- まえがき
- 1 算数のつまずきには法則がある
- 2 スモールステップの指導でつまずきを撃退せよ!
- 3 クラス全員クリアできる,驚異のスモールステップ指導法 小学校6年間の実例65
- 1年
- 1 単元を貫く基本型を与えよ! (3つのかずのけいさん)
- 2 「さくらんぼ計算」で数字をそろえよ!(1) (たしざん)
- 3 「さくらんぼ計算」で数字をそろえよ!(2) (ひきざん)
- 4 数字の操作で終わらせないために作業をさせよ! (20よりおおきいかず)
- 5 教科書の場面設定を教室で再現し,イメージをもたせよ! (どちらがながい)
- 6 状況設定のための大事な言葉を補え! (どちらがおおい)
- 7 ものを与える前に分け方の条件を与えよ! (かたちあそび)
- 8 課題を一気に与えるな 順序よく出せ! (かたちづくり)
- 9 例示をそのまま説明するな 作業させよ! (はなはなんこさいたかな)
- 10 多くの情報が書かれているときは指で隠せ! (ずをつかってかんがえよう)
- 2年
- 11 やり方は教えるが,どちらでもよいという教師の構えが必要 (計算のくふう)
- 12 一目見てわかりやすい基本型を与え,唱えさせよ! (たし算とひき算のひっ算)
- 13 作業を取り入れながら理解させよ! (かけ算(1))
- 14 定義を教えよ 不要な情報は隠し,必要な言葉を補え! (かけ算(2))
- 15 簡単な問題から始め,少しずつ変化させよ! (4けたの数)
- 16 やり方を教え,最後は自力で解けるように組み立てよ! (長さのたんい)
- 17 教師が模範実験をするから子どもが混乱しない (水のかさのたんい)
- 18 当たり前と思うようなことも言葉を補って教えよ! (三角形と四角形)
- 19 使う道具をむやみに与えるな 計画的に与えよ! (はこの形)
- 20 一気にやろうとするからつまずきが生まれる (ひょうとグラフ)
- 21 指で不要な情報を隠すことに慣れさせ,その後似た練習をさせよ! (たし算とひき算)
- 3年
- 22 基本型と基本型の唱え方を与えよ! (あまりのあるわり算)
- 23 大きな数は隠してシンプルにせよ! (大きい数のしくみ)
- 24 補助線を引くと,一目見てわかるようになる (小数)
- 25 順に行うから,自然に答えることができる (分数)
- 26 構造が一目でわかるビジュアルなノートにせよ! (かけ算の筆算)
- 27 教えることを分けよ テンポよく問題を出せ! (長いものの長さのはかり方)
- 28 少しダイナミックな問い方をした方がわかりやすいときもある (重さのたんいとはかり方)
- 29 難しいことから作業させない 一番簡単なところから作業させよ! (円と球)
- 30 ときには教科書の問題の順を変えよ! (三角形)
- 31 問題文の逆から語ってやりながら図を隠させてみる (□を使った式)
- 32 「何」とびで数えたらよいということを教えよ! (ぼうグラフと表)
- 4年
- 33 できるだけシンプルな表記をさせよ! (大きい数のしくみ)
- 34 先を見通したノート指導を行え! (小数のしくみ)
- 35 向山型わり算指導でつまずきを撃退せよ! (わり算の筆算)
- 36 帯分数から仮分数に直すときに補助計算を書かせよ! (分数)
- 37 単元を貫く基本型をつくって与えよ! (がい数の表し方)
- 38 キーワードは「そろえる」(位,数値) (小数のかけ算とわり算)
- 39 問題に入る前に実物をたっぷりと触らせよ! (角の大きさ)
- 40 身近な具体的事例を出し,語れ! (面積のはかり方と表し方)
- 41 やり方を示したら実際に作業させよ! (垂直・平行と四角形)
- 42 実物を与え,それを参考にしながら図をかかせよ! (直方体と立法体)
- 43 変化のある繰り返しで問題を与えよ! (変わり方調べ)
- 5年
- 44 子どもが忘れないようなネーミングをせよ! (小数のかけ算)
- 45 たすきがけで立式を乗り越えさせよ! (小数のわり算)
- 46 基本型とその読みを変化のある繰り返しでマスターさせよ! (分数と小数)
- 47 何をしたのかが残るビジュアルな基本型にせよ! (分数のたし算とひき算)
- 48 ときには計算しづらい数値を例示に使え! (分数のかけ算とわり算)
- 49 子どもが拡散的な思考をする問いを出せ! (直方体や立方体の体積)
- 50 場面設定をわかりやすく語れ! (単位量あたりの大きさ)
- 51 多様な考えをすべて認める先人の実践を応用せよ! (四角形と三角形の面積)
