- まえがき
- 序 今日特に求められる教師力とは /村田 昇
- 1 教師力
- ――よさを生かす
- T 日記指導でよさを見つけ生かす
- よさを生かす教室の創造/ 書くことを厭わない子を育てる/ 日記を通して子どもの生活を知る/ 日記の奥にある思いを探る/ 豊かな見方・考え方を育てる/ 意欲的に書かせる日記指導の方法/ 書くことに新鮮さを感じさせる話題・題材例/ よさを生かす日記指導の留意点
- [コラム1] 元気がいいぞ。ホイホイ
- U 心が通い合う教室作り
- ――家庭との連携
- 子どもの生活と学習/ 心が通い合う教室を作る/ 家庭との連携で学ぶ意欲を育てる
- V 授業でよさを生かす(1)
- ――存在感・充実感を持たせる
- この学級で学べる喜びに気づく/ みんなで作り上げる楽しさに気づく/ 友だちのよさを認め学び合うよさに気づく
- [コラム2] 自分の言葉で
- W 授業でよさを生かす(2)
- ――子どもの学習を支えるもの
- 表現を支える子どもの生活/ 互いに支え合う中で育つ言葉の力/ 子どもの学習を支える小さな知恵
- X 子どもを見る目を鍛える
- ――学ぶ力と喜びを育てる技術(1)
- 得意とするものに着目することから/ 考え方や方法を示すことから
- Y 子どもを見る目を鍛える
- ――学ぶ力と喜びを育てる技術(2)
- 子ども同士の学び合う力を引き出す/ 目標と学習活動を一体として捉える/ 授業でピンチを感じる時、知恵が生まれる/ 学習の方法を示す
- [コラム3] 教師の言葉と心
- 2 授業力
- ――書ける子を育てる
- T 生活に生きる書く力を育てる
- 書くことで考える子を育てる/ 書くことを日常化する/ 書くことで意見や考えが持てる子を育てる/ 生活に生きる書くことで留意すべきこと
- [コラム4] 飛躍の立会人
- U 学習を話題にして文章を書く
- 学習を話題にして文章を書く/ 学習を話題にして文章を書くことの利点/ 形式や内容の整った文章へ導く/ 学習を話題にした文章を書かせる機会と場
- [コラム5] 教室の財産
- V 話すこと・聞くことに書く活動を絡める
- スピーチで育つ力と限界/ 聞く活動に書く活動を織り込む/ 書く・話す・書くを繰り返す/ 話すこと・聞くことに書くことを絡める
- W 読むことに書く活動を生かす
- 書くことで授業を蘇らせる/ 書き方が身につかないと子どもは伸びない/ 書くことで自問自答をする/ 読むことにおける書く活動の実際
- [コラム6] 輝きを引き出す
- X 書く力を育てる授業作り
- クイズの興味を書くことに生かす/ 想像する楽しさを生かして文章を書く/ 他教科や生活を軸に書く力を育てる
- [コラム7] 原点を忘れないこと
- 3 実践力
- ――授業作りの知恵
- T 「先生、読んでくれましたか」
- 「先生、読んでくれましたか」/ 「お母さんに言っておくよ」/ 「ぼく、自分で書くよ」
- [コラム8] 求めて行動する
- U 授業の落とし穴
- ――授業作りの基礎
- 「くまなくすんだ」って何ですか/ クイズは楽しかったけれど/ 授業の落とし穴を克服する/ 言葉の力を育てているか――授業の基礎
- V 授業が見たい
- 授業が見たい……/ たかが指名、されど……/ 指名によって授業が変わる/ 板書で育つ考える力/ 授業にきめ細かさを
- [コラム9] 名前を大切に、人を大切に
- W 子どもが見えない
- 子どもが見えなくなる時/ 子どもが生き生きと活動する時/ 子どもが見えてくる時/ 子どもの知りたい心を刺激する
- X 研究授業の功
- 研究授業の功/ 研究授業で育つ指導力/ 子どもと共に作る授業/ 研究授業の落とし穴/ 研究授業で得たこと、学んだこと
- [コラム10] 動作、表現の奥にあるもの
- Y 子どもに近づくということ
- 子どもに近づくということ/ 期待を持たせるということ/ 教師の言葉に嘘はないか/ 子どもの目の高さで考えるということ
- Z 一年生がいちばん
- 「知ってる」に圧倒されて/ 指示の難しさと大切さに気づかされて/ 表現への心を耕すことの大切さにふれて/ 四五分間の授業の大変さに気づいて/ 一年生がいちばん◯◯◯
- [ 導入の工夫
- 授業の導入で困った時のこと/ よい授業はよい導入から
