- はじめに
- 第1章 学校における儀式
- ◆ 何のために儀式を行うのか
- ◆ 儀式の教育効果と引き出し方
- 第2章 儀式での作法
- 〜指導のための基礎知識〜
- 1 上座と下座の決め方
- 2 国旗の扱い
- 3 壇上の配置
- 4 仕草の極意
- 5 礼
- 6 登壇・降壇
- 7 ものの受け渡し
- 8 包みの扱い
- 第3章 儀式作法基本知識
- 1 上座下座(儀式作法での上座下座)
- 2 仕草の基本 姿勢
- 3 椅子1 座った姿勢
- 4 椅子2 立ち方@ 姿勢
- 5 椅子2 立ち方A 黙祷
- 6 椅子3 座り方
- 7 立礼
- 8 登壇1 立つ歩く
- 9 登壇2 階段
- 10 壇上での立ち位置
- 11 壇上での礼(三方向)
- 12 書状(証書類)の扱い(基本)
- 13 書状を渡す(取り回しの作法)
- 14 書状をもらう(「押し頂く」作法)
- 15 副賞等の同時授与
- 16 降壇1 方向転換
- 17 降壇2 階段を降りる
- 18 着席
- 19 式辞・目録・送辞・答辞類の扱い
- 20 保護者謝辞の留意点
- 21 神道式拝礼
- 22 玉串奉奠
- 23 テープカットの作法
- 24 花束贈呈の作法
- 第4章 各儀式における作法
- 1 入学式
- 2 始業式
- 3 新任式
- 4 対面式(新入生を迎える儀式)
- 5 朝会・朝礼・学年集会
- 6 終業式・修了式
- 7 離任式
- 8 卒業式
- 9 開会式(各種)
- 10 表彰式(各種)
- 11 閉会式(各種)
- 12 創立記念式
- 13 国民の祝日(各種祝い)の式
- 14 結団式・解団式
- 15 プール開き
- 16 林間学校・キャンプ・遠足
- 17 スキー(スノーボード)教室
- 18 修学旅行
- 19 芸術等鑑賞会
- 20 二分の一成人式・立志式
- おわりに
はじめに
本書は、礼法の専門家であり教育学の研究者(特別活動および道徳教育)でもある筆者が、教育現場における儀式的行事について、とくに作法を中心にその内容・方法・意義を礼法と教育学の双方の視点から詳解した、本邦初の書である。
儀式的行事については、従来さまざまな解説書が編まれてきた。しかしその多くは事前指導の内容や案内状の発送対象、そして会場配置・式次第・事後指導などの解説が大半であり、いわば「学校行事運営マニュアル」である。
「卒業生は一人ずつ校長の前に進む。校長は卒業証書を手渡す」
このように書かれていて、何をすればよいかはわかる。
しかし「どのように登壇し、どのように前に進むのか」「校長はどのように手渡すのか」、その作法のやり方が一切説かれていない。そして最も重要な「なぜそうするのか」の記述に至ってはもはや皆無である。これが日本の儀式的行事を取り巻く「礼儀」指導の現状である。
このように何をすればよいかはわかっても、どうすればよいか、それが一切わからないまま日本の教育現場は儀式的行事という教育活動を展開している。つまり児童生徒においては「なぜこのような作法をする必要があるのか」、それを一切学ばないまま、儀式的行事という重要な学習活動の時間をやや形骸的に過ごしてきたのである。
儀式における作法の指導は誰が行うのだろうか。管理職か、学年主任か、特別活動部主任なのか。いずれにしてもその任にある先生は、誠実であればあるほど深い苦悩を抱えることになる。なぜならば世の作法書を読んでも、そこには学校行事の作法のやり方など書かれていないからである。
「いままでこうしてきたのだから今年もこうしておきなさい」
本書はそのような言葉を言いたくない先生、またあえてそう言わざるを得なかった先生のために書かれている。
どうやればいいのか、なんでそうするのか、それをどのように教えればいいのか、そこから何が学べるのか。
そのような疑問を、日本古来の礼儀作法体系である小笠原流礼法の思想と方法論を基盤として解説している。
小笠原流礼法は現在の日本で流通する礼儀作法の源流というべきものであり、その萌芽は室町期まで遡る。
たとえば学校教育においてはクラブ活動・部活動において教育茶道が広く行われており、一般社会においても礼儀作法学習の手掛かりとして茶道を用いる傾向があるが、これら茶道の作法も小笠原流礼法を元にしたといわれる。
『茶を点てる方式も、能阿弥が小笠原流の礼法を参酌して、今日に伝えられているような茶の点て方を考案した』
(井口海仙『茶道入門』1967、保育社110頁:※井口氏は裏千家十三代家元の三男。淡交社元社長)
どちらの手から出すのか、どちらの足から入るのか、といった作法には、必ず意味と理由がある。なぜ書状を受ける際に両手を一度に差し出さないのか。なぜ右手から出すのか。
両手を一度に出さないのは「待ってました」というさもしい心を顕わにする振る舞いを避け、右手から差し出すのはより安全に物品を扱うことが可能な利き手を用いるとの「意味」がある。そしてそれは「儀式の場を大事に思っています」「あなたを大事に思っています」「頂くものを大事に扱いたいと思っています」という敬意を伝えたいという「理由」がある。このように小笠原流礼法はあらゆる対象に敬意を表すための表現として作法を構築している。それが現代の日本では「意味がわからないけどとにかくやっておけばいい」に変容してしまっている。
本書を元に儀式作法を展開することで、児童生徒は人格の根幹をなす重要な学びを得られるであろう。
儀式的行事の持つさまざまな学びの可能性を、作法の指導を通して展開して頂くことを切に願う次第である。
平成23年3月 /柴崎 直人
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- 明治図書
- 儀式的行事の作法について、改めて理解することができた。2024/2/2540代・小学校管理職
- 「なぜ,そうするのか」という作法の意味(理由)が書かれてあり,職員及び生徒への指導上,非常に役立ちます。意味(理由)を知っていると,説得力がありますね。また,スポーツの大会を主催することも多いので,その際の会場設営や開閉会式の運営にも役立ちます。教員という立場でないと,儀式の作法を学ぶ機会はあまりないと思います。これを引き継ぐためにも,教員として読んでおきたい一冊です。2017/3/2840代 中学校教務主任
- この手の内容の本はなかなかなかったので,すごく勉強になりました。2016/5/1640代・小学校管理職
- えてして儀式のマナーについて教師は自己流でしがちです。きちんとした作法を学ぶという点で本書は価値があります。2015/4/16