- 52 やらせっぱなしにしない 模範を見せてから活動させよ! (正多角形と円周の長さ)
- 53 実物をつくり,操作させながら答えさせよ! (角柱と円柱)
- 54 「帯グラフ」と「円グラフ」の使い方に落とし穴あり (百分率とグラフ)
- 6年
- 55 面積図を使って,直感的に理解させよ! (分数のかけ算)
- 56 たすきがけで乗り越えさせよ! (分数のわり算)
- 57 子どもが知的に興奮する発問をせよ! (円の面積)
- 58 公式を無理に暗記させる必要はない (速さ)
- 59 図に印をつけるから情報が浮き出てくる (角柱と円柱の体積)
- 60 最低限教えたい単位の話をせよ! (量の単位のしくみ)
- 61 何をやっているのかわからせるために記号をふらせよ! (対称な形)
- 62 一目見てわかる基本型を活用せよ! (拡大図と縮図)
- 63 場面をイメージできるような語りが必要 (比と比の値)
- 64 具体的な数値を入れて計算させるから気付くことができる (比例と反比例)
- 65 子どもに意見をたくさん出させて授業を組み立てよ! (場合の数)
まえがき
大学を卒業してすぐの3月。私は少人数指導担当教諭として赴任した。
不勉強であったので,「少人数指導って何?」という状態である。本屋に駆け込んで,「少人数指導」という名のつく本を片っぱしから手に取り,かごに入れていった。そのとき,「少人数指導」というタイトルではなかったが,目に飛び込んでくるタイトルがあった。
「平均点90点」を実現する向山型ノート指導
「なに! 平均点90点なんてありえるのか?」。タイトルに惹かれ,その雑誌をかごに入れた。その雑誌の名前が『向山型算数教え方教室』である。これが私と「向山型算数」との出会いであった。少人数指導担当教諭にならなかったら,もっと遅く出会っていたか,もしかしたら今もなお出会っていなかったかもしれない。今考えるとちょっとゾッとする話である。
さて,「学級平均点90点」という数値を出すと,必ずこんなセリフが返ってくる。「点数じゃないよね」「学級平均点90点だから何なの」…。
私も今まで散々言われてきた。
しかし,である。
「学級平均点90点」ということは,10点,20点の子がほとんどいない状態なのである。お勉強の苦手な“あの子”が60点,70点,いや80点などの点数をとっているからこそ,可能な数値なのだ。
「学級平均点90点」を目指すということは,どの学級にもいるであろう,お勉強の苦手な“あの子”を救いたいという教師の強い強い思いが込められているのである。
さて,本書のテーマは子どもたちの「つまずき」である。
向山洋一氏は,「つまずき」について,以下のように述べている。
「つまずき」は,その授業の中心的なねらいが理解されていない場合に,学習者の誤った思い込みとの矛盾として発生するものである。だから,この場合はもう一度一斉授業をすることが原則となる。
(向山洋一『授業の腕をみがく』(明治図書)p.181)
この中に,すべてのことが書かれている。「つまずき」は一斉授業の中で防ぐことができるのだ。これは何を意味しているのか。
一斉授業をするのは教師である。つまずきを防ぐことができるのは教師だけだ,ということなのだ。
よく「あの子はできない」「どれだけ教えてもだめなのでは…」という声が聞こえてくる。これは,つまずきを子どものせいにしているから出てくる言葉だ。
そうではない。つまずきを防ぐことができるのは教師だけだ。同じ教科書を教えていても,つまずきがなく,平均点の高い学級がある。一方,つまずきをたくさん生み,平均点の低い学級もある。違うのは教師だけだ。つまり,つまずきを生むのも防ぐのも,教師自身にかかっているのだ。
本書では,向山型算数で学び続けてきたことを,「つまずき」という観点からまとめて書いたものである。つまずきを防ぐことができるのは,向山型算数しかないと確信しているところである。これからもますます,向山型算数を追い求め実践していく。
本書は,向山洋一氏が「向山型算数」を提唱してくださったおかげで世に出すことができました。また,出版に当たっては,明治図書の矢口郁雄様に多大なご助言,多くの励ましのお言葉をいただきました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
2012年9月 /赤塚 邦彦
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- 明治図書
- 向山型算数を思い出すときにまず見返す本。2023/2/2440代・男性