アクティブ・ラーニングのための算数教材研究

アクティブ・ラーニングのための算数教材研究

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アクティブ・ラーニングを活性化するカギは教材の中にある

静まり返った教室にも、アクティブ・ラーニングは存在する。学習活動の表層や型にとらわれず、真に「深い学び」を実現させるために必要なことを、「教材研究」と「発問」という観点から追究した、アクティブ・ラーニング時代の算数授業づくりに必須の1冊。


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PDF
ISBN:
978-4-18-142010-9
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 168頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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はじめに
序章 「アクティブ・ラーニング」それは自ら学ぶということ
第1節 自ら学ぶということ
第2節 私にとっての「アクティブ・ラーニング」
第3節 下手な方法で問題を解決する
第1章 小学1年の教材研究
第1節 数え上げと数え足し
第2節 たし算
第3節 ひき算
第2章 小学2年の教材研究
第1節 たし算とひき算
第2節 かけ算
第3節 長さ
第3章 小学3年の教材研究
第1節 かけ算
第2節 わり算
第3節 量分数
第4節 重さ
第4章 小学4年の教材研究
第1節 わり算
第2節 わり算の筆算
第3節 面積
第4節 角と平行
TEA TIME 子どもたちに伝えたい言葉「人生にイエスと言おう」
第5章 小学5年の教材研究
第1節 比例
第2節 小数のかけ算
第3節 分数の大きさ
第4節 平行四辺形と三角形の面積
TEA TIME 子どもたちに伝えたい言葉「あたたかな心」
第6章 小学6年の教材研究
第1節 分数のわり算
第2節 円の面積
第3節 速さ
TEA TIME 子どもたちに伝えたい言葉「レッテルを貼るな」
終章 アクティブ・ラーニングへの挑戦
第1節 算数を学び合う集団とは
第2節 「アクティブ・ラーニング」ちょっとした秘訣
おわりに

はじめに

 満ち足りた教育環境下にあっては絶対に育成できないものは,学びたいという飢えた心だと思います。アクティブ・ラーニングという言葉を初めて耳にした時,また新しい言葉を使って教育を変えようとする魂胆に嫌悪感すら覚えましたが,よくよく考えてみると,アクティブ・ラーニングという言葉で変革しようとする教育には,この学びたいという飢えた心が必要なことに気づかされました。アクティブ・ラーニングという言葉でどのような教育を目指すのか,はっきりしない今こそ,この言葉を利用して,本書では私なりの「アクティブ・ラーニング」を構想してみたいと思います。それゆえ,本書は正統なアクティブ・ラーニングの解説書ではありませんが,数学的コミュニケーション論に取り組んできた者の責務として,アクティブ・ラーニングとは何かという問題について,教員の発問という立場から語ってみたいと思います。ただ,どのような発問がよい発問かという抽象的な問いや,一般的な発問集のようなものが意味をなさないことは明らかです。なぜならば,発問の良し悪しを決めるのは,その発問が出された場面に依存するからです。私たちは,学習集団に対して,適切な時に,適切な発問を出せなければなりません。発問には,教員の教育的なセンスが求められます。教員がいかにその瞬間,瞬間において,最適な問いを発するかということが,学習者の思考の質,ひいては授業の質を高めることになるのです。本書では,先生方の教育的なセンス,言い方を変えれば,よい発問を出せるセンスを磨くためのお手伝いをしたいと思います。

 その瞬間,瞬間に最適な問いを発することは容易なことではありません。よい発問を出せるセンスは,教育者として最も大切な資質です。しかし,その資質は生まれつき備わっているものではありません。そして,その資質は,話し方教室で身に着けられるものでもありません。私たち教員にとって最も大切な発問というコミュニケーション能力は,深い教材研究からもたらされる能力です。「アクティブ・ラーニングのための算数教材研究」という書名に,私は,「アクティブ・ラーニングに挑もうとしている先生方に,算数の学習場面におけるコミュニケーション活動をいかに指導すればよいかという迷いは,算数の教材研究を通して解消して欲しい」という思いを込めました。どのようにコミュニケーション活動を仕組もうかということに拘泥せずに,まずは,明日の授業で用いる教材を深く研究することをお勧めします。子どもたちにどのような美しい算数の世界を見せてあげることができるのか,集団の学びを通して到達させたいゴールがはっきりしていれば,そこへ辿る道を案内することはできるはずです。

 たとえ,子どもたちの話し合いがそれても,こちらに行けばきっと素晴らしい世界が待っていると自信をもってガイドできることが大切なことです。ですから,途中で寄り道をしたり,一時的に道に迷ったりすることもあるかもしれませんが,そうした予期せぬ出来事も,教員が一つひとつ寄り添ってあげることで,子どもたちとのコミュニケーションは思わぬ発見をもたらす契機になるかもしれません。大切なことは,いかなる教授方法を採用しようとも,子どもたちが学習すべき世界が,それも価値ある世界として,しっかり用意されていなければならないということです。到達すべきゴールがはっきりしていないと,あるいは,別のルートを通れば素晴らしい世界が開けていたのに,教員がそのことを知らずに下山させてしまっては,頂上からの展望をみんなで堪能することもできません。

 本書では序章にて,私なりの「アクティブ・ラーニング」を構想した後,6つの章で小学校算数科の教材研究を行います。これまで気にせずに通り過ごしていた算数の美しい世界を共有することで,先生方には,ぜひ,「分かった,計算ができるようになった」というこれまでのゴールをもう一歩先へ進めて,子どもたちに,「なるほど,そうだったのか」と言わせる「アクティブ・ラーニング」を体験させてあげて欲しいと思います。もう一言の発問で,子どもたちの学習がより深くなることがあります。私が構想する「アクティブ・ラーニング」は,深い教材研究に基づく良質の発問から始められるコミュニケーション活動そのものなのです。


  2016年10月   /江森 英世

著者紹介

江森 英世(えもり ひでよ)著書を検索»

1959年東京都生まれ。埼玉県高等学校教員,筑波大学大学院博士課程教育学研究科,関東学院大学工学部助教授,宇都宮大学教育学部助教授,群馬大学教育学部附属小学校長(併任)を経て,現在,群馬大学教育学部教授。タイ王国コンケン大学客員教授。博士(教育学)。専門は数学教育学「数学的コミュニケーション論」。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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