いただきます」「ごちそうさま」「もったいない」
- 1 「いただきます」「ごちそうさま」
- 2 人間だけが感謝して食べることができる
- 3 「もったいない」の心
- 4 「もったいない」食べ残し
- 第7章 食文化の伝承と家庭の味
- /西川 貴子
- 1 家庭の味は子どもの心を育てる
- 1 家庭の味と「食文化」
- 2 楽しく食べることの大切さ――食の記憶は情動と一緒に記憶される――
- 3 食文化は子どもの「自尊感情」を育む
- 4 新奇性恐怖の克服には親がおいしく食べること
- 5 一手間かける愛情を
- 2 行事食の文化を伝える
- 1 行事食における食事の楽しさ
- 2 お正月のお節料理と雑煮のいわれ
- 3 ひな祭りと端午の節句
- 4 ハレからケになった「お赤飯」
- 3 旬の食材を家庭の食卓に!
- 1 旬の食品はおいしく栄養価が高い
- 2 遠距離の旬と地場の旬
- 3 旬を大事に変化のある楽しい食卓を
- 第8章 食の安全と食資源の問題
- /平野 直美 /西川 貴子
- 1 フードマイレージと食の安全
- 1 フードマイレージ(フードマイル)とは
- 2 輸入食料品のマイレージ
- 3 輸入食品の安全性は?
- 4 リスクコミュニケーション
- 2 食料自給率
- 1 食料自給率とは
- 2 日本の食料自給率と各国の比較
- 3 食料自給率低下の原因
- 4 代表的な献立の食料自給率
- 5 消費者も自給率向上への認識と取り組みを
- 3 食品添加物と子どもの健康
- 1 スーパーやコンビニの食品は便利だが
- 2 毎日,朝ごはんをつくる母親のAさん
- 3 食品添加物の光と影
- 4 「たんぱく加水分解物」は子どもが大好きな味――本物の味が分からない子ども――
- 5 本物が分かる消費者になる
- 4 遺伝子組み換え食品の安全性
- 1 遺伝子組み換えとは何か
- 2 遺伝子組み換え植物
- 3 遺伝子組み換え食品の安全性
- 5 食品表示を知ろう
- 1 食品表示をみて賢い消費者に
- 2 賞味期限と消費期限
- 3 生鮮食品の表示
- (1) 農産物(野菜・果物・豆類など)の表示
- (2) 米の表示
- (3) 畜産物(肉・卵)の表示
- (4) 水産物(魚類・貝類・いか・たこ等,海藻類)の表示
- (5) 牛乳の表示
- 4 加工食品の表示
- あとがき
まえがき
いま,空前の「食育」ブームである。
新聞や雑誌の見出しを飾るだけでなく,書店に足を運ぶたびに食育の新刊を目にする。
一口に「食育」といわれるが,本を開くと,アプローチの仕方はさまざまである。
もっとも多いのが,調理や料理の専門家の立場から書かれたもの,次に,栄養指導の立場から書かれたものである。
学校教育との関係でみると,家庭科教育や給食指導の延長線上で書かれたものが多い。
一方,最近では,テレビ番組でも,食物と健康の話題に事欠かない。
健康になる食べ物,病気にならない食事の工夫など,まるで一億総栄養士にでもなりそうな勢いである。
国内外に目を向ければ,BSEや遺伝子組み換え食品など,食の安全が大きな社会テーマになっている。
日本では,「食の外部化率」といわれる家庭の消費支出に占める外食の割合が高くなり,「中食(なかしょく)」といわれる調理済み食品をよく購入する実態もみられる。
こうした社会現象をみると,もしかしたら「食育」は,人類の21世紀最大のテーマになるのかもしれない。
そんななかで,2005年の夏,読売新聞が10日間にわたって「子どもの食」の特集を連載した。
特集のタイトルは,
「『野菜嫌い』授業で解消」「模索を続ける『栄養教諭』」「農家が先生 野菜作り」「肥満対策 待ったなし」「親子で歌い 意識改革」「給食は生きた教材」「メーカーも出張授業」「食育は幼少時から」「和食が育てる体と文化」「『味覚』作りは親次第」
であった。
ここでは,わが国が,いま直面している食育の課題が浮き彫りになっている。
本書は,このような,まさに食育が本格化しようとする時代状況のもとで誕生した。
執筆者は,解剖生理学と食物栄養学を研究フィールドにする2人の食育専門家と,教育心理学を研究フィールドにする1人の素人である。
本書では,各人の研究領域と人生経験を最大限に生かし,いま学校と家庭で求められている「食育」に迫ることにした。
多くの方にお読みいただき,食育学が発展するために,不十分な点や率直なご感想をいただければ幸いである。
最後に,本書の企画・刊行にあたっては明治図書出版の江部満氏に,とくに貴重なご指導とご助言をいただいた。この場をお借りして,厚くお礼申し上げたい。
2006年4月 /長瀬 荘 一
-
- 明治図書