- \ 題や文章にこだわる
- 「……利用され始めている」に学ぶ/ それから、とつぜん、スイミーは「さけんだ」/ 小さな女の子の命が、空に「きえました」
- [コラム11] 子どもへの言葉の重さを心に
- ] 良薬は苦いが
- 教師力を育てるもの/ 一生つき合うのは/ 「なぜ……」と問われて/ 「なぜ止めるのですか」と問われて
- XI 「子どもが生きる授業」は難しい。が
- 「心はなおってへん」と言う子/ 「子どもが生きる」って何だろう/ 「子どもが生きる授業」は難しい。が……
- [コラム12] 時には一人の子どもをヒーローに
- XII 丁寧な指導・分かる授業
- 巧みな授業に憧れて/ 活動は面白い。しかし……/ 考える力を育てる授業の試み/ 丁寧な指導・分かる授業
まえがき
授業は教師と子どものコミュニケーションを基本として行われる。ここでは教師の指導力が問われるが、それだけではなく、教室の雰囲気やその日の気分、時には天候もその要素になる。しかし、大きな位置を占めるのは、その時時の雰囲気を読み取った働きかけである。適切な学習活動を設定すれば、それだけで望ましい教育成果が上がるというものではない。教育を総合的に捉える「教師力」「授業力」「実践力」が有効に働く必要がある。それぞれの力が持つ授業での役割は大きい。
たとえば、授業における教師の位置取りや机間指導、発声、励まし方、指示の仕方という身体的な問題から、板書や発問の方法、ノートの指導という指導方法に関わる問題など幅が広い。さらに授業全体の時間の配分や構成、導入や終末の問題など授業という場での教師の技術は多様である。
これらは一般化できるものもあるしそうでないものもあるが、教師の実態に沿って工夫が必要になる。たとえば授業の終末段階で「感想を書く」という場を設定したとする。「感想を書く」という活動は一般化できたとしてもこの後に続く処理や評価はそれぞれの教室の実態によって違ってくる。ある学級では、そのまま教師が集めて、朱筆を加えて書くということが効果を上げる場合がある。ある学級では、感想を書いた子から発表という方法をとる。個別に指導を加えるということもある。
また、「日記を書かせると子どもとの心の絆が太くなる」ということで日記を書かせたがそれほど効果がなかったという話を聞いたことがある。この場合も日記を書かせればいいという短絡的なことではなく、書かせる前、書かせた後の指導がポイントになる。「教師力」とは、活動を提示するということだけでなく、それを取り巻く目に見えなく細々した事柄を総合的に抱え込む力のことである。それはある時は技術と呼ばれ、ある時は指導力という言葉で表現される。これらのことをふまえ本書ではそれぞれの力を次のように考えてみた。
「教師力」は子どもの意欲を引き出し、子どもの理解を軸にした教室作りや授業作りに働く力である。教師に求められる総合的な力である。
「授業力」は教育内容の本質を見極め、授業を構想し、確かな力を育てる筋道を見通した力である。
「実践力」は、教室の事実に学び指導力を高め、指導技術や指導方法を開拓する力である。
これらの力を身につけるには教室の事実を謙虚に見つめ、どうすれば今よりよくなるかという方向を求め続けることから始まる。具体的な教育の事実に対してどのような方法をとれば効果を上げることができるかということは一概に言えないが、多くの実践事例に学ぶ中で、自らの授業力として高める知恵が生まれてくる。
本書は、いろいろな事例をもとに、「教師力」「授業力」「実践力」を高める手がかりを述べたものである。子どもと関わっていると、よいと思って試みたことがとんでもない方向にながれたということも数多い。いや、むしろそのようなことが多かったかもしれない。それらの事実を謙虚に振り返りながら、望ましい方向へ集約しようとしてまとめた。それぞれの教室の実態を思い描きながら、指導力を高める上で役立ってほしいという願いをこめている。
本書の序には、村田昇先生より、今日特に求められる「教師力」についてご指導のお言葉を賜りました。また、本書の発刊について明治図書の石塚嘉典様、小野寺茜様にお世話になりました。深謝しています。
平成一八年二月 京都女子大学教授 /吉永 幸司
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- 明治図書